【司法書士】
大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリット②


司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行


 寒暖の差が激しい気候が繰り返されていますが,皆様,体調の方は万全ですか?
 いよいよ,公開模試第1回に始まり,第2回・第3回が実施されます。公開模試は,本試験に近いため,特に成績が気になるところかと思います。しかし,成績,特に受験校や全国での順位は,全く気にする必要はありません。私たちの目標は,本試験に合格することであって,公開模試でよい成績をとることではないからです。私事で恐縮ですが,私が本試験に受かった年は,公開模試の回を追うごとに,成績は右肩下がりでしたよ(笑)。過去問・条文・先例判例中心の学習こそが合格への王道と信じていましたから,気落ちすることはありませんでした。ただし,正解率の高い問題で間違えたところだけは,しっかり復習しておくことだけは忘れないでくださいね(これまでも,何度も繰り返し申し上げてきたことですが…)。

 さて,前回は前座で終わってしまいましたが,今回こそは,「大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリット」について述べて参ります。もちろん,大学生以外の方にも興味をもって読んでいただけるような内容にいたします。

メリット1:大学在学中に資格が取れる可能性が高い

 司法書士試験の合格者の平均受験回数は3~4回であるといわれています。もちろん,これは,十分な受験準備をして,合格できる実力を身につけた方の場合の数値です。平均ですから,最短1回はもちろん,2回・3回で受かってしまう人もいるわけです(合格者の約40%は,受験回数が4回以内だったというデータもあります)。つまり,大学在学中に,十分な準備をして,司法書士試験を受験すれば,大学在学中(20歳~22歳・23歳)に司法書士試験に合格することも,あながち夢ではないということです。個人的には,司法書士試験受験予備校にも通うこと,すなわち,ダブルスクール(大学と司法書士受験予備校の両方に通うこと)を強くおすすめします。今の司法書士試験は,独学で短期合格できるほど,簡単な試験ではないからです。大学在学中に司法書士試験に合格した場合の具体的なメリットについては追々述べて参ります。

 司法試験の場合は,予備試験合格の例外を除き,法科大学院(以下,「ロースクール」という)を卒業しないと司法試験の受験資格を得られません。そのため,司法試験を受けられるようになるまでには,①大学を卒業後,②ロースクールに入学し(入学試験あり),③ロースクールで2年間(法学既修者の場合,未修者の場合3年間)の学習を経て卒業することを要します。それから,司法試験を受けることになります。したがって,1回目の受験で運良く司法試験に合格できたとしても,24~25歳にはなっています。

メリット2:司法試験にステップアップが可能

 大学在学中に司法書士の資格を取得した後,司法試験を目指すことも十分可能です。上記メリット1の①~③のコースをたどれば良いだけです。幸い,司法書士試験と司法試験は,共通する科目が少なくありません。
それぞれの試験科目を比較,確認しておきましょう。

<司法書士試験科目>
<方式>
 試験は,マークシート方式による多肢択一式および記述式(書式)による筆記の方法による。筆記試験合格者に対して,口述試験が行われる。
【午前の部】
科目:憲法,民法,商法(会社法・その他の商法分野に関する法令),刑法
出題形式:マークシートによる多肢択一式
出題数:35問
【午後の部】
科目:民事訴訟法,民事保全法,民事執行法,司法書士法,供託法,不動産登記法,商業登記法
出題形式:マークシート方式による多肢択一式および記述式(書式)
出題数:多肢択一式/35問,記述式(書式)/2問
※ 記述式は不動産登記法1問,商業登記法1問


<司法試験科目>
<方式>
試験は,短答式と論文式による筆記の方法による。口述試験は行われない。
<科目>
短答式:憲法,民法,刑法の3科目について行われます。
論文式:公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目)
民事系科目(民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目)
刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目)
選択科目(専門的な法律の分野に関する科目として法務省令で定める科目のうち受験者のあらかじめ選択する1科目) の4科目について行われます。
※ 選択科目:知的財産法,労働法,租税法,倒産法,経済法,国際関係法(公法系),国際関係法(私法系),環境法 (平成29年度実施試験の場合)


以上から,憲法,民法,刑法,商法および民事訴訟法共通科目であることがわかります。

 もっとも,司法書士試験と司法試験では,その難易度,出題形式(司法書士試験ではこれらの科目はいずれも多肢択一式(短答式)としてしか問われない)および出題範囲(例えば,司法書士試験の民法では,物権・担保物権・親族・相続が重視されるのに対し,司法試験では債権が重視されるなど)が異なりますので,単純比較はできません。しかし,すでにこれらの科目で国家試験(司法書士試験)に合格したという受験経験,実績や自信が,司法試験の受験勉強や司法試験の本試験で大いに活かされるはずです。

 実際,大学在学中に司法書士試験に合格し,大学卒業後,民間へ就職したものの,司法試験への夢を諦められず,会社を退職して,司法試験の受験勉強をし,晴れて合格したという友人も何人かいます。また,司法書士試験合格後の司法書士の実務をやりながら,法科大学院に進学・学習し,司法試験に合格し,弁護士になった仲間もいます。

 また,大変申し上げにくいのですが,司法書士の資格を取得しておけば,司法試験にチャレンジしたものの,不幸にして,司法試験に合格できなかった場合(注)であっても,安心です。司法書士の資格をもっていれば,心機一転,司法書士の資格を活かして,司法書士の実務で活躍することもできます(筆者には,このような友人もいます)。ここでのポイントは,司法試験を受験するときに,すでに司法書士の試験に合格していた,すなわち,司法書士の資格を有していたということです。司法書士の資格がなければ,司法試験から名誉ある撤退をしても,速やかな司法書士への転身など望むべくもありません。
(注)法科大学院の修了者は,その修了日後の5年度内であれば受験回数に制限なく司法試験を受験することができます。しかし,司法試験は1年に1回しか実施されないので,実質的な回数制限は5回となります。つまり,司法試験を5回受験しても合格できなかった場合,もはや司法試験を受けることができなくなります(再度法科大学院に入り,卒業するか,再度,司法試験の予備試験に合格すれば,受験することができるようになります)。このようなときに,司法書士の資格を持っているか否かで,心の持ちよう,ひいてはその先の人生が大きく変わってくるとは思いませんか。

メリット3:就職活動に司法書士資格をウリにできる

大学在学中に司法書士試験に合格した場合の具体的なメリットの1つとして,就職活動で司法書士の資格をウリ(セールスポイント)にできるということです。企業は,司法書士試験がいかに難しい国家試験か熟知していますので,就職活動において,「在学中に,受験予備校に通い,○回の受験で司法書士国家試験に合格しました!」とアピールすることは,企業(採用担当者)に対して,かなりのインパクトを与えることができるものと思われます。特に,銀行,不動産会社,商社,ハウスメーカーなど司法書士とつながりが強い業種ほど効果があるでしょう。就職試験で,自分のセールスポイントを声高にアピールするライバルがいても,「司法書士国家試験合格」の実績に比肩し得るライバルはなかなかいないのではないでしょうか。実際,大学在学中に司法書士試験に合格した方の中には,大手の銀行,商社,不動産会社,ハウスメーカーなどの有名企業に就職して,活躍されている方も少なくありません。

メリット4:いったん就職しても,機を見て独立開業が可能

メリット3では,大学在学中に司法書士試験に合格して,いったんは,企業に就職する方もいるというハナシをしました。このような方の中には,2つのタイプの方がいらっしゃいます。
1つ目は,将来,司法書士での独立開業を見据えて就職するタイプの方です。このような方は,就職先も,開業時に不動産登記や商業登記などの継続的受託先となるような企業(銀行,商社,不動産会社,ハウスメーカーなど)を選びます。そして,数年(あるいはそれ以上)かけて,サラリーマンとして働き,社会人経験を積み,地道に人脈を築き,開業資金を貯め,開業後仕事が継続的に受託できる目途がたったときなどに,機を見て,司法書士での独立開業を果たします(司法書士業は,他の業種と比べて,開業費用が少なくて済むというハナシは前回ご紹介済みでしたね)。商社出身の司法書士仲間がいますが,彼は,退職してからも,勤めていたその商社から,不動産登記や商業登記の依頼が来るみたいです(うらやましいかぎりですね)。

2つ目は,企業への就職に重きを置くタイプの方です(新卒採用のほか中途採用もあります)。このような方も,やはり,司法書士の専門性を活かせる銀行,商社,不動産会社,ハウスメーカーなどに就職する例が多いようです。このような方は,司法書士の資格を持ちながらも当面の間は司法書士での独立開業は考えず,長期にわたって企業に勤務する例が多いようです。就職した会社では,主に法務部・総務部等の社員として,司法書士の専門知識を活かし,不動産や商業の登記事項証明書,契約書あるいは戸籍謄本のチェックや法務関係の書類の作成を行うなどの仕事をされているようです。このような司法書士は「企業内司法書士」と呼ばれています(「企業内司法書士」は,かなりの人数がいるようで,団体組織を持ち,定期的に集まっているようです)。聞いた話ですが,司法書士の資格を取得して一般企業に就職した場合,万が一,倒産などでその企業で働けなくなっても,自分は司法書士の資格を使っていつでも独立開業できるから大丈夫だという自信を持つことができ,余裕をもって仕事ができるそうです。

次回も,大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリットの続きについて述べる予定です。