【司法試験】社会人合格者ブログ

~司法試験受験編~



第3話

刑事訴訟法でありがちなミス


みなさん,こんにちは。寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。巷では風邪やインフルエンザ等が流行っているので,体調には十分気をつけてくださいね。


今回は,刑事訴訟法の論文式試験でよくあるミスなどについて言及したいと思います。


①おとり捜査や所持品検査の適法性が問われたときに,「強制の処分」(197条1項但し書)該当性を検討しない。

 

おとり捜査・所持品検査は,刑訴法に「特別の定」がない捜査・行政警察活動です。そのため,もしこれらの捜査や活動が「強制の処分」にあたるレベルで行われた場合は,強制処分法定主義に反し違法となります。そうすると,これらの捜査や活動の違法性を検討する際には,「強制の処分」にあたるかが重要になってきます。

もちろん,実際におとり捜査や所持品検査が「強制の処分」にあたるようなケースの論文式問題はほぼありませんが,「強制の処分」該当性を論じ落としてしまうと,強制処分法定主義を理解していないと見なされ,厳しい評価を受ける恐れがあります。

そのため,捜査法のおおまかなイメージとしては,まずは「強制の処分」にあたり強制処分法定主義・令状主義といった厳格な規律に服さないか,次に強制の処分」にあたらない場合は任意捜査(197条1項本文)として適法かという2段階の発想を持っておくとよいです。


②任意捜査の適法性を検討する際に,相当性の意味を誤解している。

 

上記①の続きですが,「強制の処分」にあたらない場合は任意捜査の適法性を検討することになります。この際,規範としては「必要性・緊急性を考慮した上で,具体的状況下で相当といえる場合には任意捜査として適法である」といった旨のものを定立する場合が多いと思います。

この規範のうち,「具体的状況下で相当」という部分が相当性にあたります。この相当性をあてはめるときに,捜査手法の穏当さのみをもって相当性を認定する答案が多いです(例えば,本件捜査は写真撮影であり,有形力を行使していないので手段として穏当である。よって相当といえる,といったような書き方をする答案です)。

ここでいう相当性とは,捜査の必要性と被侵害利益との間に合理的均衡がとれていることを意味します(『刑事訴訟法判例百選第10版』1事件の解説参照)。つまり,捜査手法の穏当性のみをもって相当性が認められるという訳ではありません。

そのため,相当性のあてはめをする場合には,まず捜査の必要性(事案によっては緊急性も)を認定する,その上で当該捜査によって害される利益を特定する,最後に両者のバランスがとれているかをみるといった流れになります。

相当性のあてはめについては,何を検討すればよいかを理解していない答案が多いので,ここをしっかり押さえておくと他の受験生に差をつけることができます。


③訴因の特定の程度を論じる際に,他の犯罪事実から識別可能な程度に特定すべきという要素を論じ落とす。

 

訴因の特定も,試験ではしばしば問われます。訴因の特定が求められる趣旨は,裁判所に対する審判範囲の確定・被告人に対する防御範囲の告知の2点にあるというのは,ある程度学習の進んだ受験生ならば押さえている事項と思います。

 

ここから訴因の特定の程度が導かれるのですが,特定として求められる程度については,(1)他の犯罪事実と識別可能であり,(2)いかなる犯罪構成要件に該当するかを判断し得る程度の具体的事実の記載が必要となっています(『刑事訴訟法判例百選第10版』44事件の解説参照)。この際に,(1)他の犯罪事実との識別可能性という部分を論じ落とす答案がかなり多いです。おそらく,(1)は当たり前のことを言っているように見えるので,テキストを読む際にも読み飛ばしがちになってしまうのだと思います。しかし,裁判所に対する審判範囲確定機能という訴因の機能を考えれば,(1)への言及は必須です。

 

そのため,訴因の特定の程度を答案で論じる際には,上記(1)(2)を漏れなく記載することになります。



刑事訴訟法は,処理手順を押さえやすく出題範囲にも偏りがあることから,多くの受験生が分かったつもり・できたつもりになってしまう科目だと思います。しかし実際は,上記で挙げたような典型解釈論でさえ,確信を持って正確に論じられる受験生はそう多くありません。典型解釈論については,絶対に油断せずしっかりと詰めていきましょう。

 

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