【司法書士】
民法(債権法ほか)の改正について⑦


司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行

 新緑が目にしみる季節となりました。気温も上がり,過ごしやすくなりました。
 本試験まで,あと1か月あまりです。今年合格を目指す方にとっては,時間の経つことの早さを感じられていることかと拝察します。この時期は,復習中心で,これまでマスターした事項の理解をより完全なものにする学習方法でよろしいかと思います。また,夜型の方は,そろそろ朝型に切り替えましょう。本試験の実施される時間帯に最も頭が冴える訓練をしてみてください。
 さて,今回も,民法(債権法ほか)の改正について,具体的な内容について進めて参ります。


<改正点>
1 消滅時効に関する見直し
⑴ 短期消滅時効の特例制度の廃止
⑵ 一般の債権の消滅時効期間の見直し
⑶ 長期の消滅時効期間の導入
⑷ 商行為によって生じた債権(商事債権)に関する短期消滅時効の廃止
⑸ 時効の更新と完成猶予
⑹ 消滅時効の援用権者の明文化
(以上,②参照)
2 法定利率に関する見直し
⑴ 法定利率に関する見直し
⑵ 商事法定利率の廃止
3 保証に関する見直し
⑴ 平成16年民法改正(貸金等債務に関する包括根保証の禁止)の概要
⑵ 包括根保証の禁止の対象の拡大等
⑶ 事業用融資における第三者保証の制限(公証人による意思確認手続の新設)
⑷ 保証契約締結時の情報提供義務
⑸ 債権者による主たる債務者の期限の利益喪失時の情報提供義務
⑹ 債権者による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
4 約款(定型約款)に関する規定の新設
⑴ 「約款」とは?
⑵ 「約款」の位置づけと問題点
⑶ 「定型約款」の定義
⑷ 定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件)
⑸ 契約の内容とすることが不適当な内容の契約条項(不当条項)の取扱い
⑹ 定型約款の変更要件
⑺ 定型約款についての民法の適用時期等
5 債権譲渡に関する見直し
⑴ 債権譲渡による資金調達の拡充と債権の譲渡制限特約の効力の見直し
⑵ 譲渡制限特約付債権が譲渡された場合の債務者の保護
⑶ 譲渡制限特約付債権が譲渡された場合の債権の譲受人の保護
⑷ 将来債権の譲渡が可能とする規定の新設
⑸ 将来債権の譲渡された場合の債権の取得時期
⑹ 将来債権に付した譲渡制限の意思表示を債権の譲受人に対抗することの可否
⑺ 債権譲渡の対抗要件
⑻ 債権譲渡における債務者の抗弁
⑼ 債権の譲渡における相殺権の拡大
(以上,③参照)
6 意思能力についての規定の新設
⑴ 意思能力制度とその意義
⑵ 意思能力についての規定の新設
7 意思表示に関する規定の見直し
⑴ 心裡留保による意思表示に関する規定の見直し
⑵ 錯誤による意思表示に関する規定の見直し
⑶ 詐欺による意思表示に関する規定の見直し
8 代理に関する規定の見直し
⑴ 代理行為の瑕疵
⑵ 制限行為能力者の代理行為についての規定の新設
⑶ 代理人と復代理の権利義務
⑷ 代理権の濫用に関する規定の新設
⑸ 利益相反行為に関する規定の新設
⑹ 表見代理に関する規定の見直し
⑺ 無権代理に関する規定の見直し
9 債務不履行に関する規定の見直し
⑴ 履行遅滞に関する規定の見直し
⑵ 履行不能に関する規定の新設
⑶ 受領遅滞に関する規定の見直し
(以上,④参照)
⑷ 債務不履行による損害賠償の免責要件の一般化と帰責事由の明確化
⑸ 債務の履行に代わる損害賠償(塡補賠償)
⑹ 特別の事情によって生じた損害賠償請求権の要件についての見直し
⑺ 原始的不能の場合の損害賠償請求に関する規定の新設
⑻ 代償請求権に関する規定の新設
⑼ 損害賠償額の予定に関する規定の見直し
⑽ 金銭債務の不履行に関する規定の見直し
10 契約解除の要件に関する規定の見直し
⑴ 契約解除における債務者の帰責事由の要否
⑵ 催告解除と無催告解除の要件の明文化
11 売買に関する規定の見直し
⑴ 手付に関する規定の見直し
⑵ 売主の基本的な義務の明文化
⑶ 売主の担保責任に関する規定の全面改廃
⑷ 他人物売買における売主の担保責任
⑸ 売主の瑕疵担保責任に関する規定の見直しと「瑕疵」の定義の明確化
⑹ 買主の代金支払拒絶権
⑺ 買戻しに関する規定の見直し
(以上,⑤参照)
12 債権者代位権に関する規定の見直し
⑴ 債権者代位権に関する規定の整備・改正のあらまし
⑵ 債権者代位権の要件等に関する規定の見直し
⑶ 債権者代位権の代位行使が可能な被代位権利の範囲の明文化
⑷ 債権者から相手方への直接の支払請求等の明文化
⑸ 相手方が債務者に対して有する抗弁の取扱いの明確化
⑹ 債務者の処分権限の制限の見直し
⑺ 債権者代位訴訟の提起時における債務者への訴訟告知制度の創設
⑻ 登記または登録の請求権を保全するための債権者代位権制度の明文化
13 詐害行為取消権に関する規定の見直し
⑴ 詐害行為取消権に関する規定の整備・改正のあらまし
⑵ 詐害行為取消権の要件等に関する見直し
⑶ 詐害行為の類型化
⑷ 転得者に対する詐害行為取消請求をするための要件
⑸ 詐害行為取消権の行使方法等
⑹ 詐害行為取消権が行使された場合における受益者等の権利
⑺ 詐害行為取消権の出訴期間の見直し
(以上,前回⑥参照)
14 連帯債務に関する規定の見直し
⑴ 連帯債務者の1人について生じた事由の効力の見直し
⑵ 連帯債務者の求償権に関する規定の見直し
⑶ 不可分債務に関する規定の見直し
⑷ 多数当事者間の債権の分類
⑸ 連帯債権に関する規定の明文化
⑹ 連帯債権の絶対的効力
⑺ 連帯債権の相対的効力の原則とこれに反する特約の可否
⑻ 不可分債権
15 保証に関する見直し(③で述べた事項を除く)
⑴ 保証債務の付従性に基づく保証人の負担加重の否定
⑵ 債権者に対する保証人の抗弁と債務の履行の拒絶
⑶ 連帯保証人について生じた事由の効力
⑷ 委託を受けた保証人の求償権の額
⑸ 委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権
⑹ 委託を受けない保証人の求償権
⑺ 連帯保証人の通知義務に関する規定の見直し(以上,今回)


14 連帯債務に関する規定の見直し

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<主な改正点>
・ 連帯債務者の1人について生じた事由は,他の連帯債務者に効力を生じないとする相対的効力が原則となり,連帯債務の絶対的効力事由は,更改,相殺,混同の3つになりました。
・ 連帯債務者が他の連帯債務者に求償するには,自己の負担部分額以上の出捐を要しないこととされました。
・ 連帯債務者が他の連帯債務者に対する求償権の額については,原則としては連帯債務者が支出した財産の額ですが,それが共同の免責を得た額を超える場合には,共同の免責を得た額にとどまることとされました。
・ 他の連帯債務者があることを知りながら,連帯債務者があらかじめ通知しないで弁済などをした場合には,他の連帯債務者は,債権者に対抗することができた事由をもって,通知を怠った連帯債務者に対抗することができることとされました。
・ 連帯債務者が他の連帯債務者があることを知りながら共同の免責を得たことの通知を怠った場合に限り,他の連帯債務者は,善意でした弁済などを有効であったものとみなすことができることとされました。
・ 求償者および他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない場合について,無資力者がその償還をすることができない部分は,求償者と他の資力のある者の間で等しい割合で分割して負担することとされました。
・ 連帯債務者の1人に対して債務の免除がされ,または連帯債務者の1人のために時効が完成した場合においても,他の連帯債務者は,その1人の負担部分を含めて履行する義務を負うが,これを履行した場合には,その1人の連帯債務者に対し,求償権を行使することができることとされました。
・ 債務の内容が性質上不可分である場合には,各債務者は,専ら不可分債務を負担するものとしました(性質上可分な債務を当事者の意思によって不可分債権とすることはできなくなりました)。
・ 連帯債権に関する明文の規定を設けました。
・ 連帯債権は,その目的が性質上可分なものであるが,特に法令の規定または当事者の意思表示によって成立するものとされました。
・ 連帯債権は,連帯債務と同様,原則として相対的効力を有しますが,履行請求・弁済,更改・免除については,例外的に絶対的効力を有します。
・ 不可分債権は,不可分債務と同様に,債権の目的が性質上不可分である場合に限ってその対象とすることとされました。
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⑴ 連帯債務者の1人について生じた事由の効力の見直し

① 履行の請求
 現行民法では,連帯債務者の1人に対する履行の請求は,絶対的効力事由とし,他の連帯債務者に対しても,その効力を生じることとされています(民法434条)。しかし,連帯債務者相互が密接な関係にない場合も少なくなく,連帯債務者の1人に対する履行の請求があったとしても,他の連帯債務者は当然にはそのことを知らず,いつの間にか履行遅滞に陥っていたなどといった不測の損害を受けるおそれがあります。
 そこで,改正民法は,現行民法の434条の規定を廃止し,連帯債務者の1人に対する履行の請求は,他の連帯債務者に対してその効力を生じないこととしました(相対的効力,改正民法441条本文)。
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(相対的効力の原則)
 第441条 第438条,第439条第1項及び前条に規定する場合を除き(注),連帯債務者の1人について生じた事由は,他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし,債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは,当該他の連帯債務者に対する効力は,その意思に従う。
(注)連帯債務の絶対的効力事由は,更改,相殺,混同の3つだけになりました。
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② 更改
 現行民法では,「連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは,債権は,すべての連帯債務者の利益のために消滅する。」旨を規定しています(更改の絶対効,民法435条)。更改の絶対効をどのようにするかについては,議論があったようですが,結論としては,改正民法においても,更改の絶対効を残しました(改正民法438条)。
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(連帯債務者の一人との間の更改)
 第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは,債権は,全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
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③ 相殺
 現行民法では,債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は,その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができるとしています(民法439条2項)。しかし,連帯債務者が,当該他の連帯債務者の同意なく,その連帯債務者の債権を相殺することができるとすることは,相殺権を有する連帯債務者の財産権およびその処分権を不当に侵害することとなりかねません。
 そこで,改正民法は,連帯債務者は,他の連帯債務者の相殺をすることができないものとしつつ,代わりに,連帯債務者が相殺を援用しない問は,その連帯債務者の負担部分の限度において,他の連帯債務者は,債権者に対して債務の履行を拒むことができることとしました(改正民法439条2項)
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(連帯債務者の1人による相殺等)
 第439条 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において,その連帯債務者が相殺を援用したときは,債権は,全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は,その連帯債務者の負担部分の限度において,他の連帯債務者は,債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
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④ 債務の免除
 現行民法では,連帯債務者の1人に対してした債務の免除は,その連帯債務者の負担部分についてのみ,他の連帯債務者の利益のためにも,その効力を生じるとしています(民法437条)。そして,免除をした結果,他の連帯債務者に対して請求することができる額が減少します。しかし,これは免除をした債権者の意思に反するおそれがあります。
 そこで,改正民法は,民法437条の規定を廃止し,債務の免除を相対的効力事由に改めました(改正民法441条本文)。
⑤ 時効の完成
 現行民法では,連帯債務者の1人のために時効が完成したときは,その連帯債務者の負担部分については,他の連帯債務者も,その義務を免れることとされています(民法439条)。しかし,債権者は,ある特定の連帯債務者から履行を受けるつもりであっても,この規定があるために,全ての連帯債務者との関係で消滅時効の完成を阻止する措置をとらなければならず,債権者の負担は大きいといわれていました。
 そこで,改正民法は,民法437条の規定を廃止し,時効の完成を相対的効力事由に改めました(改正民法441条本文)。
⑥ 相対的効力の原則とこれに反する特約の可否
 改正民法は,連帯債務者の1人に生じた事由は他の連帯債務者に効力を生じないとする相対的効力を原則として採用しています(改正民法441条本文)。しかし,本来は連帯債務者Aに生じても他の連帯債務者Bに効力が生じない事由(相対的効力事由)に関し,債権者Cと他の連帯債務者Bにおいて,Aにその事由が生じればBにもその効力が生じるなどという別段の意思を表示していたときは,Aに生じた事由のBに対する効力は,その意思に従うこととしました(改正民法441条ただし書)。これは,そのような意思が表示されているときは,その意思に従って効力を認めても,AやBにとって不意打ちとなることはないからです。

⑵ 連帯債務者の求償権に関する規定の見直し

① 連帯債務者間の求償権行使の要件と求償権の額
 連帯債務者の1人が債権者に弁済した場合に,他の連帯債務者に求償するには,自己の負担部分額以上の出捐を要するか否かということにつき,現行民法には,明文の規定がありませんでした。例えば,甲・乙・丙3名が平等の負担部分(3分の1:30万円ずつ)でもって90万円の連帯債務を負っている場合を想定しましょう。この場合に,甲が債権者に40万円弁済した場合に,乙・丙に5万円(=(40-30)÷2)ずつ求償できるのか,あるいは,甲が債権者に15万円だけ弁済した場合でも,乙・丙に5万円(=15÷3)ずつ求償できるかどうかが問題になります。この点については,判例は,連帯債務者が他の連帯債務者に求償するには,自己の負担部分額以上の出捐を要せず,負担部分以下の出捐でも求償権を生じるという見解に立っています(大判大6.5.3)。
 改正民法では,判例の趣旨を踏まえ,連帯債務者が他の連帯債務者に求償するには,自己の負担部分額以上の出捐を要せず,負担部分以下の出捐でも求償権を生じる旨の規定を新設しました(改正民法442条1項)。他方で,連帯債務者が他の連帯債務者に対して取得する求償権の額については,原則としては連帯債務者が支出した財産の額であるが,連帯債務者の支出した財産の額が共同の免責を得た額を超える場合には,共同の免責を得た額にとどまるとしました(改正民法442条1項)。
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(連帯債務者間の求償権)
第442条 連帯債務者の1人が弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは,その連帯債務者は,その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず,他の連帯債務者に対し,その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては,その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
2(略)
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② 事前通知と求償権
 現行民法では,連帯債務者間の事前の通知義務について,「連帯債務者の1人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において,他の連帯債務者は,債権者に対抗することができる事由を有していたときは,その負担部分について,その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。」旨が定められています(民法443条1項)。しかしながら,連帯債務者は,履行期が到来すれば直ちに弁済をしなければならない立場にありますので,その弁済を遅滞してまで,他の連帯債務者に対する事前の通知をしなければならないのは酷であるという批判があります。また,連帯債務者が他の連帯債務者の存在を知らない場合にまで,事前の通知を義務づけるのは妥当ではありません。
 そこで,改正民法では,連帯債務者の1人が弁済するにあたって,一律に他の連帯債務者へ事前通知をしなければならないという規定(民法443条1項)を原則として廃止しました。そして,他の連帯債務者があることを知っている場合に限り,連帯債務者はあらかじめ通知をしなければならないものとし,この場合に通知をしないで弁済などをし,共同の免責を得たときは,他の連帯債務者は,債権者に対抗することができた事由をもって,通知を怠った連帯債務者に対抗することができる旨の規定を新設しました(改正民法443条1項前段)。そして,この場合において,他の連帯債務者が相殺権を有していたことを理由に求償を拒んだ場合には,通知を怠った連帯債務者は,債権者に対し,その相殺権の行使によって消滅すべきであった債権者の他の連帯債務者に対する債務の履行を請求することができる旨の規定を新設しました(改正民法443条1項後段)。例えば,乙および丙が甲に対し,連帯債務(50万円:負担部分25万円ずつ)を負っている場合に,連帯債務者乙が他の連帯債務者丙に通知しないで全額(50万円)を債権者甲に弁済した場合に,丙が甲に対して相殺に適する反対債権(30万円)を有していれば,乙から自らの負担部分(25万円)を求償されても,丙は,甲に対する債権による相殺を乙に対して主張することができます。結果,乙の求償権は消滅し,その対抗された25万円分の債権は,当然に乙に移転し,乙は債権者甲に請求することになります。
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(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)
第443条 他の連帯債務者があることを知りながら,連帯債務者の1人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において,他の連帯債務者は,債権者に対抗することができる事由を有していたときは,その負担部分について,その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において,相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは,その連帯債務者は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2(略)
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③ 事後通知と求償権
 現行民法では,連帯債務者間の事後の通知義務について,「連帯債務者の1人が弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため,他の連帯債務者が善意で弁済をし,その他有償の行為をもって免責を得たときは,その免責を得た連帯債務者は,自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。」旨が定められています(民法443条2項)。この規定の趣旨は,連帯債務者の1人が弁済等をした場合には他の連帯債務者に対して事後の通知をしなければならないとすることによって,他の連帯債務者が二重に弁済等をすることを防ぐことにあるとされています。そして,現行民法の下では,ある連帯債務について相次いで弁済等をした者がいる場合において,先に弁済等をした連帯債務者が事後の通知をせず,かつ,後に弁済等をした連帯債務者も事前の通知をしなかったときは,後に弁済等をした連帯債務者は,事前の通知(民法443条1項)を怠った以上,民法443条2項による保護を受けることはできず,自己の弁済等を有効とみなすことができないと解されています(最判昭57.12.17)。この場合において,債権者は,両連帯債務者から二重の弁済等を受けたことになりますが,後に弁済等をした連帯債務者は,自己の弁済等を有効とみなすことができないため,債権者に対して不当利得返還請求をすることになります。しかし,改正後の民法443条1項で,事前の通知制度は原則として廃止されることになりますので,後に弁済等をした連帯債務者が事前の通知を怠った場合には民法443条2項の保護を受けることができないとの解釈を採ることができなくなります。そのため,後に弁済等をした連帯債務者による弁済等が常に有効とみなされることにもなりかねず,結論として妥当ではありません。また,連帯債務者が他の連帯債務者の存在を知らない場合には,連帯債務者に他の連帯債務者への事後通知を求めることは相当ではありません。
 そこで,改正民法は,連帯債務者が他の連帯債務者があることを知りながら共同の免責を得たことの通知を怠った場合に限り,他の連帯債務者は,善意でした弁済などを有効であったものとみなすことができる旨の規定に改めました(改正民法443条2項)。
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(通知を怠った連帯債務者の求償の制限)
第443条 (略)
2 弁済をし,その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が,他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため,他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは,当該他の連帯債務者は,その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。
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④ 償還をする資力のない者の負担部分の分担
 現行民法は,連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは,その償還をすることができない部分は,求償者及び他の資力のある者の間で,各白の負担部分に応じて分割して負担する旨を規定しています(民法444条)。例えば,A・B・Cが90万円(負担部分30万円ずつ)の連帯債務を負っている場合において,Aが全額を弁済したときには,AはB・Cに30万円ずつ求償できるわけですが,もしCが無資力で償還できなければ,その分は,Aに過失がないかぎり(注),Bと2人で15万円ずつ分担し,結局,Bには45万円請求できることになります(求償権の拡張)。これに対し,負担部分を有する連帯債務者が無資力である場合,例えば,連帯債務者4名中,求償者甲と被求償者乙が,ともに負担部分が零であるが他の2人は無資力という場合において,負担部分を有しない連帯債務者の甲が弁済をしたときは,その連帯債務者は,負担部分を有しない他の連帯債務者のうちの資力がある者乙との間で平等に負担をすべきであるとしています(大判大ll.3.10)。
 そこで,改正民法では,判例の趣旨を踏まえ,求償者および他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない場合について,無資力者がその償還をすることができない部分は,求償者と他の資力のある者の間で等しい割合で分割して負担する旨の規定を新設しました(改正民法444条2項)。
(注)ここでいう「過失」とは,具体的に注意義務違反という程度のものではなく,時期を失したため,資力が乏しくなり償還を受けられなくなった場合等をいうとされています。
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(償還をする資力のない者の負担部分の分担)
第444条 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは,その償還をすることができない部分は,求償者及び他の資力のある者の間で,各自の負担部分に応じて分割して負担する。 2 前項に規定する場合において,求償者及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは,その償還をすることができない部分は,求償者及び他の資力のある者の間で,等しい割合で分割して負担する。 3 前二項の規定にかかわらず,償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは,他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。
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⑤ 連帯の免除
 現行民法では,連帯債務者の1人が連帯の免除を得た場合に,他の連帯債務者の中に無資力である者がいるときは,その無資力の者が弁済をすることのできない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分は,債権者が負担すると規定されています(民法445条)。しかし,この結論は,連帯の免除をした債権者の通常の意思に反するといわれています。そこで,改正民法は,この規定を削除しました。
⑥ 免除・時効の完成
 改正民法においては,連帯債務者の1人に対する債務の免除及び連帯債務者の1人のために完成した時効を相対的効力事由としています(改正民法441条)。そのため,債権者は,このような事由が生じていない他の連帯債務者に対して,連帯債務の全部の履行を請求することができます。しかし,他の連帯債務者が弁済をしたにもかかわらず,債務の免除を受け,あるいは時効が完成した連帯債務者に対して求償権を行使することもできないとなると,弁済をした他の連帯債務者は自らの負担部分を超えた額の弁済することになり,相当ではありません。
 そこで,改正民法では,連帯債務者の1人に対して債務の免除がされ,または連帯債務者の1人のために時効が完成した場合においても,他の連帯債務者は,その1人の負担部分を含めて履行する義務を負うが,これを履行した場合には,その1人の連帯債務者に対し,求償権(改正民法442条1項)を行使することができる旨の規定を新設しました(改正民法445条)。例えば,債権者甲に1000万円の連帯債務を負う乙・丙(負担部分は金500万円ずつ)のうち,乙について債務の免除がされたとします。改正民法では,この債務の免除は相対効しか有しませんので,依然として,丙は甲に1000万円の債務を負っていることになります。そのため,丙が甲に1000万円の債務を弁済した場合には,丙は500万円の求償権を有することになり,乙に求償することができます。乙の債務につき時効が完成した場合も同様です。
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(連帯債務者の1人との間の免除等と求償権)
第445条 連帯債務者の1人に対して債務の免除がされ,又は連帯債務者の1人のために時効が完成した場合においても,他の連帯債務者は,その1人の連帯債務者に対し,第442条第1項の求償権を行使することができる。
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⑶ 不可分債務に関する規定の見直し

 現行民法では,債務の目的が性質上不可分である場合に加え,その目的が性質上可分である場合にも,当事者の意思によって不可分債務が成立するとされています(民法428条・430条)。また,その目的が性質上可分であり,当事者の別段の意思表示がないときは,各債務者にその目的が分割される債務があります(民法427条)。不可分債務には,絶対的効力事由に関する規定(民法434条から440条まで)を除く連帯債務の規定が準用されることから(民法430条括弧書),連帯債務と不可分債務との差異は,絶対的効力事由に関する規定の適用の有無に求められています。ところで,改正民法では,連帯債務における絶対的効力事由を見直すものとしており,不可分債務と連帯債務との間の効果の面での差異が解消される方向になりました。
 そこで,改正民法では,連帯債務と不可分債務との違いが絶対的効力事由に関する規定の適用の有無に求められなくなることに対応して,分割債務,連帯債務,不可分債務の分類を再編成することとなりました。具体的な再編成の在り方としては,債務の内容が性質上可分であるか不可分であるかという基準に基づき,まず,債務の内容が性質上可分である場合には,各債務者は,原則として分割債務を負担しますが(分割主義の原則,民法427条)(注1),法令または法律行為の定めがある場合には,例外的に連帯債務を負担するものとしました(改正民法436条)(注2)。また,債務の内容が性質上不可分である場合には,各債務者は,専ら不可分債務を負担するものとしました(改正民法430条)。現行法は,内容が性質上可分であっても当事者の意思表示によって不可分債務にすることができるとしていますが(民法428条)が,このような場合は不可分債務ではなく連帯債務として取り扱われることになります。すなわち,性質上可分な債務を当事者の意思によって不可分債権とすることはできなくなります。
(注1)分割債務については,現行規定を維持しています。
(注2)連帯債務と不真正連帯債務(共同不法行為者の連帯債務など)の取扱いが同じになりました。
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(不可分債務)
第430条 第4款(連帯債務)の規定(第440条の規定を除く。)は,債務の目的がその性質上不可分である場合において,数人の債務者があるときについて準用する。
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 なお,不可分債務には,混同の絶対効(改正民法440条)が準用されていません。例えば,AおよびBがその共有する黒毛和牛1頭をCに売却した場合において,Cが死亡してAが相続した場合,BはCの相続人であるAに黒毛和牛1頭の引き渡し債務を負うことになります。

⑷ 多数当事者間の債権の分類

 現行民法では,連帯債権に関する規定はありません。同一の債権について複数の債権者がある場合として,分割債権(民法427条)と不可分債権(同法428条,429条,431条)の規定を置くのみです。しかし,下級審裁判例(東地平14.12.27)や学説には,連帯債権という概念を認めるものがあります。連帯債権とは,複数の債権者が債務者に対し,同一の可分給付について有する債権であって,各債権者はそれぞれ独立して全部の給付を請求する権利を有し,そのうちの一人の債権者がその給付を受領すれば全ての債権者の債権が消滅するものであるとされています。また,連帯債権の例としては,復代理人に対する本人および代理人の権利(民法107条2項),転借人に対する賃貸人及び転貸人の権利(同法613条)などが挙げられています。
 そこで,改正民法では,同一の債権について複数の債権者がある場合として,分割債権と不可分債権に連帯債権を加えた3つの類型についての規律を設けた上で,同一の債務について複数の債務者がある場合との対応関係を考慮しながら,その分類を再編成し,連帯債権につき,明文の規定を設けています(改正民法432条以下)。
 具体的な再編成の在り方としては,同一の債務について複数の債務者がある場合と同様に,債権の内容が性質上可分であるか不可分であるかという基準に基づき,まず,債権の内容が性質上可分であるときには,各債権者は,原則として分割債権を有することとし(分割主義の原則,民法427条),法令または法律行為の定めがある場合には,例外的に連帯債権を有するものとしました。また,債権の内容が性質上不可分であるときには,各債権者は,専ら不可分債権を有するものとしています。現行民法は,内容が性質上可分であっても当事者の意思表示によって不可分債権にすることができるとしていますが(民法428条),改正民法上の分類の下では,このような場合は不可分債権ではなく連帯債権として取り扱われることになります。つまり,連帯債権と不可分債権とは,債権の内容が性質上可分か不可分か否かによってのみ区別されることになります。

⑸ 連帯債権に関する規定の明文化

 改正民法では,解釈によって認められていた連帯債権につき明文の規定を新設しました。連帯債権は,複数の債権者それぞれが全部の履行を請求することを許す債権で,その目的が性質上可分なものであるが,特に法令の規定または当事者の意思表示によって成立するものとしました(改正民法432条)。

⑹ 連帯債権の絶対的効力

 連帯債権は,連帯債務と同様,原則として相対的効力を有するものと解されています(改正民法435条の2)。しかし,次の①~④については,絶対的効力を有することとされています(改正民法432条~435条)
① 履行請求・弁済
連帯債権者は,各自で,全ての債権者のために全部または一部の履行を請求することができ,他方,債務者は,全ての連帯債権者のために,各連帯債権者に対して履行することができることとされました(改正民法432条)。
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(連帯債権者による履行の請求等)
第432条 債権の目的がその性質上可分である場合において,法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは,各債権者は,全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ,債務者は,全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
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② 更改・免除
連帯債権者の1人と債務者との間に,更改または免除があったときは,その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については,他の連帯債権者は,履行を請求することができないこととされています(改正民法433条)。
例えば,AとBがCに対し,1000万円の連帯債権(持分2分の1)を有しているとします。この場合において,BがCに対し,その債務を免除したときは,AはCに500万円しか請求することができません。
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(連帯債権者の一人との間の更改又は免除)
第433条 連帯債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があったときは,その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については,他の連帯債権者は,履行を請求することができない。
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③ 相殺
債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において,その債務者が相殺をしたときは,その相殺は,他の連帯債権者に対しても,その効力を生じます(改正民法434条)。例えば,AとBがCに対し,1000万円の連帯債権(持分2分の1)を有しているとします。この場合において,CがBに対して有する1000万円の債権で相殺したときは,Cは債務を免れることになります。そして,Bは,Aに500万円を分与することになります。
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(連帯債権者の一人との間の相殺)
第434条 債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において,その債務者が相殺を援用したときは,その相殺は,他の連帯債権者に対しても,その効力を生ずる。
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④ 混同
連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは,債務者は,弁済をしたものとみなすこととされました(改正民法435条)。例えば,AとBがCに対し,1000万円の連帯債権(持分2分の1)を有しているとします。この場合において,Aが死亡してCが単独相続したときは,1000万円の連帯債権は弁済をしたものとみなすこととされ消滅します。そして,Bはその持分2分の1相当額である500万円の分与をCに請求することになります。
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(連帯債権者の一人との間の混同)
第435条 連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは,債務者は,弁済をしたものとみなす。
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⑺ 連帯債権の相対的効力の原則とこれに反する特約の可否

 履行の請求・弁済,更改・免除,相殺および混同(改正民法432条~435条)を除き,連帯債権者の1人の行為または1人について生じた事由は,他の連帯債権者に対してその効力を生じないこととされています(相対的効力,改正民法435条の2本文)。ただし,他の連帯債権者の1人および債務者が別段の意思を表示したときは,当該他の連帯債権者に対する効力は,その意思に従います(改正民法435条の2)。つまり,他の連帯債権者の一人および債務者が,相対効しか有しない法律行為または事実を,絶対効を有するものに変えることができます(同条の2ただし書)。
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(相対的効力の原則)
第435条の2 第432条から前条までに規定する場合を除き,連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は,他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし,他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは,当該他の連帯債権者に対する効力は,その意思に従う。
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⑻ 不可分債権

 現行民法では,債務の目的が性質上不可分である場合に加え,その目的が性質上可分である場合にも,当事者の意思によって不可分債権が成立するとされています(民法428条・429条)。
 これに対し,改正民法では,不可分債権には,新設した連帯債権に関する規定を準用し,不可分債務と同様に,不可分債権は,債権の目的が性質上不可分である場合に限ってその対象とすることとしました(改正民法428条)。ただし,免除・更改の絶対効(改正民法433条)と混同の絶対効(改正民法435条)については,連帯債権の規定を準用していません。
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(不可分債権)
第428条 次款(連帯債権)の規定(第433条及び第435条の規定を除く。)は,債権の目的がその性質上不可分である場合において,数人の債権者があるときについて準用する。
(不可分債権者の一人との間の更改又は免除)
第429条 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても,他の不可分債権者は,債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては,その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
(不可分債務)
第430条 第四款(連帯債務)の規定(第440条の規定を除く。)は,債務の目的がその性質上不可分である場合において,数人の債務者があるときについて準用する。
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15 保証に関する見直し(③で述べた事項を除く)

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<主な改正点>
・ 主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重された場合であっても,保証人の負担は加重されないこととされました。
・ 保証人は主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができることとされました。
・ 主たる債務者が債権者に対して相殺権,取消権または解除権を有するときは,これらの権利の行使によって主たる債務者が主たる債務の履行を免れる限度で,保証人は,債権者に対して債務の履行を拒むことができるという旨の規定を新設しました。
・ 連帯保証人の債務については,更改,相殺,混同の3つの場合に限り,その絶対効を残しました。
・ 委託を受けた保証人が債務の消滅行為をした場合に保証人が主たる債務者に対して有する求償権の額は,原則として保証人が支出した財産の額になりますが,保証人の支出した財産の額が消滅した主たる債務の額を超えるときは,消滅した主たる債務の額になりました。
・ 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務の期限が到来する前に,弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは,主たる債務者は,主たる債務の弁済期以後に,債務が消滅した当時に利益を受けた限度で,求償に応ずれば足り,求償可能な法定利息は主たる債務の弁済期以後のものに,費用その他の損害賠償も弁済期以後に債務消滅行為をしたとしても避けることができなかったものに,それぞれ限られる旨の規定を新設しました。
・ 委託を受けない保証人の求償権も,委託を受けた保証人の場合と同様に,主たる債務の弁済期以後でなければ,これを行使することができないこととされました。
・ 先に弁済等をした保証人が事後の通知をする前に,後に弁済等をした主たる債務者が事後の通知をした場合には,主たる債務者は,自己の弁済等を有効とみなすことができることとし,主たる債務者が相殺をもってその保証人に対抗したときは,その保証人は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる旨を規定しました。
・ 委託を受けた保証人がある場合に,先に弁済等をした主たる債務者が事後の通知をする前に,後に弁済等をした保証人が事後の通知をしたときについて,保証人は,自己の弁済等を有効とみなすことができる旨を規定しました。
・ 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては,保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときを除き,保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため,主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも,主たる債務者は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる旨を規定しました。

⑴ 保証債務の付従性に基づく保証人の負担加重の否定

 現行民法では,保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは,これを主たる債務の限度に減縮する旨の規定があります(民法448条)。しかし,保証契約の締結後に主債務の内容が加重された場合の処理については,明文の規定が存在しませんでした。また,一般的に,保証債務の付従性の趣旨に照らせば,保証契約の締結後に主債務の内容が加重された場合であっても,保証債務にその影響は及ばないと解されています。
 そこで,改正民法では,一般的な解釈に従い,これを明文化して,主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重された場合であっても,保証人の負担は加重されないものとしました(改正民法448条)。
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(保証人の負担が主たる債務より重い場合)
第448条 (略)
2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても,保証人の負担は加重されない。
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⑵ 債権者に対する保証人の抗弁と債務の履行の拒絶

 現行民法では,保証人は,主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる旨の規定があります(民法457条2項)。しかし,一般に保証人は,保証債務の付従性に基づき,相殺に限らず,主たる債務者の有する抗弁を主張することができるとされています(最判昭40.9.21)。したがって,例えば,主たる債務者が,契約の無効の抗弁(主債務の不発生),弁済・相殺の抗弁(主債務の消滅),同時履行の抗弁(主債務の履行請求の阻止)などの抗弁を有する場合には,保証人も,債権者に対してそれらの抗弁を主張することができます。また,会社法581条1項は,社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合において,その社員は,持分会社が主張することのできる抗弁をもって,持分会社の債権者に対抗することができると規定しているところ,一般に,持分会社が同条2項の相殺権,取消権,解除権を行使した場合には,その社員は,同条1項に基づき,持分会社の主張することのできる抗弁を債権者に対して主張することができると解されています。
 そこで,改正民法では,民法457条2項につき,判例の趣旨を踏まえ,また,会社法第581条1項を参考として,保証人は主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる旨の規定に改めています(改正民法457条2項)。
 また,現行民法の保証人が主たる債務者の反対債権による相殺をもって債権者に対抗することができる旨の規定(民法457条2項)につき,通説は,他人である主たる債務者の有する反対債権の処分権限まで保証人に与えるのは過大であるとして,保証人は,主債務が相殺によって消滅する限度で保証債務の履行を拒絶することができるにとどまると解しています。
 ところで,持分会社の社員は,一定の場合に持分会社の債務を弁済する責任を負うという点で,保証人に類似した立場に置かれているところ(会社法580条参照),同法581条2項は,社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合において,持分会社がその債権者に対して相殺権を有するときは,社員は債権者に対して債務の履行を拒むことができると規定しています。一般に,この規定は,上記の通説の立場を前提としたものであると解されています。
 そこで,改正民法では,通説の考えを踏まえ,会社法第581条2項を参考として,主たる債務者が債権者に対して相殺権,取消権または解除権を有するときは,これらの権利の行使によって主たる債務者が主たる債務の履行を免れる限度で,保証人は,債権者に対して債務の履行を拒むことができるという旨の規定を新設しました(改正民法457条3項)。
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(主たる債務者について生じた事由の効力)
第457条 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は,保証人に対しても,その効力を生ずる。
2 保証人は,主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
3 主たる債務者が債権者に対して相殺権,取消権又は解除権を有するときは,これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において,保証人は,債権者に対して債務の履行を拒むことができる。 ※ 参考(会社法)
(社員の抗弁)
第581条 社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合には,社員は,持分会社が主張することができる抗弁をもって当該持分会社の債権者に対抗することができる。
2 前項に規定する場合において,持分会社がその債権者に対して相殺権,取消権又は解除権を有するときは,社員は,当該債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
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⑶ 連帯保証人について生じた事由の効力

 現行民法は,民法434条から440条までの規定は,主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用しています(民法458条)。つまり,連帯保証人について生じた事由,具体的には,履行の請求(民法434条),更改(民法435条),相殺(民法436条),免除(民法437条),混同(民法438条)および時効の完成(民法439条)については,主たる債務者にその効力を生じるものの(絶対効),これ以外に連帯保証人について生じた事由は,主たる債務者に対してその効力を生じない旨を定めています(相対効)。
 しかし,例えば,連帯保証人に履行の請求があった場合に主たる債務者に対してもその効力が生じるとすると,そのような履行の請求があったことを当然には知らない主たる債務者が不測の損害を被るおそれがあるとの指摘がありました。他方で,連帯保証人について生じた事由が原則として主たる債務者に対してその効力を生じないとする現行法の規定は合理的であり,維持すべきであるとの指摘がありました(もっとも,債権者と主たる債務者との間で連帯保証人に生じた事由が主たる債務者に効力を生ずることを合意していた場合には,その合意に従った効力を認めても,主たる債務者が不測の損害を被るおそれはありません)。
 そこで,改正民法は,現行民法の規律を維持しつつ,連帯保証人について,更改(改正民法438条),相殺(改正民法439条1項),混同(改正民法440条)の3つについてはその絶対効を残し,これ以外の事由,例えば連帯保証人に対する履行の請求は主たる債務者に対してその効力を生じないとするとともに,債権者および主たる債務者が別段の意思を表示していた場合には,連帯保証人に生じた事由(履行の請求や時効の完成等)の主たる債務者に対する効力は,その意思に従うと規定を改めています(改正民法458条において準用する第441条)。
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(連帯保証人について生じた事由の効力)
第458条 第438条,第439条第1項,第440条及び第441条の規定は,主たる債務者と連帯し
て債務を負担する保証人について生じた事由について準用する 。
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⑷ 委託を受けた保証人の求償権の額

 現行民法でも,委託を受けた保証人の求償権に関する規定がありましたが(民法459条),その求償権の額については明文の規定がありませんでした。そこで,現行民法下の一般的な解釈に従い,委託を受けた保証人が債務の消滅行為をした場合に保証人が主たる債務者に対して有する求償権の額は,原則として保証人が支出した財産の額になりますが,保証人の支出した財産の額が消滅した主たる債務の額を超えるときは,消滅した主たる債務の額になる旨を明文化しました(改正民法459条1項)。
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(委託を受けた保証人の求償権)
第459条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは,その保証人は,主たる債務者に対し,そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては,その消滅した額)の求償権を有する。
2 (略)
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⑸ 委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権

 現行民法は,委託を受けた保証人が弁済や代物弁済等によって主たる債務を消滅させた場合の求償関係について規定しています(民法459条1項)。保証委託契約は,委任契約ですから,委託を受けた保証人が弁済をするのに必要な費用については,委任者である主たる債務者に対して前払請求をすることができるところ(民法649条,650条),委託を受けた保証人について,常にこの前払い請求を認めてしまうと,主たる債務者にとっては,保証人に保証委託をした意味がなくなります。そこで,このような委任に関する規定の特則として,委託を受けた保証人の求償権に関する規定(民法459条から461条まで,463条)が置かれています。
 ところで,委託を受けた保証人が,主たる債務の弁済期が到来する前に,保証債務の期限の利益を放棄して弁済等をすることがあります。しかしながら,このような保証債務の期限前弁済は,保証委託の趣旨に反することがあるとの指摘がされています。例えば,主たる債務者も保証人も債権者に対する反対債権を有していたところ,債権者の資力が悪化したため,保証人が保証債務の期限の利益を放棄して債権者に対して自己の反対債権を自働債権とする相殺を行うことがあり得えますが,これは,債権者の無資力のリスクを主たる債務者に負わせて自己の利益を図るものであるといわれています。
 そこで,委託を受けた保証人が期限前に弁済等をした場合については,保証委託の趣旨に反する可能性があることを踏まえ,その場合の事後求償権の範囲を,委託を受けない保証人の事後求償権の範囲と同様のものにとどめるべきであるとの考え方が示されています。すなわち,事後求償権が認められる範囲を,委託を受けた保証人が期限前弁済等をした当時に主たる債務者が利益を受けた限度(民法462条1項参照)にとどめるべきであるとするものです。また,判例は,委託を受けた保証人が期限前に弁済等をした場合において,保証人が弁済期前に求償権を行使することを認めると,主たる債務者は期限の利益を喪失したのと同じ結果となるため,その保証人による事後求償権の行使は,主債務の期限の到来を待たなければならないと判示しています(大判大3.6.15)。
 そこで,改正民法は,保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務の期限が到来する前に,弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは,主たる債務者は,主たる債務の弁済期以後に,債務が消滅した当時に利益を受けた限度で,求償に応ずれば足り(改正民法459条の2第1項),求償可能な法定利息は主たる債務の弁済期以後のものに,費用その他の損害賠償も弁済期以後に債務消滅行為をしたとしても避けることができなかったものに,それぞれ限られる旨の規定を新設しました(同条2項)。
 なお,改正民法においては,主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは,保証人は,債権者に対し,その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができるとしています(改正民法459条の2第1項後段)。これは,主たる債務者に求償することができない保証人に債権者から回収をする手段を確保させるため,保証人に対して消滅すべきであった債務の履行を請求することができるとしたものです。また,改正民法では,委託を受けた保証人が,例外的に事前求償権を行使することができる場合(民法460条)として,「保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき」という規定を設けました。このような場合は,事前に求償をしなければ主たる債務者の財産が散逸してしまうなどの危険があり得るためです。
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(委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権)
第459条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは,その保証人は,主たる債務者に対し,主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において,主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは,保証人は,債権者に対し,その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 前項の規定による求償は,主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
3 第1項の求償権は,主たる債務の弁済期以後でなければ,これを行使することができない。
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⑹ 委託を受けない保証人の求償権

 改正民法においては,委託を受けない保証人の求償権については,委託を受けた保証人が弁済期前に弁済をしたときの求償権についての規定が準用されることとなりました(改正民法462条1項,459条の2第1項)。また,委託を受けない保証人の求償権も,委託を受けた保証人と同様に,主たる債務の弁済期以後でなければ,これを行使することができないこととされました(改正民法462条3項,459条の2第3項)。
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(委託を受けない保証人の求償権)
第462条 第459条の2第1項の規定は,主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。 2(略)
3 第459条の2第3項の規定は,前2項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。
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⑺ 連帯保証人の通知義務に関する規定の見直し

① 委託を受けた保証人
 現行民法は,連帯債務者間の事前通知についての規定(民法443条1項)を保証人についても準用しています(民法463条1項)。この趣旨は,保証人が弁済等をしようとするときに,主たる債務者への事前通知を義務付けることによって,主たる債務者が債権者に対抗することのできる事由を有している場合にそれを主張する機会を与えようとする点にあります。しかし,委託を受けた保証人は,履行期が到来すれば直ちに弁済をしなければならない立場にありますので,その弁済を遅滞してまで主たる債務者に対する事前の通知をしなければならないというのは相当でないという指摘がされています。
 そこで,改正民法では,保証人が弁済するにあたって,一律に主たる債務者へ事前通知をしなければならないという規定(民法463条1項,443条1項)を原則として廃止しました。そして,委託を受けた保証人が主たる債務者にあらかじめ通知しないで弁済等の債務の消滅行為をしたときは,主たる債務者は,債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができることとし,主たる債務者が相殺をもってその保証人に対抗したときは,その保証人は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる旨の規定に改めました(委託を受けた保証人の事前通知懈怠,改正民法463条1項)。併せて,主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため,その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは,その保証人は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる旨の規定に改めました(主たる債務者の事後通知懈怠,改正民法463条2項,現行の民法463条2項に相当)。例えば,委託を受けた保証人Aが主たる債務者Bに通知せずに,債権者Cに弁済した場合において,主たる債務者BがCに対して反対債権を有していたときには,BはAに対し,相殺をもって対抗することができることになります。この場合,結果,AのBに対する求償権は消滅し,その対抗された債権は,当然にAに移転し,Aは債権者Cに請求することになります。他方,主たる債務者Bが弁済したことを保証人Aに通知しなかったため,Aが善意で弁済したときは,Aの弁済は有効であったものとみなされます。
 さらに,改正民法では,保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては,保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか,保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため,主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも,主たる債務者は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる旨を規定しました(改正民法463条3項)。
 例えば,保証人Aが主たる債務者Bの意思に反して保証をした場合を除き,保証人Aが債権者Cに弁済した場合において,AがBに通知することを怠ったため,Bが善意で弁済したときは,Bの弁済は有効であったものとみなされます。
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(通知を怠った保証人の求償の制限等)
第463条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは,主たる債務者は,債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において,相殺をもってその保証人に対抗したときは,その保証人は,債権者に対し,相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため,その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは,その保証人は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
3 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては,保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか,保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため,主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも,主たる債務者は,その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
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② 委託を受けない保証人等
 現行民法では,主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし,その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは,主たる債務者は,その当時利益を受けた限度において償還をすれば足り(民法462条1項),また,主たる債務者の意思に反して保証をした者は,主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する旨が定められています(民法462条1項,2項)。そのため,現行民法で定めている事前通知(民法463条1項,443条1項)を義務づける意義が乏しい点が指摘されています。
 そこで,委託を受けないが主たる債務者の意思に反しない保証人の事前通知に関する規定(民法463条1項,443条1項),委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の事後通知に関する規定(民法463条1項,443条2項)は,いずれも廃止されました。




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