【司法書士】
大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリット④


司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行


寒暖の差が激しい天候が続いた5月も過ぎ,紫陽花の花も,少しずつ咲いてきました。そろそろ梅雨入りでしょうか。

いよいよ,本試験まで1か月となりました。追い込みをかけたい時期ではありますが,もうここまできたら,無理をしないようにしましょう。早寝早起きを心がけ,睡眠時間をたっぷりとって,ベスト・コンディションで本試験を受けられるように,本試験の日に照準を合わせて体調を整えるようにしましょう。筆者も合格する前の年は,本試験日間近に,緊張のためにひどく肩が凝って,首が回らないほどになってしまいました。鍼治療を受けましたが,もはや焼け石に水でした。当日は,このような不本意な状態で本試験を受けることになり,当然ながら,不合格の憂き目をみました。試験を受ける前にすでに落ちていたという状況でした。皆様におかれましては,くれぐれもこのようなことがないように,気をつけてくださいね。

さて,今回は,「大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリット」の最終回になります。


参考3:簡裁訴訟代理等関係業務ができる!

 司法書士は,もともと,次の訴訟等において,各種の書類作成を通じて,本人が弁護士に依頼せずに直接訴訟等の手続を行うこと(本人訴訟)を支援することも,その業務として認められていました(司法書士法3条1項4号)。

① 民事事件における訴状,答弁書および準備書面等の作成と裁判所への提出(貸金請求事件,家屋明渡請求事件など)
② 民事保全手続(仮差押え,仮処分の申立書等の作成,裁判所への提出)
③ 民事執行手続(債権・動産の差押えの申立書等の作成,裁判所への提出)
④ 家事審判手続(特別代理人の選任申立書,不在者の財産管理人の選任申立書,未成年者についての後見人選任申立書,遺産分割調停の申立書等の作成,裁判所への提出)
⑤ 破産手続申立書等

それが,平成14年の司法書士法改正(平成15年4月1日施行)により,特別研修を修了し,簡裁訴訟代理能力認定考査に合格すると(これを「認定司法書士」といいます),民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であって訴訟の目的の価額が140万円以下の民事訴訟,支払督促,当該紛争について相談に応じ,裁判外の和解等について代理することができるようになりました。これは,認定司法書士は,司法書士法の規定の範囲内で,簡易裁判所で本人の代理人として法廷に立つことができることはもとより,裁判外の和解(示談)交渉をも代理できるということです。貸金業者に対する過払金の請求や債務整理などもこの業務の一つです。司法書士が依頼者である本人に代わって,示談交渉を行うことができることによって,紛争解決までの時間やコストの削減図れるため,依頼者にとってのメリットが大きいといわれています。

もっとも,いずれも,争いごとの解決のための仕事なので,本来「争いのない仕事」が多かった司法書士の業務の中にあっては,異質なものといえるでしょう。訴訟関係の業務ですから,弁護士さんのお仕事に近いものがあります。筆者も,過払金について,事務所で貸金業者と電話で交渉していたところを,登記を依頼にみえた古くからのお客さんに目撃されてしまい,「普段温和なセンセイが,あんなに激しい口調で電話をしている姿を見て信じられない思いがしました。」と言われる始末でした(登記業務とはその処理が大いに異なります)。しかしながら,債務整理を手がけた依頼者の方から,「債務を完済でき,今では貯金もできるようになりました。これも先生のお陰です。あのとき,先生にお願いして本当に良かったです。」というお礼状をいただくこともあります。このお礼状をいただいたときはものすごく感激しましたね。このように簡裁訴訟代理等関係業務は,登記業務とはまた違った手応えややりがいを感じます。たぶん,弁護士の先生が感じられるやりがいに近いのではないでしょうか。
訴訟の目的の価額が140万円以下の民事訴訟等に限られるとはいえ,弁護士でなくても,訴訟代理人として法廷に立つことができる(=簡裁訴訟代理等関係業務ができる)というのも,司法書士という資格の魅力の1つかもしれません。


参考4:新しい仕事が続々と~成年後見・遺言書作成支援業務・空き家問題

 司法書士は,長らく登記業務の専門家として仕事をしてきました。しかし,最近では,また違った分野にその仕事の範囲が拡がりつつあります。
例えば,成年後見業務です。典型例は,認知症等により判断能力が衰え,財産管理ができない高齢者に代わって,司法書士が成年後見人に就任し(家庭裁判所で選任されます),財産管理を行うというものです(法定後見)。成年後見業務の具体的な仕事は,本人に代理して,金銭の出納,銀行預金の管理,本人が入所している施設等への支払い,本人が施設に入るための契約を代理する業務のほか,遺産分割協議を成立させること,本人の不動産の売却することなど多岐にわたります。日本の高齢化は,世界に例を見ないスピードで進んでいることから,成年後見業務はこれからますます事件数は増えていくものと思われます。また,登記業務と異なり,景気変動などの影響を受けないことから,成年後見業務を手がけることは,定期的な収入が期待でき,安定した事務所運営ができるメリットがあります(すでに成年後見を専門として業務を行っている司法書士も出てきています。また,成年後見リーガルサポートの研修では,司法書士は1人あたり,成年後見業務を最低10件は受託するようにとハッパをかける講師もいます。ちなみに,報酬は成年後見人の働きや本人の財産を基に裁判所が決定します)。もっとも,司法書士が,成年後見業務を行うには,原則として,成年後見リーガルサポートの会員となり,所定の研修を受け,単位を取得する必要があります。成年後見開始の申立書に,成年後見人候補者として名前を載せると,裁判所は,その選任に当たって成年後見リーガルサポートの研修単位を取っているか否かを調べるようです。成年後見リーガルサポートの規定の単位を取得し,申請をすれば,成年後見リーガルサポートが家庭裁判所に提出する成年後見人・成年後見監督人名簿に名前を登載してもらえます。この名簿に名前が登載されれば,家庭裁判所から成年後見人の就任依頼があります。就任依頼があった場合に,就任するか否かは,家庭裁判所で事件記録の閲覧をさせてもらい,自分で判断することができます。就任を承諾すると,家庭裁判所が選任してくれます。
以上,法定後見について述べましたが,将来,本人の判断能力が衰えたときに備えて,あらかじめ成年後見人となる契約を本人と任意で結ぶ場合もあります。これを任意後見といいます。

 また,最近,依頼が増えている分野が「遺言」の作成支援業務です。一昔前ですと,自分が死ぬことを前提に遺産について遺言を残すことに抵抗ある方が多いのが実情でした。ところが,最近では,自分の死後,相続人が遺産について争うことをあらかじめ回避するため,遺言をしようとする方が増えています。遺言の作成は,本人または公証役場がすることですので,司法書士が直接遺言を作成することはありません。しかし,遺言書を作成しようとする方は,そのほとんどが高齢者であり,いざ遺言書(公正証書遺言)を作成しようとしても,何から手をつけていいかわからず,どうすればよいのでしょうとの相談が増えています。では,具体的に,司法書士が遺言作成支援として,どのように関与するのか,公正証書遺言の作成支援をする場合を例に挙げましょう。司法書士としては,まず,どの財産を誰にあげたいかなどについて,本人から話を聞きます。その上で財産が不動産の場合であれば,登記事項証明書などを取得して正確な物件の表示を調べます(預貯金であれば銀行名・口座番号など)。そして,原案を作成し,本人に見てもらい,訂正等をします。このようにして作成した原案を公証役場にFAXまたはメールで送り,公証人の先生にその内容を確認していただきます(その他,遺産や相続人を特定するための資料として,登記事項証明書・固定資産評価証明書・銀行口座についての通帳の写しやメモ,戸籍謄本等も送ります)。そこで,問題がなければ,本人が公証役場に行く日を予約し,当日本人と一緒に公証役場に行き,所定の事務を済ませ,晴れて公正証書遺言の作成となります。本人だけでは難しい下準備や段取りを司法書士が本人の代わりに行い,本人が公証役場に1回行けばそこですべて済むようにするという,本人と公証役場との橋渡し的な仕事です。この仕事も,高齢化や相続後の紛争をあらかじめ回避しようとする方の増加によって今後ますます増加していくものと思われます。この仕事も,景気変動などの影響を受けない仕事ですね。

さらに,近年,人が住んでいないか,あるいは,適切な管理されていない空き家が増加し,いわゆる「空き家問題」が社会問題化しつつあります。空き家は,老朽化に伴う倒壊等による危険,不審者が入り込む等防犯・治安上の問題,放火による火災などの防災上の問題があるばかりか,災害時に倒壊するなどして避難や救援などに支障が生じるおそれがあります。空き家の多くは,相続登記が放置され,現在の所有者が不明であると言われています。そして,問題解決のためには,まず,相続登記を行い,現在の所有者を把握することが不可欠です。現在,日本司法書士会連合会をはじめ,各地の司法書士会でも,「空き家問題」を重視し,市区町村における相談会の開催や相談員の派遣等と,力を入れ始めています。相続登記は司法書士が長年培ってきた得意分野です。司法書士は,そのノウ・ハウを活かし,空き家問題の解決の一翼を担う重要な存在になろうかと思われます。そして,これに伴う業務の拡大が期待されます。


まとめ

これまでの回で,「大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリット」として,次の5つのメリットを挙げました。

① 大学在学中に資格が取れる可能性が高いこと
② 司法試験にステップアップが可能であること
③ 就職活動に司法書士資格をウリにできること
④ いったん就職しても,機を見て独立開業が可能であること
⑤ 若い時から実務で活躍でき,経験を積むことができること


皆様は,すでにお気づきかと思いますが,②~⑤のメリットは,大学在学中に司法書士の資格が取ること(①)を前提として,享受することが可能なのです。言い換えれば,大学在学中に司法書士の資格が取ることができなければ,これらのメリット(特に②と③)を享受することができません。つまり,大学在学中に司法書士試験に合格できるかどうかが,大学生が(司法試験ではなく)あえて司法書士試験に合格するメリットを享受するための鍵になる!といっていいでしょう。たいへん厳しいことを申し上げるようですが,大学生で司法書士試験を受ける方は,在学中に司法書士の資格を取得することに全力を挙げて,必ず在学中に司法書士の資格を取得してください。在学中の短い期間内に合格するには,やはり合理的かつ効率的な学習が不可欠です。そういう意味では,合格に必須と言われる,過去問,条文そして判例・先例の学習に力を入れることはもちろんのこと,ご自分の学習のペースメーカーとして,受験予備校(講座や答練)を上手に利用していただきたいと思います。今日の司法書士試験の難しさからは,独学で短期合格は非常に困難だからです。

次回は,「番外編」にはなりますが,「その他資格取得のおすすめ」について述べる予定です。




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