【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第10回「離婚します~民事執行法の改正①」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 司法書士試験の解答に当たり適用する法令等は、基本的にその年の4月1日現在において施行されているものになります。皆さんは、相続法や債権法の改正をしっかりされていることと思います。司法書士法も一部が改正されているので、要チェックです!

 ところで、今年の4月1日施行される改正もありますが、ご存じでしょうか?

 そう!特別養子縁組の改正です!

 えっ!?

 「乙ちゃんブログで読んだ!?」「乙ちゃんブログのネタをパクるな!?」

 う~ん…僕も特別養子縁組の話をネタに書こうと思っていたら、パクられました…なんて書くと、炎上しちゃいそうなので、気持ちを切り替えて、同じ令和2年4月1日施行の民事執行法の改正はどうでしょうか。もちろん、試験範囲も含まれています

 乙ちゃんブログにも書かれていましたが、特別養子縁組の問題は、昨年の本試験で出題されています。また、今回の民事執行法の改正に絡む、財産開示手続も出題されていました(H31-7-オ)。

 これは、「司法書士試験あるある」です。司法書士の本試験では、「改正直前にその論点が出題され、改正後、数年(3~4年くらい)して、再度出題される。」という都市伝説に近いような「あるある」があります。


 「なんだ、数年後かよ。」と思った方は、都市伝説ですから、再度の出題に備えて、準備しておく方がベターです。個人的にも、今回の民事執行法の改正に絡んで、今年の本試験で一つ気になる部分があるので、それは、最後にご紹介したいと思います(笑)

 改正だけでなく、出題のサイクルとしても、4年周期で似たような問題がでることも多く、こちらもちょっとした都市伝説です(笑)

 なので、昨年の特別養子縁組の出題や、財産開示手続の出題は、講師としては、「本試験で、出るのが分かっていましたよ。」という話になってきます。試験勉強の中で予備校を利用するメリットの一つでしょう。


 話がそれてきました(笑)では、民事執行法の改正を見ていきましょうか。皆さんの事務所にお客さんです。

 お客さんの話を聞くと、「離婚することになったので、離婚協議書を作成して欲しい。」とのこと。

 さて、どうしましょうか。

 司法書士がいろいろとアドバイスしながら、離婚協議書を作成するのもいいと思いますが、そこには致命的といってもいいデメリットがあります。それは、「強制執行認諾文の文言」を入れても強制力がないこと。

 なので、僕はいつも離婚公正証書作成を進めて、必要であれば、原案の作成の依頼を受けています。


 離婚協議書の原案の作成で、僕が気を付けているのは、①養育費の支払いの次期をいつまでにするかと、②子供への面会交流権の2つ。

 特に、養育費の支払いは、「子供が成人するまで」としてしまうと、子供が大学等で一番お金がかかる次期に支払が終わってしまうことがあるので、大学等の卒業まで養育費を払ってもらえるよう、原案を作成していきます。

 ところで、養育費の支払いって、ちゃんと滞りなく、払ってもらっているんでしょうか?

 厚生労働省の調査結果を見ると、平成28年度で受給状況が24.3%になっています。要するに、8割弱の人が払っていません。

 となると、「いずれ払ってくれなくなるかも!?」を前提として、離婚協議書は作成した方がいいでしょう。つまり、払ってくれなくなったら、サッと強制執行ができるように事前に準備をしておきましょう、ということになります。

 通常、相手が養育費を払ってくれなくなったら、裁判所で訴える必要があります。でも、それだと時間もお金もかかります。そこで、登場するのが公正証書です。離婚協議書を公正証書で作成しておきます。そして、公正証書の内容の中に、「自分が養育費を払わなくなって、強制執行されても、文句を言いません!」と強制執行認諾条項を入れておくわけです。これによって、裁判をしなくても、その強制執行認諾文言付公正証書に基づいて、相手の財産を差し押さえることができます。とっても便利です。

 でも司法書士が作成した離婚協議書だけだと、強制執行認諾条項を入れても、その文言に強制的な効力がなく、結局、あらためて裁判して判決をとる必要がでてしまいます。なので、離婚協議書を作成するのであれば、公正証書の原案を作成してあげて、強制執行認諾文言を入れてもらうのがいいでしょう。

 これで安心ですね。

 ん!?本当に安心でしょうか?

 強制執行する場合の3点セットと呼ばれるものがあります。それは、①債務名義、②執行文、③送達証明書です。

 「おっ!民事執行法で習ったぞ!」って感じですかね。

 ①は、「離婚公正証書の正本」、②は、執行文付与の申立を公証役場ですればOKです。

 ここで困るのが、③の送達証明書です。いざ強制執行しようとした段階で、相手が引っ越してしまって住所が分からなくなっている、ということも想定されます。特別送達で相手に送達しても届かないので、公示送達でやり直し、なんてなると、時間がかかります。もっと、サッと強制執行手続を進めたいものです。

 この場合には、離婚するお二人そろって、公証役場に行ってもらって、公正証書を公証役場で作成したその場で、相手に交付しちゃいます。この交付送達をすれば、その場で③の送達証明書は発行してくれます。

 これで安心ですね。

 あれ?まだ不安ですか?なかなか鋭い(笑)

 一番困るのが、どこに財産があるのかが分からないケースです。どこの銀行に預金があるのか、どこに不動産を持っているのか、どこで働いているのか。相手の財産がどこにあるのか分からないと強制執行が空振りに終わってしまいます。

 そこで財産開示手続が準備されているのですが、この手続の利用状況が悪いそうです。全国の各地方裁判所で年に数件、あるかないかの状況のようです。そこで、今回、この財産開示手続にテコ入れが入りました。令和2年4月1日施行の民事執行法改正の一つです。

 ところで、協議離婚にともなって、「財産分与で、不動産をもらうので名義を換えて欲しい。」という依頼が皆さんの事務所に来たら、持ち物は、何を持ってきてもらいますか?


 そういえば、一郎さんと花子さんも平成28年に離婚していました。あの方たちは、調停離婚でしたね。

 えっ!?誰!?って。ちゃんと司法書士試験の記述の過去問も解いていますか?(笑)

 そう!平成28年の不動産登記法の記述の問題で離婚したお二人です。あのときは、登記原因証明情報として、調停調書をお持ち頂きました。

 では、協議離婚の場合は、どうでしょう。意外と、登記原因証明情報の中身は、シンプルです。書くのは、

(1)一郎と花子は、年月日、離婚した。
(2)年月日、一郎が花子に不動産を分与する旨の協議が成立した。
(3)よって、同日、一郎から花子に所有権が移転した。

 これだけです。司法書士としては、事実を確認するため、戸籍や、協議書を確認しますが、登記所には、上の内容で登記原因証明情報を作成するだけです。あとは、一般的な所有権の移転の登記の添付情報と同じです。

 意外と、あっさりと所有権の移転の登記は完了してしまいます。

 ところで、財産分与の請求って、期限がありましたか?さぁ、民法768条2項ただし書をチェックです!

 「離婚の時から2年」と書かれていますね。もちろん、2年経過したから、財産分与の協議ができなくなるわけではないので、離婚から3年くらい経過して、財産分与を原因とする所有権移転を申請することもあるのですが、この場合には、贈与税がかかってくるのか、確認しておいた方がいいです。

 さて、話を戻しましょう。民事執行法の改正の話です。ただ、この時点で、原稿の文字数をかなりオーバーしていることに気づきました。気になる続きは、次回、書いていこうと思います(笑)

 結局、民事執行法の改正の話は何も書いていないような…。また、改正情報ネタを乙ちゃんブログに持って行かれたりして…(汗)

 

☜第9回「人はミスをするもの」はこちら             第11回「離婚します~民事執行法の改正②」はこちら☞

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートする「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。





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