【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第2回 「民法177条と司法書士の存在意義」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。最近のニュースを見ると、所有者不明の不動産問題を解決するために相続登記を義務化する動きや、不動産を対象とした抵当権や質権だけでなく、動産への担保設定の登記も創設される動きもあって、司法書士にとってはお仕事が増える明るい話題だらけです。

 引き続き、司法書士のお仕事の話を書こうと思ったのですが、今回は、司法書士の存在意義について考えてみたいと思います

 「えっ!?それは第1回目に最初に話すようなテーマでは!?」と思われた方は、「ホント、そうだなぁ~」って思います(笑)なぜ、急にこのようなテーマになったかというと、先日、「日司連年次制研修」を受けてきたからです

 まず、試験的に必要な知識を確認しておきましょう。司法書士は研修を受ける義務がありますか?さっそく、司法書士法25条を確認してみましょう。お手持ちの六法でご確認下さい。

 いかがでしょうか?研修を受ける義務ではなく、努力目標です(笑)試験的には、研修を受けないことだけで直ちに懲戒事由となるわけではないことを確認しておいて下さい。

 そして、上記年次制研修ですが、こちらは、司法書士に登録後満3年、登録後満8年並びに8年に5年の倍数を加えた年数に参加する重要な研修になります

 内容としては、ざっくりと言えば、司法書士の存在意義を確認するような研修です。そんな研修を受けたてのほやほやの状態なので、今回はこのテーマになりました。僕は単純です(笑)

 さて、皆さんは、司法書士の存在意義をどのように考えますか?テーマが大きすぎますね(笑)僕が受験生の頃は、司法書士の仕事もよく分かっておらず、初学者の段階で学習する民法177条の条文に書かれているような、不動産の所有権は「先に登記した者が勝つ!」というルールの中で、とにかく、司法書士は、登記所に走って登記申請するところに全てを懸けているのだと思っていました。講義の中でも先生がそのようにお話されていた記憶もあるし(笑)

 「食うか、食われるかの早い者勝ちのルール」という恐ろしい世界の中で、司法書士は生きているイメージでした。まぁ、登記所で受付番号をもらうことに命をかけているような仕事でもあるので、あながち間違ったイメージではないかもしれません。

 でも、最近はオンライン申請も多いわけで、頑張って登記所まで走っても、インターネットのスピードには勝てません。「早く登記して、勝つ!」という司法書士が走るイメージはなくなってきました。残念。でも、ご安心下さい。司法書士の存在意義は、そんなものではありません(笑)

 司法書士が登記以外の分野でもいろいろと活躍していることは、ブログの中で順番にご紹介するとして、やはりメインは登記業務です。しかし、登記は、何も司法書士に頼まなくても、お客さんが自分でできます。「いや、書類を集めるのが大変だから、司法書士が必要なのでは?」と思われた方は、なかなか、いいところを突いていますが、最近では行政サービスがしっかりしているので、法務局で無料の登記相談が毎日おこなわれています。必要な書類や申請の書き方まで、丁寧に説明してくれます。僕自身も、ここ4年ほど、法務局で登記相談をさせてもらっています。

 では、司法書士が全てを懸けてやることは何でしょうか?

 それは、「登記申請意思確認義務と本人確認義務」だと思っています

 例えば、不動産の売買があった場合に、申請書は誰でも書けます。書類も誰でもそろえることができます。でも、司法書士がするのは、そのレベルではありません。

 土地を手放す売主が、本当に手放す意思があるのか、また、目の前にいる売主が本当に本人か、成りすましではないか、それを長年培った勘で見抜くわけです。これは、司法書士にしかできないことです

 司法書士になった後、皆さんはいろいろな研修を受けます。その中で、本人確認の方法の一つとして、「干支を質問して本人か確認しましょう!」って、「ここって笑うところかな?」と思ってしまうようなことを教えてもらいます(笑)

 本人確認資料として使われることが多い運転免許証も、「ケースから取り出して、外観、形状を確認しましょう!」って教わります。

 また、僕は先輩司法書士から、「登記済証がカラーコピーじゃないか、赤いハンコの部分にこっそりツバをつけてこすってみるとよい」なんて教わりましたが、「アカンやろ」って聞いていました(笑)

 ここまでする必要があると思いますか?

 でも、思い出して下さい。地面師グループが積水ハウスから63億円をだまし取った事件を。この事件では、実際、偽造パスポート、偽造印鑑証明書が使われ、司法書士からの干支の質問に対して、間違えています。

 ここで、「干支を間違えた?あれ?」って思えるところに、司法書士の存在意義があるのではないでしょうか。僕が所属する大阪司法書士会でも、数年前、偽造印鑑証明書が出回っていると注意喚起がされました。

 本人確認だけでなく、ご高齢で、意思能力が衰えてきているような場面で、売却の意思の有無が読み取れるか?そのあたりをしっかり判断し、ダメなときはダメ!と取引を勇気をもってストップすることができるのが司法書士です

 委任状の筆跡を見て、「この字は代筆だ」とか、住所や名前がサッと書けない様子を見て、「何かおかしい」、運転免許証を触って、「あれ?厚みが!?」と、経験的にヤバい空気が読み取れるところに司法書士の経験が生きるわけです。

 皆さんも、司法書士になったら、五感を研ぎ澄まして、安全に取引が完了するよう全力を注いで下さい。きっと、お客さんから、「ありがとう」と感謝されると思いますよ。頑張って下さいね

 

 

☜第1回「不思議な委任状」はこちら                    3回「司法書士をしていて抱く違和感」はこちら☞





<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートする「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。


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※以下は2019年11月1日現在の情報です。
<Wセミナー司法書士講座 初学者向け新コース「基礎総合コース(2021年合格目標)」がスタート!>

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当ブログを執筆している中山講師も、梅田校で当コースを担当します。
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2019年11/4(月・祝)14:00~15:30 渋谷校:姫野寛之講師、なんば校:中山慶一講師
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