【司法書士】試験科目の内容を知ろう!
【司法書士法編】


 いよいよ梅雨も本格的になってまいりました。梅雨寒のときもあります。体調管理には十分注意してくださいね。今回も,司法書士試験の試験科目についてご紹介してまいります。今回は,午後の部の司法書士法をご紹介します。

1 司法書士法とは?
 司法書士法とは,いわゆる司法書士の業法,すなわち,主に司法書士の業務に関する規定を定めた法律をいいます。
 第1章では,総則として,司法書士法の目的,司法書士の職責,司法書士の業務,司法書士の資格,司法書士の欠格事由について定めています。
 また,第2章では司法書士試験,第3章では登録,第4章では司法書士の義務,第5章では司法書士法人,第6章では懲戒,第7章では司法書士会,第8章では日本司法書士連合会,第9章では公共嘱託登記司法書士協会についてそれぞれ定めています。

2 司法書士の業務
 司法書士の業務は,次のとおりです(司法書士法3条1項各号)。
(1) 登記または供託に関する手続について代理すること。
 不動産登記や商業登記,最近では債権譲渡登記につき,申請人を代理して登記を申請する司法書士の中核となる業務です。登記申請書の作成のほか,添付書面の作成・収集,登記申請書の提出などを手がけます。また,供託書の作成,提出があります。
(2) 法務局または地方法務局に提出し,または提供する書類または電磁的記録を作成すること。
(3) 法務局または地方法務局の長に対する登記または供託に関する審査請求の手続について代理すること。
(4) 裁判所もしくは検察庁に提出する書類,または筆界特定の手続において法務局もしくは地方法務局に提出し,もしくは提供する書類もしくは電磁的記録を作成すること。
 裁判所に提出する訴状や答弁書,準備書面の作成のほか,家庭裁判所に提出する特別代理人の選任審判申立書,後見人選任申立書,不在者財産管理人の選任申立書の作成等があります。
(5) 上記(1)~(4)の事務について相談に応ずること。
(6) 簡易訴訟代理関係業務
 ただし,この業務については,司法書士試験合格後,法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程(特別研修)を修了し,考査(筆記試験)に合格しなければ,行うことができません(資格内資格)。
 具体的な業務としては,簡易裁判所で取り扱う訴額140万円以下の事件につき,本人の委任を受けて,代理人として和解交渉を行い,民事訴訟を提起し,支払督促等を行います。有名なところでは,過払い金返還請求(和解,訴訟)があります。
① 司法書士法施行規則31条業務
 司法書士法施行規則31条の業務とは,次の業務となります。
② 当事者その他関係人の依頼または官公署の委嘱により,管財人,管理人その他これらに類する地位に就き,他人の事業の経営,他人の財産の管理もしくは処分を行う業務またはこれらの業務を行う者を代理し,もしくは補助する業務
 この業務については,東京では弁護士の独占状態ですが,地方ですと,「不在者財産管理人」等に司法書士が就任する例があるようです。
③ 当事者その他関係人の依頼または官公署の委嘱により,後見人,保佐人,補助人,監督委員その他これらに類する地位に就き,他人の法律行為について,代理,同意もしくは取消しを行う業務またはこれらの業務を行う者を監督する業務
 最近では,司法書士が成年後見人等として,主に被後見人等の財産管理の業務を行う成年後見業務が司法書士の業務の主力となりつつあります。任意後見人,後見監督人としてこれらの業務を行う場合があります。
 もっとも,司法書士が成年後見業務を行うには,原則として,公益社団法人リーガルサポートの実施する研修を受け,所定の単位を取得する必要があります。なお,所定の単位を取得した場合には,希望すれば,家庭裁判所に提出される成年後見人・成年後見監督人候補者名簿に氏名が掲載され,家庭裁判所からの紹介案件を受託することができます。
 司法書士の中には,成年後見に特化して業務を行っている者もいます。
④ 司法書士または司法書士法人の業務に関連する講演会の開催,出版物の刊行その他の教育および普及の業務
⑤ 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律33条の2第1項に規定する特定業務
⑥ 司法書士法3条1項1号から第5号までおよび前各号に掲げる業務に附帯し,または密接に関連する業務

3 司法書士試験のおける位置づけ
 司法書士法の出題数は,午後の部の出題問題数35問中1問(配点1問3点×1=3点)であり,多肢短答式の問題では,出題数が少ない,いわゆるマイナー科目です。具体的には,司法書士または司法書士法人の業務(平成27年度,平成26年度出題実績),司法書士の業務(平成25年出題実績)が出題されています。
 出題数からすると,捨問にしたい科目かもしれません。
 しかし,難易度が低く,条文,判例と過去問の繰り返しの学習で確実に得点できること,筆記試験合格後の口述試験においては,相当高いレベルの知識まで問われること,そして,何よりも合格後の開業するにあたって,そして,開業後も最低限知っておかなければならない「業法」であることを考え合わせますと,捨問にすることはできません。
 やはり,一定レベルの水準までの学習は必要だと思われます。学習方法は,供託法と同様,条文(先例)・過去問レベルの出題が続いていますので,条文(先例)・過去問を繰り返し学習すれば充分だと思います。