【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第11回「離婚します~民事執行法の改正②」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 離婚の途中でした(笑)あっ、前回の民事執行法の改正のお話です。

 僕は離婚の相談を受ける場合には、まず、相手の通帳や、カード関係を、携帯でもいいので、写真に撮っておくように伝えます。そのうち養育費も払ってくれなくなる可能性が高いわけですから、相手が結婚前から持っているような通帳も含めて、記録を残しておくわけです。

 これで、安心です。前回の記事で、送達証明書も送達したし、相手の通帳や不動産も確認したし、いつでも公証人さんから執行文ももらえるので、「さぁ、支払いをストップしてみろ!こっちは、準備万全だ!」って感じでしょうか。

 えっ!?まだ、不安ですか?新しい銀行の口座や、新しく不動産を取得した場合に困る!?転職して職場が分からなくなる可能性もあるだろ?なるほど。

 そんな場合は、財産開示手続を利用すれば、大丈夫!財産開示手続とは、債務者を裁判所に呼び出して、「どこの銀行にお金があるの?」「不動産持っていますか?」「どこで働いていますか?」って、根掘り葉掘り、聞き出す手続きです。これで、安心ですね。

 えっ!?その財産開示手続の人気がないって話だろ!?その通りでした(汗)

 では、なぜ人気がないのか?それは、使えないからです。使える手続きであれば、人気が出るはずです。実際に、この公正証書を持って裁判所で財産開示手続を利用してみましょう。百聞は一見に如かず、です。イメージ的にはこんな感じになるでしょう(あくまでイメージです。実際は異なります)。

皆さん 「すみませ~ん、財産開示手続の申立てをしたいんですけど~。」

裁判所 「こちらの申立書類を記入して下さい。切手と印紙もご準備下さい。」

皆さん 「は~い、申立書の添付書類の欄は、チェックすればいいですか?」

裁判所 「持って来られている書類にチェックして、通数をご記入下さい。」

皆さん 「この“執行力ある債務名義の正本”ってトコにチェックしたらいいですか?」

裁判所 「何を持って来られましたか?」

皆さん 「公正証書です。養育費を払ってくれなくて…えへっ。」

裁判所 「公正証書ですか?公正証書では財産開示手続のご利用はできませんよ。」

皆さん 「えっ………(ガーン)」


 ほらね、使えないでしょ(笑)

 財産開示手続は、仮執行宣言付判決や、執行証書の場合には、利用できないんですよね。

 また、財産開示手続には、ウソをついても過料がかかるだけで前科も付かないので、債務者も自己申告ですからウソをつけちゃいますし、財産開示の期日に来なかったりするので、人気がない手続きになるのも納得です。

 しかし、せっかくの財産開示手続という制度を創ったわけですから、人気が出るようにしたいものです。ここは、逆転の発想から、申立てができる人の範囲を広げて、過料なんて甘いものではなく、懲役や罰金の刑事罰をチラつかせて、債務者がトボケていても、すぐにバレるように、債務者以外の第三者から財産のありかを聞き出せばいいのではないか、という結論になります。

 そこで登場したのが、令和2年4月1日から施行される財産開示手続の改正と第三者からの情報取得手続の新設です。

 改正の内容によると、申立権者の範囲を拡大して、仮執行宣言付判決や、執行証書の場合にも利用が可能です。また、不出頭等の場合には、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金の制裁もあり、債務者以外の第三者からも情報が取得できるようになります。

 債務者以外の第三者とは、預貯金なら銀行等の金融機関に、不動産なら登記所に、勤務先なら市町村や日本年金機構等に、裁判所が情報の提供を命じてくれるわけです。そして、裁判所に回答された情報を債権者が手に入れ、預金や不動産、給与を差押えることができます。

 ただし、財産開示手続は、プライバシーとの戦いでもあります。勤務先のようなプライバシーに関する情報を取得するためには、養育費等の支払や生命又は身体の侵害による損害賠償の支払を内容とする場合でないと、教えてもらえません。

 また、不動産に関する照会も、施行されるのは、まだしばらく先(令和元年5月17日から2年を超えない範囲で施行)で、不動産と勤務先の情報を聞き出すには、それに先だって財産開示手続を実施する必要があります。

 でも、なかなか使いやすそうな改正ですよね。

 皆さんの事務所に、「離婚したいんですけど」って相談が来たら、「公正証書で行きましょう。執行認諾文言入れておけば、後で、相手の財産も照会できますよ。転職していても一緒に職場を突き止めましょう!」という提案が可能になった、ということです。

 転職している場合には、過去3年間で財産開示手続の手続を利用していることがあっても、再度利用できることも、活きてきますね。

 ちなみに、平成31年度の民事執行法で財産開示手続の問題が出題されましたが、どのような問題だったか覚えていますか?

 第7問は、教授と学生の対話問題でした。最後に教授がシレっと聞いてきます。

 「仮執行の宣言を付した判決を有する金銭債権の債権者が財産開示手続を申し立てることは,認められていますか。」


 さぁ、学生になったつもりで、答えてみましょう。改正前と改正後で正誤が変わってしまいますね(笑)改正を意識した問題であることが分かりますよね。

 平成31年度に出ている論点なので、しばらくは出題されないと思いますが、財産開示手続や、情報取得手続は、債権法の改正によって、時効の完成猶予及び更新事由に加えられたことには注意が必要です。

 時効の問題は本試験でもよく出題されます。平成31年度は、取得時効が出題されていました。サイクル的には、今年は消滅時効の出題かな、とも思うのですが、時効の援用権者や時効の完成猶予・更新事由も、気になるところです。

 今回の民事執行法の改正事項をチェックしながら、民法の時効の完成猶予・更新事由も確認してみるといいかもしれません。

 

☜第10回「離婚します~民事執行法の改正①」はこちら            第12回「事務管理最強!?①」はこちら☞

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートする「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。





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