【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第17回「株式会社と合同会社のどちらをつくればいいですか?~過去問会社法H19-28を手元にご準備下さい(笑)」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 先日、銀行で決済をしているときのこと。コロナ対策で、銀行には、いろいろな張り紙がされていました。

 「できるだけマスク着用して下さい。」

 「距離をあけてお話させてもらいます。」

 「出勤者を最小限として営業しています。」などなど。

 銀行からお金が出てくるのを待っているだけだったので、ボーっと眺めていると、ふと疑問が…。

 「あれ?“最小限”って漢字は合ってるのかな?“最少限”じゃないんだ。」

 う~ん、一応、漢字検定で2級を持っているものの、漢字は苦手です(笑)

 ブログの記事を書く場合にも、意外と、漢字を調べています。まぁ、漢字を間違えてもあまり僕自身は気にならないのですが、一応、個人のブログではなく、TACのブログですから、それなりに正しい漢字を使っておかないと、TACが恥ずかしいですよね(笑)

 今回も冒頭にある「張り紙」も、「貼り紙」との違いを調べてから書くという、メンドクサイ努力をしています(笑)

 さて、先ほどの「最小限」の話。

 決済の間、コッソリと携帯で調べていました。すると、こんな説明が…。

 「反対の言葉で考えてみればいいでしょう。つまり、最小の反対は最大、最少の反対は最多。最大限はあっても、最多限はないので、“最少限”は間違いです。」

 おぉ!なんと分かりやすい説明でしょう(笑)しかも、記憶に残りやすい。

 「覚えるときに反対の言葉で覚えると記憶に残りやすいこともあるんだ。」と妙に感動してしまいました。司法書士試験も覚えることが多い試験ですから、何か、反対の言葉を覚えると記憶に残りやすく、整理ができることがないか、講師ネタとして準備できそうなものを探してみましたが、結局、何も見つからず、です。

 あっ、この話にオチや、広がる話はありません(笑)

 さて、本当は令和2年7月10日から始まる「法務局における自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度」のことや、令和元年の改正会社法にある「株式交付制度」のことも書いてみたいのですが、今年の試験で範囲になっていない知識をこの時期に書くのは、講師として、絶対にやってはいけないことですよね(笑)

 というわけで、遺言書保管のイメージキャラクターの「遺言書ほかんガルー」の話は今年の試験が終わってから書くことにして、今日は会社をつくってみようと思います。

 皆さんの事務所に依頼者がやってきました。そして、ひとこと。

 「会社をつくりたいけど、どうすればいいでしょうか?」

 では、依頼者さんに返事をしましょう。さぁ、皆さんの回答は…?

 意外と回答が難しいです。結構、法人の種類を決めていないケースも多いので、株式会社を設立したいのか、持分会社を設立したいのか、一般法人を設立したいのか、特定非営利活動法人(NPO法人)のようなものを考えているのか、そこからの探りになります。

 依頼者の方は、法人と会社という言葉を区別していないことが多いです。まずは、考えている事業内容を聴きながら、法人の種類の説明をして、どの法人がいいのか、決めていくことになります。

 そして、経験上、最後は、株式会社と合同会社のどちらを設立するかで話が止まります(笑)

 ここで、高確率で、依頼者の方から来る質問があります。

 「株式会社と合同会社のどちらをつくればいいですか?」

 では、またまた、依頼者の方に返事をしてみましょう。さぁ、皆さんの回答は…?

 皆さんは、どのようにアドバイスされましたか?僕は、この質問には、いつも即答です。

 「それは知らないですよ~。お客さんの会社ですから、(株式会社と合同会社で)どちらがいいかは、お客さんが自分で決めて下さいよ~。」

 ドン引きするような回答ですよね(笑)

 「ちゃんと依頼者の方にアドバイスしろよ!」って怒られそうです(汗)

 また、勘のいい方は、「おそらく、依頼者の方の質問は、どちらの会社にするかを決めて欲しいのではなく、それぞれのメリット、デメリットを教えて欲しいという意味で、“どちらがいい?”と質問しているだけなのでは?そんなことも分からないの?」と、僕の塩対応を一喝するかもしれません(汗)

 でも、ちょっと僕の言い訳も聴いて下さい。

 実は、僕が株式会社と合同会社のメリット・デメリットを説明すると、どうしても、合同会社の設立になって行っちゃいます(笑)

 多分、僕自身、株式会社のよさが、よく分かってないのかもしれません。

 皆さんも、今、株式会社と合同会社の違いを考えてみて下さい。ちょうど択一では、会社法H19-28で両者の設立の違いが出題されていますよね。ちょっと過去問を手元に置いて一緒に確認してみましょう。

 ・・・・・・・・(過去問準備中)・・・・・・・・

 過去問の準備はできましたか?では、肢のアからの確認です。

 アは、定款を誰が作成して、記名押印を誰がするかの問題ですが、両者に違いはないですね。ただ、問題の答えとは関係ないですが、合同会社の場合には、定款の認証が不要です。よって、すぐに定款が作成できて、スピーディーに合同会社の設立の手続きに入れます。よって、合同会社の勝ちとみます(笑)

 イは、資本金の額を定款に記載するか?ですが、両者とも記載は不要です。引き分けです。

 ウは、定款の備え置きの義務の有無の問題です。合同会社には、備え置きのようなメンドクサイ規定はありません。よって、またまた合同会社の勝利。

 エは、設立に際しての現物出資の話です。定款に当該財産を記載することに違いはないですが、そもそも、合同会社は検査役の調査が不要です。ここも問題とは関係ないですが、合同会社の勝利でしょう。

 オは、設立に際して金銭を出資する場合の話です。合同会社には銀行に払いこんで通帳をコピーするようなメンドクサイことをしなくても、領収書を出せば足ります。こちらは、商業登記法のH29-33-アで出題済みです。よって、こちらも合同会社の圧勝です。

 つまり、過去問レベルでも、合同会社の4勝0敗1分けになるわけで、どうしても、合同会社の方がいいように見えてしまいます。

 他にも、登録免許税はどうでしょう。株式会社の15万円に対して、合同会社の6万円はご存知の通りです。

 上の過去問で合同会社は、定款の認証が不要であることを書きましたが、定款の認証が不要であることは、公証役場での費用が発生しないことになり、初期費用を抑えることができます。

 また、株式会社のように、役員の任期がないので、一定期間に登記を申請する義務は生じませんから、ランニングコストも抑えられますし、登記を放置していて、株式会社のように知らない間に職権で解散されることもありません。

 また、合同会社は決算公告の義務がないので、こちらのコストも抑えられます。

 社員の責任の範囲では、どちらも有限責任なので引き分けでしょう。


 一昔前では、株式会社はしっかりしている会社で、合同会社は知名度が低い会社、という感じでしたが、今は、合同会社の知名度も高いですし、相手が株式会社だから安心、合同会社だから不安、なんてこともありません。資本金の額も、10万円くらいの合同会社で、バリバリ利益を上げている会社はいっぱいあります。

 また、株式会社のように利益や損益の割合を出資の割合に応じないで、自由に定款で割合を決めることができるのも合同会社の魅力です。

 ちなみに、会社法H28-32-1では、損益分配の割合の問題が出題されていました。

 ここまで説明すると、僕の依頼者は、ほぼ、「じゃあ~合同会社で!」となっちゃうわけです。だって、株式会社の方がいいよね~って部分が1つもナイわけで…(笑)

 一応、合同会社のデメリットも教えて欲しいと言われるのですが、僕の中でデメリットがありません。

 唯一のデメリットが知名度くらいです。そのデメリットは、事前にメリットの説明の中でつぶしている(今は合同会社の知名度は低くないと説明済み)ので、もうデメリットはないわけです。


 昔は、「株式会社のように合同会社は上場できないですよ。」なんてデメリットも説明していましたが、お客さんからは瞬殺で、「上場なんか考えてない。」って言われちゃいますし、また、合同会社の場合には、利益の配当で、社員間のトラブルが生じることがあります。

 ただ、これも瞬殺で、「社員1人でやるから大丈夫。」と言われて終わりです(笑)

 というわけで、僕の中では、「株式会社と合同会社のどちらをつくればいいですか?」という質問は、結論が先にありきのアドバイスになってしまいます。

 後で、「先生が、“合同会社にしろ!”って言ったからだ」なんてトラブルが生じることも嫌なので、法人税法上の扱いも確認してもらう必要があるからと理由を付けて、最後は、お客さんに調べてもらっています(笑)

 皆さんは、どちらの会社をお勧めしますか?僕のように偏った知識にならないように、バランスよく、受験時代から、株式会社と合同会社の比較を整理してみて下さいね。

 

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第18回「『長期間相続登記等がなされていないことの通知』~分からない知識も、分からない知識だらけになると、分かるようになる!?」はこちら☞

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートした「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。




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