【司法試験】

H29司法試験145位合格者日誌

~再現答案を使った勉強(商法)~


こんにちは。

 

今週は,平成27年度の予備論文の商法の再現答案を載せたいと思います。  

 

評価はCでした。  

 

自分としては,終わった直後は設問1についてはまあまあできたつもりで,設問2については分野的に知識不足の中それなりにひねり出せたつもりでしたが,しばらくして,設問1での多数の細々としたミスや設問2で的外れなことを書いていることに気付いて,高評価とはならないだろうとは思っていました。  

 

そういう意味では,自分としてはCでとどまってくれてよかったという感想です。

 

第1 〔設問1〕

 1 小問⑴

  ⑴ A及びCに対するEらの請求は,会社法(以下,法令名省略)429条1項に基づく損害賠償請求権と構成できる。

  ⑵ そもそも同条項の趣旨は,社会経済上重要な地位を占める株式会社の活動が,経営の専門家たる役員等に極めて強く依存しているから,第三者を広く保護するために特別の法定責任を定めたものである。

  ⑶ AはX社の代表「取締役」であり,Cは「取締役」であるから「役員等」に当たる(423条1項括弧書き参照)。

  ⑷ Eらは株式会社でもないし役員等でもないから「第三者」に当たる。

  ⑸ Eらは,食中毒により被った「損害」がある。

  ⑹ 「その職務を行うについて」といえるかどうか,Cは弁当事業部門本部長を務めているから満たされる。Aは代表取締役であるから,株式会社の業務に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する(349条4項)ため満たされる。

  ⑺ 「悪意又は重大な過失があったとき」といえるかどうか,悪意又は重過失の対象が何か問題となるも,上記趣旨より任務懈怠について悪意又は重過失があればよいと解する。そして取締役には忠実義務(355条)や善管注意義務(330条,民法644条)が課されるところ,同義務違反が任務懈怠を構成する。

   ア まずCの任務懈怠について,Cは消費期限が切れて百貨店から回収せざるを得ない弁当が多いことに頭を悩ませており,回収された弁当の食材の一部を再利用するよう,弁当製造工場の責任者Dに指示していた。またAの事情聴取に対し,「直材の再利用によって食材費をかなり節約できる。」とも説明しており,経営判断とも思える。 しかし,消費期限切れの食材の利用はそれだけで大変危険な行為であり,「再利用する食材は新鮮なもののみに限定しており,かつ,衛生面には万全を期している。」とは言っているものの,実際に食中毒事件は起こってしまっており,その危険が除去できていないのは明らかである。 よってCには任務懈怠があり,Cはそれについて悪意だったといえる。

   イ Aの任務懈怠について,Cから事情を聞いたAは,「衛生面には十分に気を付けるように。」と述べるだけだった。Aは前述の通りX社の代表取締役としての権限を有するから,上記の通り大変危険な行為をやめるようCに言う義務があったにもかかわらず,Aはそれを怠ったから,注意義務違反として任務懈怠を構成する。そしてそれについて重過失があるといえる。

  ⑻ Eらに生じた食中毒の原因は,再利用した食材に大腸菌が付着していたことによるものであり,それは上記のA・Cらの任務懈怠によるものだから,因果関係もある。 ⑼ 以上よりA及びCはEらに対し,会社法上の損害賠償責任を負う。

 2 小問⑵

  ⑴ A及びCに対するBらの請求は,小問⑴同様429条1項に基づく請求である。

  ⑵ 前記第1の1⑵⑶については同様である。

  ⑶ 株主たるBが「第三者」に当たるか問題となるも,前記第1の1⑵の趣旨より,第三者保護の範囲を広く解し,株主も株式会社や取締役以外であるから形式的に「第三者」に当たると解する。よってBも「第三者」に当たる。

  ⑷ Bに生じた損害は,Bの有するX社の株式が,X社に係る破産手続開始の決定により,無価値となったことであり,いわゆる間接損害に当たる。間接損害も「損害」に当たるか問題となるも,前記第1の1⑵の趣旨より,第三者保護を全うするため,間接損害も「損害」に当たると解する。

  ⑸ 前記第1の1⑹⑺については同様である。

  ⑹ X社は,弁当の製造販売事業を継続していたが,売上げが伸びず,かつ,食中毒の被害者としてX社に損害賠償を請求する者の数が予想を大幅に超え,ホテル事業の譲渡代金を含めたX社の資産の全額によっても,被害者であるEらに対して損害の全額を賠償することができず,取引先への弁済もできないことが明らかとなったため,X社は平成27年1月,破産手続開始の申立てを行ったのであるから,因果関係もある。

  ⑺ 以上より請求は認められる。

第2 〔設問2〕

 1 会社法22条1項により,Y社は弁済する責任を負うのではないか。

  ⑴ Y社はX社からホテル「事業を譲り受けた会社」である。

  ⑵ X社のEらに対する損害賠償債務は,「譲渡会社」X社の弁当の製造販売「事業によって生じた債務」である。

  ⑶ X社及びY社は,いずれものその商号中に「甲荘」の文字を使用しておらず,「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」とは原則いえない。

 2 しかし,X社は「甲荘」という名称のホテルを経営し,Y社も「甲荘」の経営を続けているから,同条項が類推されないか。

  ⑴ 同条項の趣旨は,事業の譲受会社が譲渡会社と同一の経営母体であるかのように表示したとき,それを信頼した者が譲受会社の資力を頼りに譲渡会社と取引した場合にその信頼を保護することにある。

  ⑵ X社のEらに対する損害賠償債務は取引で生じたものではないから,上記趣旨及ばず,類推されない。こう解しても,Y社が支払った譲渡代金1億円は債務の引受けを前提としたホテル事業の価値に見合う適正な価額であったし,実際に損害の賠償には,ホテル事業の譲渡代金も使われていたので,問題ない。 3 よってY社はEらに対して責任を負わない。