【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第23回「家族信託」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今回は、前回のテーマ、「終活」のお話ともつながるのですが、「家族信託」の一つの場面をご紹介してみようと思います。

 「一つの場面」という書き方をしたのは、家族信託の可能性としては本当に広いです。誤解をおそれずに書くと、家族信託の可能性は無限大です。遺言書でカバーできない部分も含めて、オーダーメイド的に、認知症対策や、遺留分対策、相続対策として承継者を選択したり、信託の中で遺言的な機能を盛り込んだりと、司法書士のような専門職がオーダーメイド信託を提案できれば、柔軟な終活を一緒に考えていけるようになります。一人暮らしの方が、自分が死んだあとに、ペットをどうしたいのか、のようなペットに関する信託まであるくらいです。

 本当に、家族信託は、司法書士の関わりとしても、可能性が大きいと思います。

 司法書士試験の知識としては、「自己信託」という言葉が出てくると思います。これも「家族信託」の一つの場面で使われます。

 例えば、高齢の母親が一人で、障害を持っている子を一人で面倒を見ているような場合、自分が亡くなった後、障害を持っている子を周りがサポートしてくれるか心配になると思います。

 障害を持っている子に、兄弟がいて、例えば、お兄ちゃんに、「お母さんが死んだ後は、ちゃんと(障害を持っている)弟の面倒を見てね。」と、お兄ちゃんに負担付遺贈をしても、弟の生活費として使うべき財産を、お兄ちゃんが全部、自分で使ってしまうかもしれません。

 かといって、今、(障害を持っている)弟に財産を贈与しても、障害を持っていると、弟本人では、管理が困難かもしれません。

 このような場面で、自己信託が登場してきます。お母さんが、委託者兼受託者となって、(障害を持っている)子の財産を代わりに管理していくわけですね。

 実務上、よくご相談があるのが、おじいちゃん、おばあちゃんが、一人暮らしで、その家をどうしようか、という問題。


 ちょっと前だと、朝のワイドショーなんかで、「家族信託」の特集なんかもあったらしく、「家族信託」は一時期ブームでした。特集があったのを知っているのは、身内から相談があったからです。「ワイドショーの家族信託を見て、家族信託をしたいんだけど…」って身内から(笑)

 特集では、主に認知症対策だったようです。例えば、高齢になった、おじいちゃん、おばあちゃんの自宅の話。

 できるだけ長く、住み慣れた家で生活して欲しいという希望は、誰しも望むところでしょう。実際、住み慣れた家で、子供たちが、自分の親であるおじいちゃん、おばあちゃんの面倒を見られたらいいのですが、子供たちが独立して家庭を持ち、実家から離れてしまっていると、近くで様子を見ながら面倒をみるというわけにもいきません。

 できるだけ長く自宅にいてもらって、寂しくなって来たら、自宅を売却して、そのお金で、タイミングよく老人ホームのような施設に入って、友達を作ってもらう、なんてことを考えるのですが、

 問題は、認知症対策。

 僕も仕事柄、認知症の方にはよくお会いするのですが、突然、認知症の症状が出てくることもあるようです。

 認知症になって、誰かが面倒を見ないと生活が困難な状態になってから、特別養護老人ホームに入ろうと思っても、家の売却に時間がかかります。

 まず、後見開始の審判の申立てが必要です。戸籍や住民票を集めたり、お医者さんから診断書を出してもらったり、本人の財産や収支に関する資料を集めたりするのに1か月近くかかります。

 そこから、家庭裁判所で面談とかもしていると、後見開始の審判がでるまでに、2か月近くかかってしまいます。

 そして、その後、成年後見人が代理して売却するわけですが、ここで、もう一つ問題がありますよね。しっかりと勉強されている皆さんなら大丈夫だと思います。何ですか?

 ………(考え中)………

 そう!居住用財産の売却になるので、家庭裁判所の許可が必要ですよね。サクッと回答できた猛者の方は、不動産登記の記述の過去問(H30)を確認しておくといいと思います。居住用財産ではないですが、成年後見人が代理する問題が出題されています。

 ということで、認知症になってから売却となると、時間がかかってしまいます。今のうちに、土地と建物の名義を、子供たちに変えておくことも考えられますが、贈与税の問題はもちろん、不動産取得税や、固定資産税、登記するにも登録免許税、その後の売却を考えると譲渡所得税等、不動産が動くと、お金の話もついてまわります。そもそも、誰の名義にするかで、子供たちの間で、争いが生じるかもしれません。

 このような場合、家族信託は、一つの提案となります。

 不動産の名義を受託者名義にしておいて、特別養護老人ホームに入るタイミングで、受託者が土地と建物を売却、売買代金は、受託者が管理する口座に入れることで、引き続き、受託者は特別養護老人ホームの費用等を、その口座から支払っていくことになります。

 意外と、スムーズに手続きが進められることが分かります。なので、朝のワイドショーで紹介されるのも納得ですし、僕の身内がそれを見て、すぐに連絡してくるのも納得です(笑)

 信託は最初のプランだけでなく、終了事由となる終わりのプランも決めておくことが重要です。それだけに、自由に設計できる幅も広がっていくので、司法書士のプランの提案力が勝負になります。ちょっと面白そうじゃないですか?

 家族信託は、まだまだ、これから増えていく分野だと思います。皆さんが合格された後、「終活」の中での一つの提案として、家族信託でのプランを説明できるようにしておくと、お仕事の幅もグッと広がって、お客さんも喜んでもらえるかもしれません。


 ということで、今のうちに、「信託の登記」を得意にしておきましょうね!(笑)

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートした「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。