【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第22回「涙あり、笑いありの終活」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今日は、死後事務委任契約の話を書いてみましょう。

 死後事務委任契約自体は、独占的に司法書士に与えられた業務ではないですが、死後事務委任契約を結んでいる司法書士も多いと思います。僕も、死後事務委任契約の依頼が多いです。

 そもそも死後事務委任契約とは何か?ここから話を進めます。

 最近、自分が死んだ後のこと、いわゆる「終活」を考える方が増えてきているように思います。

 例えば、自分が死んだ後、「どこでお葬式をしてもらいたい」とか、「お墓をどうしてほしい」とか、「誰に連絡を入れて欲しい」とか、いろいろな希望があったりします。

 また、自分が死んだ後の遺品の整理であったり、役所等への届出や、健康保険や年金の資格喪失の手続きなど、家族が遠方に住んでいたり、親族と疎遠になっている場合には、自分が死んだ後、手続きをきちんとしてくれるか、心配になる方も多いようです。

 僕のようにブログを書いていると、自分が死んだ後、「ブログを削除して欲しい」なんて希望を残すかもしれません(笑)

 一般に、自分が死んだ後の希望として遺言を残すことが多いです。

 ただ、遺言でできることは法定されています。すでに民法を勉強されている方は、①遺言のみですることができる事項、②遺言でも生前行為でもできる事項、というように整理されて覚えられている方も多いと思います。

 例えば、未成年後見人の指定や、相続分の指定は遺言によってのみできます。それに対して、認知や推定相続人の廃除は遺言でも生前行為でもできます。今書いた例はすべて、民法の過去問で出題されている内容なので、「えっ?」ってなった方は、テキストを見直しておきましょう。


 このように遺言の場合には、遺言ができる内容が法定されているため、それ以外の事項、例えば、「パソコンのデータを消しておいてくれ」なんてことは、遺言に書いても効力がないわけです。

 もちろん、遺言の中で、法定されている事項以外の内容を付言事項として書くことは自由です。家族への感謝の気持ちや、遺言を書いた経緯、お願い事を書くことがあります。

 よくある、「今までありがとう。家族みんな仲良くするんだよ。」といった言葉です。ケースによっては、遺言の経緯を書いて、他の相続人からの遺留分侵害額請求をしないように盛り込むこともあります。

 ただ、法的効力がないので、おまけみたいなものになってしまいます。

 最初に書いた、行政官庁等への届出や葬儀、納骨に関することもそうです。遺言に書ける内容ではありません。また、老人ホームや病院への支払が残っている場合に、遺言に「払っといてね」と書いても、相続人でない人が役所等に行っても相手にしてくれない可能性があるわけです。

 相続人が死後の事務手続をやってくれたら済む話なのですが、そこには、いろいろな大人の事情があります。最初に書いたように、相続人が遠方の場合もあれば、相続人と仲が悪い場合もあるでしょう。腹違いの兄弟が相続人のため連絡をとって欲しくないケースもがあるかもしれません。

 そのような不安を解消するのが、死後事務委任契約です。

 生前に、死後の事務手続をお願いしたい人と、契約を結んでおいて、あらかじめお願いしておくわけです。
お願いする相手は、特に決まりはないので、友達でも、近所の人でもいいわけですが、トラブルを避けるため、司法書士のような専門職と契約することも多いです。

 死後の事務を処理する場合には、費用もかかるので、あらかじめ「預託金」としてお金を預かることがあります。お金を預かるということはトラブルを生じる可能性も出てくるので、司法書士のような専門職と契約する方が、安心できることも多いわけです。

 ところで、委任契約って、当事者が死亡した場合には、終了しませんでしたっけ?

 民法653条を確認してみましょう。


 ………(条文確認中)………

 委任の終了事由として、1号には「委任者又は受任者の死亡」と書かれています。

 あれ?契約しても、死んじゃったら、委任契約は終了?あれ、意味がない?でも、死後の事務の委任ができる?あれ、どうして?って、感じになりますよね(笑)

 判例は、この規定を任意規定と考えています。つまり、当事者の合意によって、この規定を排除できるわけです。


 最高裁として、平成4年に「死後事務委任契約」を認めています。

 僕も、「終活」の相談を受けたときは、遺言書の作成と、遺言でカバーできない部分を「死後事務委任契約」で補うパターンをアドバイスすることが多いです。

 仕事としては、自分が遺言執行者になって、死後事務委任契約の受任者として契約を結ぶことが、一番実入りがあるのですが、そこは、遺言者の最終の意思が最優先です。一番安心できる内容で、じっくりお話を伺うようにしています。

 遺言は厳格な要式行為なので、財産の処分については、紛争を防止するという点で安心感がありますが、遺言できる事項が法定されているため、遺言者の遺志をきめ細かく反映させることができないデメリットがあります。

 それに対して、死後事務委任契約は、不要式の行為なので、故人の遺志をきめ細かく尊重できますが、契約がきちんと履行されるか、かなりリスクが残ると思います。
死後事務委任契約書は私文書でもいいので、私文書となると、相続人とのトラブルも発生するかもしれませんし、役所等も私文書では相手にしてれない可能性もでてきます。なので、僕は死後事務委任契約については、私文書と公正証書を使い分けています。

 後々、トラブルを生じるかもしれないと、少しでも心配なことがあるのであれば、公正証書で死後事務委任契約書を作成しています。

 「遺言書」も「死後事務委任契約書」も、メリット、デメリットがあるわけで、司法書士としては、このバランスを取りながら、故人の生前の意思をどこまで確実に実現させてあげられるかが、腕の見せ所だと思っています(笑)

 個人的には、遺言の作成や死後事務委任契約の作成を依頼された場合には、できるだけ時間をかけて、ゆっくりとお話を伺うようにしています。


 その人のこれまでの人生をいろいろ聞かされることも多く、涙あり、笑いありの打ち合わせになります。

 「終活」の打ち合わせの中で、「最後に先生に会えてよかったわ」なんて声をかけてくれた方もおられます。「長生きしてくださいね~」とは返しましたが、ちょっと、ウルっと来ました。意外と、心に響く言葉でした。

 皆さんも、合格した後、「終活」の相談に乗ることがあるかもしれません。

 死後の事務の手続をお願いされてくるくらいなので、普段から相続人等とは、会話も少なく、寂しい思いをされている方も多いと思います。

 きっと、涙あり、笑いありの打ち合わせになることでしょう。しっかりと寄り添って、お話をじっくり伺ってみるのも楽しい経験となると思うので、ぜひ。

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートした「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。