【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第19回「本当はこわい!?従たる権利」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今日は、「従たる権利」を勉強してみましょう!おっ!知っているぞ!という方も多いでしょう。民法で習う、あれです(笑)まずは、ご自身のテキストで確認してみて下さい。抵当権の効力の及ぶ範囲のあたりに書かれていると思います。

 ・・・・・・・(自分のテキストで確認中)・・・・・・・

 どうでしょう。確認できましたか?

 土地を借りている賃借人が、その土地の上に所有している建物に抵当権を設定した場合の話ですね。この場合、抵当権の効力は土地の賃借権に及びます。よって、抵当権が実行されて、建物を競売で買った人は、特段の事情がない限り、建物の所有権とセットで土地の賃借権も手に入れることになります(最判昭40.5.4)。

 いわゆる「従たる権利」と呼ばれているものです。過去問でも、5回くらい出ているところです。過去問も確認しておきましょう。

 ところで、この場合、建物を買い受けた人は、土地の賃貸人である地主さんに、当然に賃借権を対抗することができますか?

 ちょっと過去問で問われている知識から外れてきたので、知識が曖昧になってきている人もいるでしょう。

 「抵当権の効力が土地の賃借権に及びますか?」という話と、「建物の買受人が地主さんに土地の賃借権を対抗できますか?」という話は、別の話ですね。

 つまり、建物の買受人は、土地の賃借権を取得しますが、当然に地主さんに土地の賃借権が対抗できるわけではなく、地主さんの承諾を得る必要があります(民法612条1項)。

 ここまでは、試験の対策として覚えておきたいところです。

 ところで、この場合に地主さんが承諾してくれなかったらどうしましょうか?


 「菓子折りを持参して、ひたすら承諾のお願いをする!」というのが正解のような気もしますが(笑)、裁判所に駆け込む手もあります。借地借家法20条1項を確認してみて下さい。

 ・・・・・・・(借地借家法20条1項を確認中)・・・・・・・

 「第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。」と書かれています。

 な~んだ!承諾がもらえないなら、裁判所が承諾に代わる許可をしてくれるのか!それだったら、安心だ!って、感じですね(笑)

 このあたりの知識は、司法書士試験の知識から、宅建試験の知識にシフトしてきた感じです。宅建試験では、誰が申し立てるのか?借地権者の申立てなのか、競売等によって借地上の建物を取得した第三者の申立てなのか、このあたりがひっかけポイントとなります。

 では、一気に実務の知識に入って行きましょう。

 実務では、あらかじめ地主さんの承諾書をもらうことが多いと思います。何のために承諾書をもらうと思いますか?


 ・・・・・・・(理由を考え中)・・・・・・・

 では、理由を学生と教授の対話問題形式で確認してみましょう(笑)

 教授: 「何のために承諾書をもらうと思いますか?」

 学生: 「そっ、それは…いざ競売になったときに、地主さんが“やっぱり承諾はしたくない!”なんてゴネ出すといけないからです。」

 教授: 「いやいや、それなら裁判所で承諾に代わる許可をもらえばいいだけなので、ゴネ出しても特に困らないと思いますが?」

 

 学生: 「しかし、裁判所で許可をもらうのも手間ですし…。」

 教授: 「いやいや、そもそも、建物に抵当権を設定するだけなのに、地主さんの承諾は関係ないでしょ!それとも、借地上の建物に抵当権を設定する場合には、法律上、地主さんの承諾がないと抵当権の設定はできないのですか?」

 

 学生: 「すみません………(そんなに怒って言わなくても…)。」


 本試験でこのような対話問題が出たらイヤですね。教授がこわくて、学生が黙ってしまうような展開。

 「もしも、対話問題の途中で突然、的を得ない学生の回答に、教授が熱くなり始めたら」って感じで書いてみました(笑)

 ちなみに、「的を得ない」じゃなくて、「的を射ない」じゃないのか?というクレームは受け付けません(笑)

 話を戻します。

 教授が最後に言っていることからも分かる通り、地主さんがあらかじめ承諾をする義務はありません。にもかかわらず、実務では、あらかじめ承諾を得ることがあります。どうしてでしょうか?

 実は、そこには、本当はこわい!?従たる権利の秘密の話が…。

 ちょっと冷静に考えてみて下さい。なぜ、建物が競売されたと思います?

 そう!きっと、建物所有者は、銀行から借りたお金を返さなかったわけです。そして、借金のカタに建物を持って行かれているわけです。

 そんなお金を返さない建物の所有者が、ちゃんと地代を払っていると思いますか?

 きっと、地主さんとも、「地代を払えないなら、建物を壊して土地から出て行ってくれ!」とトラブっているはずです。

 お気づきになりましたか?

 銀行が知らないうちに、土地の賃貸借契約が地代の不払いで解除されて、建物が壊されてしまっているかもしれないわけです。

 銀行が担保にとっていた建物は消えてしまって、「従たる権利だ!安心だ!」なんて話がウソみたいに、賃借権どころか、建物も何も残っていないことが起こりうるわけです。


 こわいですね~(笑)

 ということで、地主さんの承諾書の話でした。

 承諾書には、シレっと、「土地の賃借人が地代を滞納したら、地主さんから銀行に通知する義務」を盛り込みます。

 つまり、承諾書そのものに意味があるのではなく、シレっと盛り込んでいる通知義務が本命です。

 地代の滞納があったことを銀行に通知させることで、銀行は利害関係人として滞納した地代を弁済することができるわけで、それによって、「知らない間に建物が取り壊されていた…」なんて危険を避けられるわけです。

 なかなか奥が深いですね(笑)

 司法書士としては、将来トラブルにならないよう、承諾書に隠された秘密をしっかり伝えた方がいいと思っています。

 これが、本当はこわい!?従たる権利の話である。
 (最後は、乙ちゃんブログ風に締めてみました。笑)

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートした「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。




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