【社会保険労務士】
「 労働者の給与をピンハネしたらどうなるか?? 」



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こんにちは。今日は2019年10月18日。
昨今の台風により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一部新聞報道によりますと、現職の某国会議員が、自らの公設秘書の給与から毎月10万円を、自分の事務所に強制的に寄附するように強要していたらしいとのこと。
国会議員の秘書というのは、身分としてはとても不安定な職業で、「公設秘書」と「私設秘書」と2種類あるのですが、「公設秘書」というのは議員1名あたり、3人まで公費で雇うことができますただし、議員が選挙で落選してしまえば無職になってしまうので、本当に政治的に高い志がないとできない仕事だと思うのですが、いかんせん就職先が狭き門なので、どうしても議員からの無理難題を秘書が甘んじて受けいれざるを得ないとも言われています。
数年前にも、運転中の秘書に対して、暴言や暴行を浴びせ、落選に追い込まれた議員がいましたが、議員と秘書の関係というのは、依然として江戸時代の殿様と家来のような関係にも思えます。
今回の報道が事実であれば、国会議員の秘書の給与に関する法律に違反することになります。

『 何人も、議員秘書に対して、当該国会議員がその役職員又は構成員である政党その他の政治団体又はその支部(当該国会議員に係る後援団体を含む。)に対する寄附を勧誘し、又は要求してはならない

まあ、想像すると、立場の弱い秘書に対して、雇用する際に、「毎月10万円、事務所に寄附するのであれば雇ってあげるけど、どうする?」とでも言ったような気がします。今回明るみに出たのは、解雇された歴代の秘書が数名、積年の恨み?ともいうべき行動で週刊誌に告発したことによるものです。本来、秘書は家来ではなく、一番信用するべき仲間であるはずなのに、塗炭の苦しみを味合わせたのであれば、自業自得と言えるでしょう。

労働基準法第2条では、次のように規定されています。

『 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである

というようにわざわざ、対等の立場で決めなさないと明記していますが、現実の労使関係は、圧倒的に使用者が有利で労働者が不利でしょう。
プロ野球の世界でも、フリーエージェントの資格を取得しても、それを行使する選手は年に数名です。まして、普通の会社員では、使用者と対等の立場で労働条件を決めることができる人は、ほとんどいないでしょう。

なお、「賃金」というのは、労働者にとって非常に重要なものなので、労働者が不利にならないように「賃金支払の5原則」というものが決められています。


 ① 通貨払の原則
 ② 直接払の原則
 ③ 全額払原則
 ④ 毎月1回以上払の原則
 ⑤ 一定期日払の原則


賃金は、原則としてその全額を支払わなければならないと規定されています。
ただし、次に該当する場合には、賃金の一部を控除して支払うことができます。
イ)法令に別段の定めがある場合(所得税の源泉徴収、社会保険料の控除など)
ロ)労使協定がある場合(寮費、組合費等を賃金から控除する場合)

このように一部の例外を除いて、賃金はその全額を労働者に支払わなければなりません。
また、この報道を聞いたときに労働基準法第6条の「中間搾取の排除」の規定も思い出しました。

『 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない

何人も」とは、他人の就業に介入して利益を得る第三者をいい、個人、団体又は公人、私人を問いません。つまり、公務員であっても、違反行為の主体となりえます。
業として利益を得る」とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいい、たとえ1回の行為でも、反復継続して利益を得る意思があれば違反となります。 なお、この労働基準法第6条に違反した場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金というかなり重い罰則が科せられます。

このようにいわゆる賃金のピンハネを根絶するために設けられた条文ですが、先ほどの議員の行為は、この条文に直結はしないでしょうが、秘書の給与の出どころは税金であり、3名の秘書を雇う裁量権は議員にあるわけですから、給与から強制的に10万円を寄附させていたことは、実態としては、中間搾取に当たる行為だと思います。元のお金が税金というのは、より悪質性を感じるのですが。。。。

最近、議員の不祥事に慣れ過ぎていて?人々はあまり怒りを表面に出していませんが、税金の使われ方が本来の趣旨と違うことになって、議員個人の財布に入っているのであれば、厳しい目で監視することは国民の義務のひとつだと思うのですが、皆様はどのように思いますか??

社労士講師室・伊藤修登

つづく。
※別段の記載のない限り、本原稿作成時点で施行されている法令に基づいた内容になっています。


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