【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第9回「人はミスをするもの」
こんにちは。司法書士の中山慶一です。本年も宜しくお願い致します。
年明け早々から、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の逃亡劇のニュース。考えてみれば、昨年から、保釈中の逃走が多かったですよね。個人的には、小さい子を持つ親として、被告人や被疑者の逃亡は、リアルに怖いです。また、僕の家の近所では、年明けから、毎日のように野生の猿も出没していますが、こちらも同じ理由で怖いです(笑)
ところで、保釈中に被告人が逃亡した場合、刑法の「逃走罪」の適用はありますか?年明け一発目の問題です(笑)さぁ、シンキングタイムです。
刑法97条を読むと、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したとき」とあります。「既決」は、もう処分が決まった、「未決」は、まだ処分が決まっていないくらいの意味なので、確定判決で刑事施設に拘禁されている人や、勾留状によって拘置所や留置施設に拘禁されている人が対象となります。つまり、今現在、刑事施設に入っている人が逃げちゃう場面ですね。ということは、保釈中の逃走は適用ナシってことになります。
これだけ逃げられちゃうと、さすがにマズいですね。保釈中の逃走への「逃走罪」の適用の範囲の拡大や、GPSを使った行動監視について、検討が始まるようです。
受験生の皆さんとしては、「逃走の罪」は、優先順位は低いですが、時間があれば確認しておきましょう。昭和の時代に過去問も出ていますよ。「少年院に収容されている少年」が逃げてしまった場面で、加重逃走罪が出題されています。同じ国家的法益に対する罪として、昭和の時代に出た「犯人隠匿罪」も平成28年に再度、出題されているので、「昭和の時代の過去問でしょ?」と侮ることなかれ、です。
それにしても、これだけ被告人や被疑者が逃げてしまうと、「誰のミス?」と思ってしまいます。逃げてしまった後の刑法の適用の改正の検討よりも、「なぜ、逃げちゃったのか、その検討をしてもらいたいです。
個人的には、ミスをすること自体は悪いことだと思っていません。確かに、わざとミスされると困ったものですが、「人はミスをするもの」です。そのミスを活かせばいいだけのこと。「失敗は成功のもと」です。先日ニュースで、メガネ製造販売チェーンの「OWNDAYS(オンデーズ)」の田中修治社長の言葉が紹介されていました。「成功はアート、失敗はサイエンス」と。
いい言葉だな、と思います。受験勉強も同じですよね。失敗やミスは、サイエンスです。問題を解いて間違えても、そこから学べばいいだけです。択一の問題を解いて間違えたのであれば、その知識を、記述の問題を解いて枠ズレを起こしたのであれば、その原因を分析して、次の成功へつなげて下さい。問題を間違えることは、次に正解するための必要なステップだと思うと、問題を解いて間違えても、気持ちが楽になり、ワクワクできるかもしれません(笑)ミスをした後の対応をしっかりとすれば、恐れることなかれ、です。
後の対応と言えば、実務でも、不動産登記で添付する書面の中でミスを発見することもあります。
例えば、公正証書で作成されている遺言の内容が間違っていたり、裁判所で作成されている遺産分割の調停調書の内容が間違っていたり、市役所の戸籍の内容が間違っていたりと、役所で作成されているものにもミスがあります。
役所といえども、「人はミスをするもの」です。ミスを発見した場合には、その後の対応が必要となります。
公正証書で作成されている遺言も誤記等があった場合には、公証役場に持って行くと、「前の公証人さんが作成した遺言の〇〇の部分は、照合すると誤記であることが判明したので、これを証明する。」という感じで、「誤記証明書」を作成してくれます。
例えば、不動産の表示がちょっと間違っていたような場合(面積や種類等)、登記事項証明書で確認すれば、間違っていることは簡単に分かるので、サッと直してくれます。
ところが、「ちょっとした間違い」と言えるか、微妙なケースもあります。例えば、お客さんが遺産分割の調停調書を持って来られて、調停調書に添付されている遺産目録の不動産が間違えているのですが、それが、マンションで敷地権付区分建物ではないのに、敷地権付区分建物と書かれちゃっているようなミスです。
間違えている遺産目録の不動産の表示には、①マンション全体である「一棟の建物の表示」、②マンションが建っている土地である「敷地権の目的である土地の表示」、③マンションの部屋のである「専有部分の建物の表示」が書かれていますが、本当は、そのマンションが敷地権付区分建物ではない場合どうしましょう?
受験勉強の中では出てきませんが、例えば、501号室は敷地権付きで、502号室は敷地権が付いていない、というように、部屋ごとで敷地権付きが異なるケースもあるので、このようなミスが生まれることもあります。
この場合、正しい遺産目録の不動産の表示は、①土地の表示とその持分、②一棟の建物の表示、③専有部分の建物の表示を記載するのですが、内容としては、間違えている敷地権付区分建物の記載とほぼ同じです。
「ちょっとした誤記だよね。」と言えばそれまでかもしれませんが、受験勉強の時に、「敷地権付区分建物と、敷地権付きではない区分建物は、別物だ!」と勉強してきた手前、ちょっとした誤記には見えなかったりします(笑)
また、敷地権付区分建物の場合には、分離処分が禁止されているので、マンションの部屋の話がそのまま土地の話にも連動していることが分かるのですが、敷地権付きではない区分建物の場合には、裁判所の調停の中で、敷地権付きではないことを分かりながら、ちゃんと、土地の話と、マンションの部屋の話を分けて、話し合いをしていたのか、このような調停調書を見てしまうと疑わしくなってきます(笑)
このようなミスを発見した場合にも、その調停の内容は裁判所がよく分かっているはずなので、裁判所に持って行きましょう。
「ちょっとしたミス」と判断されれば、「今回の調停調書は、明白な誤りがあるので、職権で、間違っている別紙1の遺産目録を、正しい別紙2の遺産目録に更正する」と、「更正決定」を出してくれます。
戸籍の記載が間違えている場合は、どうでしょうか。名前が間違えているもの、続柄や生年月日が間違えているもの、養子に出た記載はあるものの、養子先の戸籍には養子に入ってきた記載がない戸籍に出会うことがあります。
また、男女を間違えている戸籍も見たことがあります。
相続登記をする場合には、戸籍等の連続性が重要になってきます。被相続人が、養子で実親の戸籍等から除籍されているのに、養親の戸籍等に入ってきた旨の記載がなければ、連続性が確認できなくなってしまいます。
古い戸籍等だと、養子縁組の記載も多く、また、その記載がどこか抜けていることも多い気がします。
この場合には、市役所等に問い合わせしてみましょう。内容によっては職権で訂正してくれることもありますし、家庭裁判所に戸籍訂正許可の申立をする必要があるかもしれません。
また、相続登記だけの問題であれば、内容によっては、思い切って、登記所で上申書による対応ができないか、聞いてみるのもアリかもしれません。
意外と、戸籍等の誤記も多いので、その後の対応でバタバタしないように、いろいろと知識は持っておきたいところですね。
「人はミスをするもの」なので、間違うことを恐れず、ドンドン受験勉強を進めて下さいね。
おっと、最初の方に書いた「少年院に収容されている少年が逃げてしまった場面」の解答を書くのを忘れていました(笑)逃走罪や加重逃走罪の対象は、刑事施設から逃亡した人ですが、少年院は刑事施設ではなく、保護処分により送致された場所なので対象外です。昭和の過去問も大切にしておいて下さいね。
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プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートする「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。
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