【司法試験】

H29司法試験145位合格者日誌

~インプットの方法(商法編その2)~


こんにちは。

 

今回は前回に引き続き商法についての私のインプットの方法をご説明したいと思います(H29の司法試験商法論文過去問のネタバレアリです)。

 

なぜ私がインプットをやり直すための教材として論パタテキスト商法を選んだかというと,アウトプット学習(問題演習)をする中でインプットをするべきだと思ったからです。なぜそのように思ったかというと,インプットテキストにある規範を覚えるだけでは,実際の答案の中でそれをどうやって使うのかが分からない場合があるからです。

 

どういうことかというと,例えば商法では,正にH29の司法試験第2問(商法)設問1で出題された会社設立の分野が説明に適した例だと思いますので,以下それを使って説明します。

 

設問1(1)の設立費用に関する問題を解くのに必要な知識として,「設立中の会社と成立後の会社とは実質的に同一の存在」「設立中の会社は法人格を持たないので,形式的権利能力は認められない。しかし,その実質的権利能力について,自ら会社として成立する目的の範囲内で認められる」「発起人の権限の範囲は会社設立に法律上・経済上必要な行為に限られ,成立後の会社の開業準備行為までは及ばない」などの断片的なフレーズは,多くの人が覚えていると思います(私も1回目の受験段階ではこれくらいの知識レベルでした)。

 

しかし,これだけ覚えても,①「なぜ設立中の会社と成立後の会社をわざわざ同一と言わなければならないんだ?同一なのは当然じゃないか?」とか②「同一だから何なんだ?」とか③「法人格がなければ権利能力を持たないはずでは?実質的権利能力とは何だ?」とか④「設立中の会社の実質的権利能力の範囲と発起人の権限の範囲はどういう関係にあるのか?」などの疑問が出てくるのです。

 

もちろん,上記の疑問は,司法試験に合格するためだけならば,深く考える必要のないものだと思います(答案に文字として書けさえすればよい)。

 

しかし,フレーズを断片的に覚えるだけでは,試験本番でいざ書くとなった時に,「あれ,こことここのフレーズってどう繋げるんだっけ?」というふうに分からなくなり,筆が止まってしまい,何とか文章を繋げるにしても想定以上に時間を費やすことになるのです。

 

これを防ぐためには,問題演習をする中で,実際に答案を書いたり,書くべき文章を頭の中で思い浮かべたりして,本番でつまずきそうなポイントを洗い出しておき,断片的なフレーズだけを覚えるのではなく,本番でどのような文章を書くかまで予め決めておく必要があります。

 

以下,実際の私の再現答案(ランクはAです)を示します。

 

「第1 〔設問1〕

1 小問(1)

  (1) 発起人の行為によって発生した法的効果が特別の移転手続なしに成立後の会社に帰属することを説明するため、成立後の会社と同一である設立中の会社の概念を認める。設立中の会社は権利能力なき社団であるため、発起人の権限内の行為の効果は、形式的には発起人に帰属するが、設立中の会社に実質的権利能力を認め、実質的には設立中の会社に帰属すると解する。

 ここで発起人の権限の範囲について、設立中の会社の権利能力は「目的の範囲内」で認められる(民法34条)ところ、その目的とは会社の設立であるから、発起人の権限は設立に事実上・経済上必要な行為につき認められ、「設立に関する費用」(会社法28条4号)とはこれに必要な費用を指すと解される。よって、同条号は、会社が発起人に求償できる範囲を示したに過ぎないものである。

 Aは甲社の設立手続を進める上で、設立事務を行う事務所と設立事務を補助する事務員が必要であると考え、「甲社発起人A」の名義でDから事務所用建物を賃借し、Eを設立事務を補助する事務員として雇用した。これらに要する費用は設立に事実上・経済上必要な行為に要する費用であるから、上記に要する費用が合わせて100万円であり、設立費用として定款に記載された80万円を超過するとしても、本来成立後の会社である甲社が全額負担するのが筋である。

  (2) 一方、判例は、定款記載の額の超過分については、成立後の会社は負担しないと解している。これは、会社資本充実の原則に配慮したものと考えられる。

  (3) しかし、現行会社法の下では、会社資本充実の原則は、従前ほどには重視されていない。よって、筋通り会社が全額負担すると解すべきである。

  (4) よって、甲社は支払を拒否することができない。」

 

この再現答案の(1)の第1,2段落は事前に準備した論証です。

 

これを見ていただければ,上記①~④の疑問のうち,実際の答案に反映させたものと無視したものとがあることがお分かりになると思います。ただ,無視したものについても,私はそれを無意識のうちに無視したのではなく,事前準備の段階で,「この疑問は考えてもよく分からないから,本番ではこの部分は無視して書こう」と決めていたから,予定どおり書かなかったのです。それゆえ,この部分の論述については,さほど筆を止めることなく短い時間で書くことができました。

 

ということで,私は,アウトプット学習(問題演習)をする中でインプットをするべきだと考えたのです!

 

次回に続く!!