【司法試験】

H29司法試験145位合格者日誌

~インプットの目的~


こんにちは。

 

今回も前回に引き続き、2回目の受験に向けてどんな勉強をしたかを書こうと思います。

 

3.規範を正確に(判例の示す規範なら完璧に再現できるように)覚える!

 

どのように覚えるかは人それぞれだと思いますが,いわゆる「規範」を覚えなくてはいけないことは,司法試験受験生の定めです。

また,その「正確性」が重要であることも,既に多くの方が口を酸っぱくして述べられているところです。

なので,「なんだ,当たり前のことじゃないか」と思われた方も多いかもしれません。

しかし,自分の書いた規範が本当に正確かどうかは,自分ではあまり気づけないことが多いです。

もし答練で自分ではよく書けたと思ったのに結果が振るわなかった場合,そもそも自分の覚えている規範が正確でない可能性があります。

 かくいう私もそうでした。

 

以下,一例を示します。

 

正に平成29年の司法試験の商法で使った規範です(ネタバレ注意)。

 

株主総会における議決権代理行使について,最判昭和43年11月1日は「同条項〔注:現会社法310条1項〕は、議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の所論上告会社の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によつて攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、……有効であると解するのが相当である。」と述べています。

 

さて,実際に答案上でこの判例の論述を再現したいという場合,まさかこの10行前後の文章を全部覚えるわけにはいかないし,かつ当然答案ではその場の文章の流れがあるので,どんな文章の流れの中でも通じるように抽象化しつつ,かつコンパクトにまとめる必要があります。

 

こういう場合,一般的には「条文の文言→規範を導く理由付け→規範(事前に用意できる場合は)→あてはめ」というふうに整理するのが良いと言われているところです。

 

この点,私の再現答案では以下のようになっています。

 

「乙社定款(以下、定款)には、議決権の代理行使について代理人を株主に限る旨の規定がある(定款16条)。これは議決権の代理行使を広く認めた310条1項に反し無効ではないか。  

この点、合理的な理由に基づく相当な制限ならば許されると解する。定款16条の趣旨は、総会屋等に株主総会がかく乱されることを防止し、もって会社の利益を図ることにあり、合理的な理由に基づくといえる。また、乙社は株式を上場しておらず、株主も限られているので他の株主を探すことはそう難しくはなく、この程度の制限であれば相当といえる。  

よって、定款16条自体は有効である。」

 

この論述には,自分では重要なポイントが3点あると思っています。

 

まず一つ目は,規範を「合理的な理由に基づく相当な制限」とコンパクトに,かつ過不足なくまとめたことです。

何も知らずに上の判例を読むと,規範部分を漫然と読んでしまいがちで,なんとなく「とりあえず合理的であればいいんでしょ?」ぐらいに思う方が多いのではないでしょうか(私は当初そうでした。実際に答練で適当に書き,全然点数が入りませんでした)。

しかし,この判例の規範には,「①合理的な理由②相当な制限」という二つの要素があって,いずれも落としてはならないのです。

仮に規範で①しか書いていなかったら,②のあてはめ部分の点数を落とすだけでなく,上記判例自体を知らないんだなという評価がされるおそれすらあります。

 

また,判例の規範を正確に再現しようという意識も必要です。

判例の表現は,正確には,「合理的な理由による(・・)(≠基づく)相当程度(・・)の(・)(≠な)制限」です。非常に細かい違いだし,これくらいのブレで採点者に揚げ足を取られることは流石にないでしょう。

しかし,受験生としては,どういうミスが怒りを買うか分からない以上,判例にべったりが一番安心です。「大体同じ意味だろう」と思って差し替えた言葉が,実は違う意味だったということが私は何度もありました。

 

二つ目は,私は事前準備の段階でこの規範に関して理由付けは不要と判断し,実際に本番でも書いていないということです。なぜ私がそう判断したかというと,上記判例が理由付けを述べてくれていないからです。

もちろん,判例が理由付けを述べていなくても,常に理由付けを書かなくてよいというわけではありません。採点実感等で書けと言われているもの(ex.刑訴法197条1項但書の「強制の処分」の定義を導く理由付け)については,書いた方がよいと思いますし,問題によっては,とにかく理由付けを何かしら書くべきという場面もあるかと思います。

それにもかかわらず,私がなぜこの規範に関して理由付けは不要と判断したかというと,それを述べてくれている文献がちょっと探すだけでは見つからなかったからです。ちょっと探すだけですぐに出てくるようなものならともかく,それで出てこないということは比較的どうでもよいと思われているということです。そうすると,それに点数が振られている可能性は低く,頑張って理由付けを自作しても,加点にならないどころか,むしろ間違った理由付けを書いてしまうおそれすらあります。だから,理由付けを事前に準備しなかったのです。

ただし,ここで大事なのは,「この規範に理由付けはいらない」ということ自体は覚える必要があるということです。というのも,本番で「規範を書くときは必ず理由付けを書かなきゃ!」という固定観念にとらわれて,理由付けを捻り出すことに注力すると,かなりの時間を浪費するからです。特に,私のように言葉遊びが好きな人間からすると,「こんな適当な理由付けからはこの規範は導かれない!もっと規範にしっかり対応した理由付けを練らなくては!」などと無駄に拘り,その時間筆が完全にストップするのです。

似たような経験のある方は,本当に注意してください。

 

三つめは,「合理的な理由」のあてはめ部分は,判例の論述どおりであり,逆に「相当な制限」のあてはめ部分は,判例が全く述べてくれていないため,自作せざるを得ないということです。

まず,前者については,判例が述べてくれている以上,判例の論述を参考に,事前に用意する必要があります。すなわち,「①攪乱防止②会社の利益を保護」という二つの要素があるということを意識し,両方を盛り込む必要があるということです。特に②については,無視する人が多いのではないかと思いますが,一応この要素については議論のあるところなので,意識して覚えておきたいところです。

次に,後者については,自作といっても,これも事前準備できる場合があります。本問では,4A論パタテキストでの類題における中村先生の論述例から,「閉鎖的会社ならこういうあてはめができる」という知識を持っていたことから,上記のようなあてはめができたのです。

 

以上,一つの判例を元に,普段私がどんなことを考えて知識のインプットをしていたのかを書かせていただきました。

長々と書きましたが,要するに,私のインプットの目的は,答案を書く最中に迷って筆が止まることのないようにすることだったということです。

判例にべったりなのも理由付けを適宜省略するのも全て,答案を書いている最中に迷って筆が止まるのを防ぎ,書く時間を確保するためです。

途中答案を連発したという失敗体験から,その原因を探ったところ,書いている最中に変なところ(書く必要のない理由付けの捻り出し等)で悩んで筆が止まるからだということに気づき,その克服のために以上のようなことを日々意識するようになったのです。

 

私と同じ傾向のある方はぜひ参考にしてください!

 

次回に続く!!