【司法書士】試験科目の内容を知ろう!
【刑法編】
5月にもかかわらず雨が多く,蒸し暑い日もありますね。朝夕の寒暖差が激しいので風邪には気をつけてくださいね。
今回も,司法書士試験の試験科目についてご紹介して参ります。今回は,午前の部で出題数が3問の刑法をご紹介します。
1 刑法とは?
刑法とは,どのような行為が犯罪となるのか,その犯罪にはいかなる種類の刑罰が,どの程度科せられるかという犯罪と刑罰の具体的内容を規定する法律です。
刑法には,殺人罪,強盗罪,窃盗罪,放火罪,文書偽造罪などの典型的な犯罪とそれに対する刑罰がほぼ網羅的に規定されています。
また,広い意味の刑法には,刑法以外の法律であっても,その法律の規定に違反した場合に,科せられる刑罰が定められている法律のすべてを含みます。例えば,会社法であっても,総会屋に利益を供与した場合には,株主等の権利の行使に関する贈収賄罪として刑罰が課せられます(会社法968条)。
2 刑法の基本原則
刑法の基本原則には,「法律なければ犯罪なく,法律なければ刑罰なし」という罪刑法定主義があります。これは,どのような行為が犯罪になるのか,起こした犯罪にはどのような種類の刑罰がどの程度適用されるのかということを,あらかじめ法律の規定として明文化されていなければならないという考え方です。
また,「責任がないことについて処罰されることはない」という責任主義があります。刑罰を科しうるのは,判断力のある人の故意または過失による犯罪行為であって,本人の意思・主観に責任を問い得る場合に限定されるという考え方です。
3 刑法の性質
刑法は,犯罪と刑罰の内容を定め,国の刑罰権が発動される要件を明らかにするものとして,実体法に分類されます。これに対し,刑法に規定された犯罪が行われたときに,実際にどのように捜査や裁判を遂行すべきかを規定するのは,刑事訴訟法であり,刑事訴訟法は手続法に分類されます。司法書士試験では,刑法は試験科目ですが,刑事訴訟法は試験科目ではありません。
4 刑法の構成
刑法は,総則(総論)と刑(各論)から構成されています。
総則では,刑の種類と軽重,刑の執行猶予,正当防衛,正当行為,緊急避難,故意,責任能力,未遂,併合罪(牽連犯,観念的競合),累犯,共犯,教唆,幇助等が定められています。
また,刑では,公務執行妨害罪,放火罪,住居侵入罪,文書偽造罪,賭博罪,殺人罪,傷害罪,窃盗および強盗罪,詐欺および恐喝罪,背任罪,横領罪などがそれぞれ定められています。
5 犯罪の成立要件
ある行為をした場合に,それが犯罪として処罰の対象(刑事責任を問われること)となるには,次の3つの要素を順番に具備しているか検討する必要があります。
① 構成要件該当性
② 違法性
③ 責任(有責性)
構成要件該当性とは,当該行為が刑法の条文で定められた要件に当てはまることをいいます。例えば,殺人罪(刑法199条)であれば,「人を殺した」という行為がなされているかということです。また,「人を殺した」という行為がなされた場合には,通常,違法性が推定されますが,その行為が正当防衛などにあたる場合には,違法性の要件を欠き処罰の対象とはなりません(これを「違法性阻却事由」といいます。)。また,「人を殺した」という行為が違法性を有する場合であっても,その行為が,心神喪失者,心神耗弱者,14歳未満の刑事未成年者の行為による場合には,責任能力がないものとして処罰の対象とはなりません。このようにある行為が,刑法の構成要件に該当し,違法でかつ有責性を有する場合に限り,刑事責任を問うことができるわけです。
6 司法書士試験のおける位置づけ
刑法の出題数は,午前の部の出題問題数35問中3問(配点1問3点×3=9点)であり,多肢短答式の問題で,すでに学習した憲法と同様の出題数となっています。
この3問の内訳は,故意,中止未遂,強盗罪(平成27年度),共犯,罪数(牽連犯,併合罪,観念的競合),詐欺罪(平成26年度),因果関係,正当防衛,文書偽造罪(平成25年度)からの出題となっています。
刑法は,学習範囲が広いにもかかわらず,3問しか出題されないため,どの程度学習すべきか非常に悩ましい科目であるといえます。
難しい法律ですので,ある程度時間をかけて学習することは必要ですが,出題数を考慮すると,必要以上に多くの時間をかけるべき科目ではありません。
また,出題数が少ないからといって,ほとんど学習しない(捨て問にする)という姿勢も賛成できません。
まずは,学習範囲を,過去に出題された問題(過去問)に出題された条文や判例に絞り,これらの範囲の学習を繰り返し行って,過去問で出題されたところは,100%解答できるくらいまで,知識を研ぎ澄ましておくという学習方法が最も望ましいといえるでしょう。