【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
72条



 今回も憲法の話を始めましょう。前回は、総辞職後の内閣の職務について定めた71条を読みました。今回は、内閣総理大臣の職務について定めた72条を読んでいきます。

【72条】

 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。


 内閣総理大臣は、内閣を代表して、
 ・議案を国会に提出する。
 ・一般国務及び外交関係について国会に報告する。
 ・行政各部を指揮監督する。
 ことが、職務として定められています。

 内閣総理大臣の職務に関しては、有名な判例があります。
ロッキード・丸紅ルート事件(最大判平7.2.22)です。

 【事案の概要】
R社の意向を受けた販売代理店M社の社長らが、内閣総理大臣にR社旅客機の購入を国内航空会社Z社に勧奨するよう依頼し、成功報酬として現金5億円の供与を約束し、その承諾を得ました。その後、Z社の同機購入の決定がなされ金銭授受が行われたため、贈賄罪などで起訴された事件。


 争点としては、いわゆる賄賂罪は、公務員が「職務に関して」金銭などを授受することが必要です。この事件では、民間会社の航空機導入について、「購入をお勧め」することが、内閣総理大臣の職務といえるかどうかが問題となりました。「職務」といえなければ、金銭を受け取っていたとしても、そもそも収賄罪は成立しないことになるからです。

【判旨】
 内閣総理大臣は、憲法上、行政権を行使する内閣の首長として(66条)、国務大臣の任免権(68条)、内閣を代表して行政各部を指揮監督する職務権限(72条)を有するなど、内閣を統率し、行政各部を統轄調整する地位にあるものである。そして、内閣法は、閣議は内閣総理大臣が主宰するものと定め(4条)、内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて行政各部を指揮監督し(6条)、行政各部の処分又は命令を中止させることができるものとしている(8条)。このように、内閣総理大臣が行政各部に対し指揮監督権を行使するためには、閣議にかけて決定した方針が存在することを要するが、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣総理大臣の右のような地位及び権限に照らすと、流動的で多様な行政需要に遅滞なく対応するため、内閣総理大臣は、少なくとも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するものと解するのが相当である。


 内閣総理大臣が行政各部を指揮監督するためには、原則として閣議決定が必要ですが、必ずしも、閣議がなければ職務を行えないというわけではなく、閣議がなくても、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、所掌事務について一定の方向で処理するよう、指導、助言等の支持を与える権限があると判断しました。
 内閣総理大臣が民間会社に航空機の購入を勧めることも、内閣総理大臣の職務として認定し、有罪判決が下されました。

 今回は以上です。それでは、次回は内閣の職務に関する73条を読んでいきます。お楽しみに。

以上



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