【司法試験】

H29司法試験145位合格者日誌

~インプットの方法(刑訴編その1)~


こんにちは。

 

今回は刑事訴訟法についての私のインプットの方法です(H28の司法試験刑訴法論文過去問のネタバレアリです)。

 

刑事訴訟法についても,まずH28司法試験の敗因分析から始めました。

私はこの年の刑訴の問題は,設問1に最も時間がかかると思い,設問2以降を早めに終わらせて設問1に十分な時間を投入しようと考え,設問2→設問3→設問4→設問1という順序で書きました。

その結果の再現答案(抜粋)がこれです(ランクはE)。

 

第1 〔設問2〕(設問2だけで1138文字)

  1 下線部①   

  (1)まず、Tは、独立して弁護人を選任する権利を有する「被疑者」甲の妻(「配偶者」)から(30条2項)、「依頼」を受けて「弁護人となろうとする」「弁護士」であるから、立会人をなくして接見等をする権能を有する(39条1項)

  (2)これに対し、「検察官」Sは「捜査のため必要があるときは」「公訴の提起前に限り」、接見指定をすることができる(39条1項本文)。甲はまだ被疑者段階で公訴提起はなされていないので、「公訴の提起前」という要件は問題ないが、「捜査のため必要があるとき」といえるか。

 この点、同条項の趣旨は、被疑者の身柄は一つであるのに対し、捜査機関としては被疑者を取り調べる等の捜査の必要性があり、一方で被疑者の防御権の確保の必要性があるため、両者の調整を図るというものである。とすれば、「捜査のため必要があるとき」とは、「捜査の中断により顕著な支障が生ずる場合」、具体的には「現に取調べ中であるとか、間近いときにおいて取調べ等の予定が入っているとき」と解する。

 ここで、Tが午前9時50分にSに電話したとき、検察官は正に9時45分から弁解録取手続を開始しており、「現に取調べ中」であったといえる。

  (3)ただし、本件の接見は初回接見であった。初回接見は憲法上の権利の保障の出発点となるもので、特に保護の必要性が高いから、可能な限り近い時間に接見指定をしなければ、「被疑者の防御の準備をする権利を不当に制限するようなもの」として許されない(39条3項但書)。

  (4)本件において9時45分から開始した弁解録取手続の終了までには約30分を要し、I地方検察庁からTが接見を希望するH警察署まで自動車で約30分を要することから、H警察署に到着するのはいくら早くても10時45分ということになり、移動時間の誤差等を考えれば、11時という時間設定は「可能な限り近い時間」といえる。

  (5)よって、①の措置は適法である。

 2 下線部②

(……321文字省略……)

第2 〔設問3〕

(……1072文字省略……)

第3 〔設問4〕

(……690文字省略……)

第4 〔設問1〕(963文字)

 1 まず、「司法警察員」Pは、甲につき、覚せい剤の使用及び所持という「犯罪があると」の疑いを抱いた(「思料する」)から、これ以降のPの行為は「捜査」に当たる(189条2項)。

 2 とすると、「捜査」に関しては強制処分法定主義が妥当するため、(197条1項但書)、本件留め置きが「強制処分」に当たらないかどうか問題となる。

 ここで、同条項の趣旨は、捜査機関の恣意によって国民の権利が侵害されるのを、立法の面から抑制しようというものである。ただし、国民の権利を制約するもの全てを「強制処分」と解すると、より制約の強い逮捕などは、刑訴法上に法定されている手続を履践すれば可能となるのに、それよりも弱い制約は法定されていないため一律不可能となるのは妥当でない。よって、「強制処分」とは、相手方の明示又は黙示の意思に反し、重大な権利利益の制約をする処分と解する。

 本件留め置きは、甲がたびたびその場から立ち去ろうとするのに対し、Pらは計8度にわたってそれをひきとめており、また自分から手を出してはいないものの、甲がPの体に接触すると、胸部及び腹部を前方に突き出しながら、甲の体を甲車運転席前まで押し戻すなどして、有形力の行使をもって、甲自身の移動を阻んでいる。さらに、Pらは甲車を挟むようにしてパトカーを設置しており、これにより甲車を発車させることで甲が移動することも不可能となっている。以上より、本件留め置きは甲の身体の自由という重大な権利利益を制約し、「強制処分」に当たるといえる。その種類としては、逮捕に当たる。

 3 ここで、その後にPらは甲を現行犯逮捕をしているが、本件において緊急逮捕の要件が備わっていれば、採る手続を間違えただけということで瑕疵が治癒されるのではないか。以下、210条の要件を検討する。

  (1)覚せい剤所持の刑は10年以下の懲役である(覚せい剤取締法41条の2)から、「長期3年以上の懲役にあたる罪」といえる。

  (2)甲には、目の焦点が合わず異常な量の汗を流す等、覚せい剤使用者特有の様子が見られた。さらに甲には赤色の真新しい注射痕があった。またPは甲のバッグ内に注射器を認めた。以上から「充分な理由」がある。

  (3)甲に逃げられてはいけないから、「急速を要」する。

  (4)逮捕状は発付されていないから、違法である。

以上 

 

見ていただければお分かりのとおり,せっかく設問1に時間を残すために設問1を後回しにしたのに,設問2~4に時間をかけすぎて,逆に設問1にかける時間を圧迫し,設問1の文字数が全然足りないという事態になりました。

この年の問題を解いた方ならお分かりになると思いますが,この年の問題文は設問1に関する事実の分量が圧倒的に多く,配点割合は示されていないものの,設問1の配点が非常に大きいことが推測されます。

 それにもかかわらず,設問1の文字数が他の設問の文字数を下回るということは,基本的に答案戦術が間違っているということです。

 

その上,この再現答案の設問1の記述にはまだまだ突っ込みどころがあります。

 

まず,時点を気にせず,全部まとめて強制処分だとしているところです。留め置きについて,時点ごとに分けて強制処分性を検討するという手法については,知らなければできないと思う(当時私は知りませんでした)ので,それができていないのは仕方ないかなとは思うのですが,それでも,強制処分とすると,任意捜査の限界についての論述ができません。そうするとその部分の配点が得られません。もちろん,強制処分とするのが正解筋であるならそれでいいのですが,問題文には任意捜査の限界を論じる中で使えそうな事情がたっぷりあることを踏まえると,強制処分とするのは得策ではなかったと思います。

 

そして,強制処分該当性の規範・論証を長々と書いているのもいけません。たしかに,過去の採点実感等で,強制処分該当性の規範を導く理由付けについてはしっかり書くようにとの記述があったので,その点に配慮したのは良いのですが,圧倒的に時間がない中で,おそらく配点が大きいであろう事実の適示ではなく,法律論の方に時間を多分に割いてしまったのは,ミスと言わざるを得ないと思います。

 

さらに,緊急逮捕の要件を検討しているのもダメだったと思います。理論的にこの記述が間違っているかどうかは分かりませんが,他の人がこんなことを書いてくるとは思えませんし,自分も練習の段階であまりしたことのないこんな処理を本番ですべきではなかったと思います。

 

この再現答案についてはまだまだ語りたいことがあります。

次回もその反省点を見ていきたいと思います。

 

次回に続く!!