【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第14回「実務で分からないときは講座のテキストに戻ってみる」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 司法書士試験の受験テキストは、実務でもそのまま使えます。意外と僕の周りでも、受験のときに使っていたテキストがそのまま事務所に置かれているのをよく見ます。「あっ、この先生はこのテキストを使って勉強していたんだ~」って感じで、本棚を覗いてしまいます(笑)

 さて、今日は、記述の試験で重要となる名変の勉強です。所有権登記名義人の住所や氏名が変わった場合には、売却や抵当権の抹消の前提として、その住所、氏名を変更する必要があります。受験生では常識の知識であり、初学者にとっては、最初、難しく感じる部分でもあります。

 実務でも、住所が変わっているケースは多いわけで、その場合には、前の住所から現在の住所に変わったことが確認できる住民票の写しを添付して、住所の変更の登記をします。

 転勤等で、何回か引越をされている場合には、現在の住民票の写しに登記記録上の住所が記載されていないこともあるので、その場合には、登記記録上の住所から現在の住所までの沿革がつながるように、住民票の除票の写しや戸籍の附票の写しを集めていくことになります。

 通常は、1回だけの引越であれば、前の住所が記載されていると思うのですが、住民票の様式によっては、前の住所の記載が書かれていない場合があります。例えば、大阪市の場合には、世帯単位の様式(世帯連記式)と個人単位の様式(個人票式)の2種類があり、大阪市の同一区内の引越であれば、世帯連記式の住民票には履歴が記載されないので、この場合には個人票式を取得する必要があって、役所の窓口で、どの住所の記載が必要なのかを伝えておかないと、違う様式の住民票が出てきて「オーマイガー!」って感じになってしまいます(笑)

 さて、受験勉強のときに解きまくった住所移転の登記ですが実務に入ると、最初に悩むことが出てきます。それは、住所変更の日付。

 僕は、合格するまで実務の経験が全くなかったので、最初、住民票の見方もよく分かりませんでした。まぁ、住民票の見方自体は、実務とは関係なく、常識の範囲なのかもしれませんが…自治体ごとに住民票の写しの様式が異なるので読みづらかったりします(笑)

 住民票を確認すると、日付が2つ書かれていることに気づきます。例えば、平成28年の不動産登記法の記述の過去問では、甲野一郎が東京都から千葉県に引っ越してくるわけですが、住所を定めた年月日が平成27年9月1日、届出年月日が平成27年9月5日になっています。この場合の住所移転の原因日付はいつでしょうか?

 ………(考え中)………

 受験生の皆さんなら簡単ですね。実際に引っ越した日付である平成27年9月1日でいいわけです。届出日は関係ありません。

 氏名の変更については、その変更の日付は、結婚なら婚姻日、協議離婚なら離婚日、裁判上の離婚であれば離婚の裁判確定日、養子縁組であれば縁組日という感じで記載されているので、戸籍を見ればすぐに分かるので、こちらは悩むことはないでしょう。

 では、帰化の場合はどうでしょうか?帰化の場合には戸籍上、身分事項にはこのように記載されます。

 【帰化日】令和2年3月1日
 【届出日】令和2年3月15日
 【帰化の際の国籍】A国
 【従前の氏名】B一郎

 さて、この場合に、帰化によって、氏がB一郎からC一郎に変更された場合、登記原因の日付はどうなるでしょうか?

 悩んだときは、受験時代のテキストに戻ります(笑)ここでは、テキストの中では受験知識の網羅率が一番高い、僕が担当させてもらっている講座のテキストで確認してみましょう。テキストの氏名変更のところに記載がありました。何々…。

 原因を「令和日帰化」とすることもできない(登記研究501号P154)。

 あれ?終わり?日付は?(笑)

 受験知識としては、帰化の場合でも、原因は「氏名変更」とすべきであって、「帰化」とすることができない、というところまで覚えておけばいいということでしょう。網羅率が非常に高いテキストですが、いたずらに試験で問われない知識まで書かれているわけではないので、仕方がないです。このあたりが、受験知識と実務知識の境目のようです(笑)

 どうやら、帰化による氏名変更の登記原因の日付は、受験知識との境目のようですので、ここからは受験知識の向こう側に入っていきましょう。

 帰化日は、日本国籍の取得日であって、氏は帰化者が任意に設定できるため(大正14・1・28民事34回答)、帰化者の氏は届出によって確定した日になります。従って、戸籍の記載がされた【届出日】が登記原因の日付になります。

 さて、ここからは、受験知識のこっち側です(笑)申請書を書いてみましょう。

 登記の目的       1番登記名義人氏名変更
 登記の原因及びその日付 令和2年3月15日氏名変更
 変更後の事項      氏名 C一郎
 申請人         (住所) C一郎
 添付情報        登記原因証明情報 代理権限証明情報

 最後に、この場合の登記原因証明情報は、具体的に何を添付するでしょうか?

 登記原因証明情報の中身を具体的に特定させる問題も記述の試験では出題されているので、「受験知識のこっち側」のような気もしますが、ちょっと実務的なような気もするので、「受験知識の向こう側」にしておきます(笑)

 婚姻や離婚、縁組や帰化のように、氏名変更の場合には、それが確認できる戸籍等になりますが、本籍地記載入りの住民票も必要となります。戸籍等には住所の記載がないため、登記記録上の人物との同一性が確認できないからです。つまり、住所と氏名が登記記録上も住民票の写しも一致していて、その住民票の写しに記載されている本籍地の戸籍等から氏名変更がされている事実を確認するわけです。


 実務を始めたころは、氏名の変更だから戸籍等だけでいいのだろう…と思っていて、よく失敗したので、皆さんは合格した後、添付書類に不足がないように気を付けて下さいね。
 

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートする「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。





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