【社会保険労務士】
「 在職老齢年金の改正案、本当にこれでいいのか??? 」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「 在職老齢年金の改正案、本当にこれでいいのか??? 」 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

こんにちは。今日は2019年11月15日。
先週、社労士試験の合格発表がありました。合格率6.6%という狭き門を突破された方々、おめでとうございます!!禁酒をされていた方は、大いに美酒に酔いしれたことでしょう。そして、せっかく取った資格なのですから、開業登録や勤務登録をして、ぜひとも社会保険労務士として活躍してください。
一方、惜しくも不合格だった方々、悔しいと思います。しかしながら、ここは気持ちを切り替えて、来年の試験に向けて勉強を開始してください!なぜなら、来年の試験まで、残り9カ月しかないからです。来年はオリンピックが開催されますが、例年通りの試験実施日だとすると、8月23日(又は8月30日)に行われるはずです。ですので、残り日数を意識して勉強するようにしてください。
不合格だった方々は、少し勉強方法を見直してみましょう。合格基準点からも分かるように、全体の65%を正解すれば、合格することができますので、合否にあまり影響がないような細かい箇所に拘るのは得策ではありません。
また、「なぜ、こういう規定なんだろう?」という疑問がわいても、立法趣旨を問うような問題はほぼ出題されませんので、「なぜ?」に拘りすぎる勉強は非効率的だと思います。このあたりのことを意識して、「合格するための勉強」をしてください。100点満点を目指す必要はありません。

さて、一部の新聞報道によると、在職老齢年金の制度が改正されるかもしれないとのこと。今、ちょうど話し合いの最中なので、最終的にはどうなるのか不明ですが、たたき台としては、65歳以上のいわゆる「高在老」の支給停止調整額を、現在の47万円から51万円くらいに引き上げる案を話し合っているらしいです。
この改正案、どう考えてもおかしな改正としか思えないのですが。。老齢厚生年金を学習した方々であれば、ほとんどの方がそう思われるのではないでしょうか。
なぜなら、この改正案、極めてひらたくいうと、得をするのは、65歳以上で月に47万円を超える収入のある人だけです。(十分、生活に余裕のある人です。)
余分に年金を支給するその増額分の財源は、いったいどうするつもりなのか?現在、年金財政はとても苦しくて、マクロ経済スライドをかけて、将来に向けて、ゆるやかに年金の支給水準を下げていく方向だというのに、高齢の高所得者に優遇する改正って何?という感じです。そのような財源があるのであれば、将来の世代のための財源として貯えておいてほしいです。
ちなみに、65歳以上で47万円を超える人は、全体の1.5%しかいません!!残りの98.5%の人は相対的には、年金が減る理屈になります。審議会のメンバーを見ると、いずれもいわゆる高名な高所得者ばかりです。(まあ、審議会に選ばれる人は、そういう人がメンバーになるのはある意味当然とは言えます。だからこそ、低所得者のことを考えた改正をしてほしいのですが。)また、健康保険法の運営委員会なども法律上は、「事業主」、「学識経験者」、「被保険者」を各同数選ぶとなっていますが、「被保険者の代表」などは、本当は、ごく普通の会社員を選ぶべきだとは思いますが、皆様はどのように思われますか?

ちょっと脱線しましたが、在職老齢年金の制度は現行のままでよいと思います。あと、誤解している人がとても多いと思いますが、そもそも先ほどの47万円という基準には、「老齢基礎年金」は入っていません!
老齢厚生年金と賃金の合計が47万円を超える場合というルールです。これを読んでいる受験生の方は、「老齢基礎年金」は調整対象外って、きちんと覚えていましたか??
月約7万円の「老齢基礎年金」は調整対象ではないので、実質としては、月54万円を超える収入の人が「高在老」の対象者というわけです。ちょっと驚きでしょ?(かなり、生活に余裕のある人です。)

では、過去問題を見てみましょう。

『 平成31年4月において、総報酬月額相当額が480,000円の66歳の被保険者が、基本月額が100,000円の老齢厚生年金を受給することができる場合、在職老齢年金の仕組みにより月額55,000円の老齢厚生年金が支給停止される。』

※総報酬月額相当額=標準報酬月額と直近1年間の標準賞与額の総額を12で割って得た額とを合算して得た額
※基本月額=老齢厚生年金の額(加給年金額等を除く)を12で割って得た額

〇か×か分かりますか?
🕙
🕓
🕖
正解は、〇です。計算式で確かめてみましょう。
(480,000円+100,000円-470,000円)÷2=55,000円
上の式の470,000円が支給停止調整額です。
つまり、55,000円の年金が支給停止されるので、この人の月額収入は、
480,000円+45,000円=525,000円 となります。
厚生年金保険法なので、厳密には保険です。つまり、老後、働けなくなったときのための収入保障の意味合いがあるので、十分に所得のある人の年金の一部を支給停止するのは理屈に合っています。理屈に合っているから、これまで長い間こういう法律だったわけです。

この改正案の本当の狙いは、70歳まで労働してほしい。できれば、老齢厚生年金の支給開始も70歳にしたいという国の思惑があるような気がするのです。老齢厚生年金は多くの国民に影響のある法律なので、改正は慎重にしてほしいと思います。大学入試の英語や国語の試験もそうですが、何かを変えるときには、時間をかけた慎重な議論が本当に望まれます。


社労士講師室・伊藤修登

つづく。
※別段の記載のない限り、本原稿作成時点で施行されている法令に基づいた内容になっています。


TAC社会保険労務士講座では、各校舎でガイダンスや講義を行っています。
また開講日は予約不要・無料で実際の講義を受ける事ができます。
ご興味がありましたら、ぜひお気軽にTAC各校舎やカスタマーセンターまでお問い合わせください。

TAC社会保険労務士講座のホームページはこちら