【司法試験】

H29司法試験145位合格者日誌

~憲法論文の勉強方法その3~


こんにちは。

 

先週に引き続き,憲法の論文の勉強の仕方について書いていきたいと思います(平成28,29年度司法試験憲法論文のネタバレありです)。  

 

前回の記事では,私の平成28年度司法試験憲法論文の再現答案を用いて,その年の反省点を書かせていただきました。  

反省点は,①適切な論述量の配分ができていない②憲法の基礎知識が浅い③問題文の事情を存分には使えていない④主張反論の形式を守れていない⑤基本的事項も疎かであるでした(なお,②と⑤が似たような表現になってしまい,違いが分かり辛かったかもしれません。大変失礼しました。

 

私としては,②でいう「基礎知識」というのは,基本書や判例百選に書いてあるような論文知識(格別にインプット学習をしなければ身につけられないもの)の中でも比較的メジャーなもの,⑤でいう「基本的事項」というのは,「プライバシー権に二重の基準論を用いるのは少なくとも一般的ではない」等,(特別なインプット学習をせずとも)普段から規範や論証を暗記していればまず犯さないはずのミスを含む全般的な注意事項という意味で用いていました)。  

 

①⑤は,過去問演習や答練・模試の受講によって,自然と鍛えることができます。③④も,形式面は鍛えることができます。  

 

しかし,②は,ある程度基本書や判例集の類にも手を出さなければ身につかないものです。③④も,②ができてこそ,真に鍛え上げることができるものです。  

 

どういうことかというのは,具体例がなければ説明し辛いので,以下私の平成29年度司法試験憲法論文の再現答案を掲載します(ランクはAです)。  

 

平成28年度の再現答案と見比べて,私が,1年間のインプット学習により,どのようなことを書けるようになったのか,そして,どのような書き方ができるようになったのかを見ていただけると幸いです。  

 

次回,これを用いて,私のインプット学習の効果が出た箇所の解説をしたいと思います。

 

第1 〔設問1〕  

 1 特労法(以下、法)15条8号及び18条1項は違憲であり、違憲な規定に基づいて行われた本件のBの収容及び強制送還は国賠法上「違法」であると主張する。  

 2 法15条8号は、Bの妊娠・出産の自由(以下、本件自由)を侵害し、憲法(以下略)13条後段に反し違憲である。   

  (1)人権は前国家的権利であるから、外国人といえども性質上可能な限り保障される。妊娠・出産の自由は性質上外国人にも保障されうる。  

 ここで、妊娠・出産することは、家族を作り、子孫を残すというだけでなく、子ができ、家庭ができるという自己の人生設計にも関わることであり、個人の人格形成に資する。よって、人格的生存に不可欠であるから、自己決定権として、憲法13条後段により保障される。   

  (2)妊娠・出産したとしても、強制出国させられるだけで、その後出国先で妊娠・出産はできるものの、強制出国させられると、母子が父親と引き離される上、就労の機会を奪われるわけで、これを恐れて妊娠・出産をしないようになることから、本件自由は制約されている。   

  (3)上記の通り、重要な権利が重大に制約されているわけだから、厳格な基準、すなわち目的が必要不可欠で、手段が必要最小限度でなければ違憲と解する。    

  ア この規定の目的は、欧米諸国のように移民を大規模に受け入れた結果として社会的・政治的なあつれきが生じることを防ぐこと、外国人被扶養者の増加が我が国の社会保障制度や医療サービス等に及ぼす影響を緩和しようというものであり、必要不可欠といえなくもない。    

  イ しかし、特定労務外国人が特定労務に就労することができるのは法務大臣が指定する地域に限られる。とすると、必ずしも社会的・政治的なあつれきが生じるとはいえず、そのおそれは観念上の想定に過ぎない。  また、特定労務外国人については日本人よりも社会保障等の度合いを緩める等してその影響を緩和することが可能であり、そのような差を設けずに一律に禁止するのは必要最小限度の手段とはいえない。    

  ウ よって、違憲である。  

3 法18条1項は、憲法33条に反する。   

 (1)憲法33条は本来刑事手続を想定したものであるが、行政国家現象により行政権が国民の権利利益を制約する機会が増加していることから、刑事手続に類似する行政手続については、同条が準用されると解する。これは外国人についても同様である。   

 (2)警備官は、嫌疑者を覚知したときには調査を開始し、禁止行為を行ったと疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判所の発する令状や、行政官の事前審査に基づく収容令書など、身柄を拘束する者とは別の立場の者が強制処分のために発する書面を要しないで、嫌疑者を収容することができるとなっていることから、憲法33条が準用されるならば、同条に反する。   

 (3)警備官による収容は、審査官による審査を経るまでに、最大48時間認められる(法18条3項)。これは、検察官による逮捕(刑事訴訟法204条1項)と同じ時間制限である。また、審査官による審査を経れば14日間の収容が認められている(法18条5項)が、これは刑事手続における勾留と類似しているものの、勾留では逮捕段階と勾留段階で二重の司法審査が予定されているのに、本件の収容では審査官による審査しか予定されていない。    

 (4)よって、違憲である。

第2 〔設問2〕  1 13条後段違反について  

  (1)ア 反論1 外国人は、特定労務外国人の認証の申請に際し、15条各号に掲げる事項を理解した上で同事由に該当する行為をしない旨を制約する書面を提出することとされている(法5条5号)。とすると、特定労務外国人は、本件自由を放棄しているといえる。     

  イ 私見1  自己決定権の放棄は、性質上放棄が許されるものでなければ認められないと解する。なぜなら、個人の自己決定を実質的に保障すべきだからである。  

  妊娠・出産の自由は、子孫を残すだけでなく、子を設け、家庭を作るという人生設計に関わるものである。もちろん、子供を設けないという生き方も尊重されるべきであるが、個人の自己決定を尊重するため、その放棄は認められない。というのも、外国人が申請の際には子供は欲しくないと思っていても、その後心変わりする可能性は十分にあるからである。これは、申請の要件として、申請時点で満20歳以上45歳未満という妊娠・出産が可能な年齢であることが定められている(法4条1項1号)ことからも導かれる。  よって、本件自由が放棄されているとはいえない。   

  (2)ア 反論2 外国人にはそもそも入国の自由が認められない。強制出国させられても、本来の状態に戻るだけで、妊娠・出産の自由に対する制約があるとはいえない。     

  イ 私見2 強制出国させられると、母子と父が引き離されることになる。これは、妊娠・出産により築かれた家庭を壊すというもので、強い威嚇的効果を持つ。よって、このような規定があると、特定労務外国人が妊娠・出産をすることは事実上不可能になる。  

 よって、この反論は認められない。   

  (3)以上より、重要な権利が重大に制約されているといえるから、原告と同様、厳格な基準を採る。   

  (4)ア 反論3 日本への長期にわたる定住を認めないという趣旨を徹底する必要性がある。     イ 私見3 確かに特定労務外国人の滞在期間は原則3年とされているが、更新可能ともされている。これは、適性のある労働者についてはある程度長期間にわたり雇用を継続できるようにするという趣旨である。とすると、適性ある労働者については、妊娠・出産を認めても、法の趣旨には反しない。それにもかかわらず、一律に妊娠・出産を禁止するというのは、必要最小限度とはいえない。  

  (5)ア 反論4 社会保障制度等の運用については、財政的考慮が必要であることから、立法裁量が広く認められる。とすると、原告の言う通り特定労務外国人については日本人よりも社会保障等の度合いを緩めるという手段をもって必要最小限度の手段ということはできない。     

  イ 私見4 そもそも特労法が定められた目的は、少子高齢化の影響で日本で労働力の不足が深刻化し、経済成長にとって大きな足かせとなっているところ、特定労務外国人を受け入れることにより労働力の円滑な供給を実現し、もって国民生活の安定及び社会経済の発展に資する、すなわち国益を実現しようというところにある(法1条)。それにもかかわらず、国家がその者たちに対する社会保障等をしないというのは、報償責任及び国際協調主義(憲法98条2項)に反する。よって、立法裁量は狭く解すべきである。   

  (6)以上より、違憲である。  

 2 33条違反について   

  (1)ア 反論1 収容は強制出国に向けてなされるものであり、刑罰に向けたものではない。  

  イ 私見1 強制出国により受ける不利益は重大なものであり、刑罰に匹敵する。   

  (2)ア 反論2 受け入れた外国人に問題がある場合には迅速に出国させることにより我が国の秩序を守り国民の安心を得る必要がある。

  イ 私見2 特定労務外国人の就労は指定地域のみで認められていることから、禁止行為が行われても直ちに我が国の秩序が乱されるようなことにはならない。   

  (3)ア 反論3 外国人の入国・滞在の可否は国家の主権的判断に属する。     

  イ 私見3 特定労務外国人も、特労法上の一応適法な手続に則って我が国に入国した以上、強制出国を受ける際には適正手続に則って判断される利益を有する。   

  (4)ア 反論4 嫌疑者に対し告知・弁解の聴取することが求められ、一定の手続保障が与えられている。    

  イ 私見4 そのこと自体が刑事手続類似であることを基礎付ける。   

  (5)よって、違憲である。

以上

 

次回に続く!