【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第25回「イメージトレーニングは争続?妻も大切。子供も大切。でも…。」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 イメージトレーニング。とても大切なことです。この記事が出るのは、9月1日。本試験まで1か月を切りました。本番に向けて、今までの自分の努力が実を結ぶイメージを持ちながら、1日、1日を大切に頑張って下さい。

 さて、僕の方も最近イメージトレーニング中です。何の?(笑)

 先日、法務局から「配偶者居住権の登記申請書の様式と記載例」が公表されました。ご存知の通り、配偶者居住権は令和2年4月1日にスタートした新しい制度です。

 「配偶者が亡くなっても、住み慣れた自宅でずっと暮らしていきたい」という希望を叶える制度ですね。

 まず最初に、配偶者居住権を簡単に確認しておきましょう。例えば、被相続人が、2000万円の自宅と2000万円の預貯金を残して亡くなったとしましょう。相続人は配偶者の妻と子、その2人です。自宅と預貯金を合計すると4000万円ですから、相続人である配偶者と子は、それぞれ2分の1を取得するわけです。

 ここで、残された妻は、今まで通り、住み慣れた自宅でずっと暮らしたいと思い、遺産分割協議で自宅(2000万円)を取得すると、子が預貯金(2000万円)を取得することになり、残された妻は自宅を手に入れたものの、現金がなく生活費に困るおそれが生じます。

 このような不都合を解消するため、子に負担付の所有権を取得させ、相続人である妻に亡くなるまで又は一定期間無償で建物を使用する権利を設定し(配偶者居住権)、その配偶者居住権の価値を評価するところから始まります。

 例えば、配偶者居住権の価値が1000万円と評価されるのであれば、相続人である妻は、配偶者居住権(1000万円)と預貯金(1000万円)の合計2000万円を取得することで、配偶者は、住み慣れた自宅で住み続ける権利を確保しながら、生活費にも困らないようにすることができるわけです。

 小難しいことを書きましたが、要は、遺産の中でも自宅は価値が大きいはずなので、遺産分割の中で自宅を配偶者が取得してしまうと、現金が手に入らないことになって困っちゃうよ、ってことです。

 司法書士としては、新しくできた制度で、かつ、登記が生じるので、いつご依頼が来てもいいように、配偶者居住権の登記の制度の趣旨、メリット、デメリットを分かりやすく説明できるようにしておきたいものです。

 また、ケースによっては、遺言や相続手続の相談の中で、「こんなもの(配偶者居住権の登記)もありますよ。」とタイミングよくご紹介できるのも理想でしょう。

 というわけで、配偶者居住権の登記の相談のイメージトレーニング中です(笑)

 ただ、このイメージトレーニングが難しい…。

 そもそも、僕は、配偶者居住権の必要性がよく分かりません(笑)

 確かに、僕は、配偶者居住権の説明もできますし、メリットやデメリット(配偶者居住権の譲渡ができないのが1番のデメリットでしょう)も分かります。

 でも、上で書いた通り、配偶者居住権は、住み慣れた自宅で、生活費も困らないように、という制度なので、最初から子が「お母さん、家はずっとお母さんが住みなよ。登記もお母さんの名義でいいんじゃないかな。現金?それもお母さんが全部もらったらいいよ。僕は何もいらないから。遺産分割協議書に、お父さんの財産は全てお母さんが取得するって書いておきなよ。」って言えば解決しちゃいます。

 何が言いたいかというと、子が母親を思いやる気持ちがあれば、配偶者居住権は必要がないような気がします(笑)

 僕が今まで受けた案件のほとんどが、すんなりお母さんが全部取得するという話になることが多いです。


 ということは、配偶者居住権が登場するのは、母と子が、相続で争っている、いわゆる「争続」を想定してイメージトレーニングを積んでおく必要があるのでしょうか?意外とハードなイメージトレーニングになります(笑)

 あっ、そんなことを考えていると、事務所に男性のお客さんが来られたみたいです。

お客さん: 「すみません。遺言のことで相談があるのですが…。」

 僕  : 「どういったことでしょうか?」

お客さん: 「実は、遺言を書こうと思っているのですが…。」


 どうやらこの男性のお客さん、ちょっと悩んでいることがあるみたいです。皆さんも一緒に、相談にのってもらえますか?

 お客さんの話では、このような内容です。ちょっと長いですが、一緒にアドバイスしてもらえたらと思います。

【お客さんから聴取した内容】
 現在、私は、妻と2人で私名義の自宅に住んでいます。今の妻とは再婚で子供はいませんが、離婚した前の妻との間に、子供が1人います。
 私が再婚で、子供もいるという理由もあってか、今の妻と再婚する際、妻の両親からは強い反対があって、妻の両親とは折り合いが悪く、付き合いも全くありません。
 私は、自分が亡くなった後、身内の反対を押し切って一緒になってくれた今の妻には、住み慣れた自宅で安心して住み続けて欲しいと思っています。妻が生活に困らない程度の預貯金くらいはあると思います。ただ、子供にも父親として財産を残してあげたい気持ちもあります。
 そこで相談なのですが、「私が死んだ後、いったん自宅を妻に相続させて、その後、妻が亡くなった後は、私の子供が自宅を相続する。」という内容の遺言書を書くことは可能でしょうか?妻が相続したあと、私たちの間には子供がいないので、妻の両親がいずれ私の自宅を妻から相続するのでは?と聞いて、心配になって相談に来ました。


では、皆さんからアドバイスを…。


………(アドバイスを考え中)………

 どうでしょうか?このような遺言は難しそうですね。何かいい案はありましたか?

 今回のケースは「後継ぎ遺贈」と呼ばれるものです。自分の相続人である妻に相続させた後の次の相続の取得先を決めるものです。「後継ぎ遺贈」については、その効力に疑義が生じると思います(無効とするのが有力だと思います)。

 従って、今回、この男性が亡くなった後、妻に自宅を相続させてしまうと、次に妻が亡くなった後は、妻の両親、あるいは先に妻の両親が亡くなっていれば、妻の兄弟姉妹に相続されることになります。つまり、この男性の子は自宅が取得できないわけです。

 これは困った…どうしたものか…。

 えっ?いい方法がある?今こそ、イメージトレーニングの成果だ!?(笑)

 バレましたか…。そう、この場合には、自宅の所有権を子に負担付で相続させて、妻には配偶者居住権を設定すればいいわけです。そうすれば、妻が自宅に住み続けること、子が家を取得することを叶えることができるわけですよね。

 配偶者居住権の利用の仕方のイメージトレーニングとしては、このような「後継ぎ遺贈」としての利用があると思います。

 僕の勘では、「争続」案件よりも、「妻も大切。子供も大切。でも…妻の身内に相続させたくない」案件が来そうな予感(笑)

 ただ、実際は、配偶者居住権の利用は、配偶者の死亡時の相続税の節税として利用される場面が多いんだろうな、と思います。相談も、この点での相談が多くなりそうです。でも、税金の話になってしまうと、僕のイメージトレーニングのキャパは超えてしまうので、配偶者居住権の登記の依頼が来るのは、まだまだ先かもしれません(笑)

 受験生の皆さんは、今年の本試験の対策としては、配偶者居住権の登記の登録免許税はしっかりと押さえておきましょう!

 では、本試験まであと少し!悔いが残らいないよう、全力で頑張って下さい。

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、今年から新たにスタートした「基礎総合コース」の他、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。