【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第38回「実務目線の不動産登記記述式
問題予想」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 僕が担当している講座では、基礎講座の講義も、民法が終了し、不動産登記法に突入しました。

 初めて不動産登記法を学習された方は、その難しさにびっくりされた方もおられたかもしれません。手続法なので、最初はルールを覚えるのが大変ですが、慣れてしまえば、圧倒的な得点源にできる科目です。

 慣れるまでちょっとだけ時間がかかりますが、一気に得意科目にできる日がやってくるので、その日を楽しみに待ちながら勉強を進めて下さい!

 さて、今日は、実務的な視点から、不動産登記法の記述式の出題予想をしてみようと思います(笑)

 毎年、不動産登記法の記述式問題の出題予想の中にあげられる論点の一つとして、「持分放棄」があるかと思います。

 理由は簡単で、択一式試験で、まるまる一問で問われる大きな論点だからです。そういえば、昨年、令和2年も第18問目で「持分放棄」が出題されていました。

 その前は、平成19年に、やはり、まるまる1問、「持分放棄」の問題が出題されています。

 従って、択一式試験で、まるまる1問出題される論点なのに、記述式試験で出題がないのは要注意だ!という話になるわけです(笑)

 「持分放棄」の出題を準備されている方は、しっかりと論点の対策ができていると思いますが、「持分放棄」と言えば、何に注意するんでしたっけ?

 大丈夫ですよね?

 では、大きな声で言ってみましょう!「持分放棄」と言えば、気をつける論点は…せ~のっ!

 あれ?声が少ないですよ!?不安な方は、午後の択一式試験H19-27-エを確認してみましょう!

 ・・・・・・・(確認中)・・・・・・・

 さて、スッキリしましたね!そう!権利者側の名変です!

 登記義務者の住所が登記記録上の住所と異なるときに住所の変更があるのは当たり前!さらに「持分放棄」では、登記権利者側の住所が登記記録上の住所と異なる場合にも住所の変更が必要となります。

 「持分放棄」を記述式の試験で出題するということは、この権利者側の名変を問いたい!と言っても過言ではありません。

 最近は、登記原因証明情報の内容として、「登記の原因となる事実又は法律行為」欄を記載させる問題が出題されることがありますが、持分放棄の場合には、どのように書くのでしょうか?ちょっと考えてみましょう。

 せっかくなので事例を設定しましょう。

【事例】
 A、B、C各3分の1の共有で、Aがその持分の全部を、令和3年3月16日放棄した。

 さて、どうでしょう。「持分放棄」は、「贈与」のように、相手方の受諾が必要とならないところがポイントです。こんな感じですね。

【登記の原因となる事実又は法律行為】
(1)本件不動産は、A、B、C各3分の1の共有である。令和3年3月16日、Aは、BCに対して、その持分の全部を放棄した。
(2)よって、同日、Aから、BCに各6分の1の持分が移転した。

 シンプルですね~(笑)

 さて、ここまで書いて、えっ!?って、なりますが、僕は「持分放棄」の論点は記述式の試験では出ないと思っています。いや…思っていました(笑)

 理由は、実務上、あまり見ないから。ちょっとリアリティに欠けるんですよね。

 実務上、共有関係を解消するような場面はありますが、どうしても、実際の現場では、税金の話がついてまわります。

 例えば、AとBの共有で、Aがその持分をBに譲る場合、売買がいいのか、贈与がいいのか、持分放棄がいいのか、贈与税や、不動産取得税、譲渡所得税等、将来の売却も見据えて、その選択をすることになります。

 その選択の中で持分放棄を選ぶメリットがないんですよね。いや、なかったんです、今までは…。

 ところが、先日、こんな案件が…。守秘義務があるので、かなり事例は変えています。

 ある田舎での出来事。不動産の登記名義人Xさんが亡くなり、その子、Aさん、Bさん、Cさんの3人が相続人でした。田舎の不動産なので誰もイラナイといって、放置されて、子供たちの間では、不動産の押し付け合い。それでも、当然、固定資産税の通知が市役所から届いてしまうため、とりあえず、相続登記だけは早くしておこうと、各3分の1の持分で法定相続しました。しかし、登記記録上、一番上に記載されているAさんに固定資産税の納付通知書が届き、ずっとAさんだけが固定資産税を払わされて、Bさん、Cさんは全く払う気がありません。話し合おうにも、話も聞こうともしません。田舎の不動産で価値があるわけでもなく、また、誰も住んでおらず、これからも住む予定がないので、みんな興味がないわけです。誰かに売りたいけど、売り手もつかず、贈与でもらってくれる人もいない。埒が明かないので、Aさんは、不動産の持分全部を放棄したいと考え、「持分放棄」をすることにしました。

 さて、どうでしょう。まさに、自分の持分はイラナイという持分放棄そのものです(笑)

 今回のケースでは、Aさんの話を、Bさんも、Cさんも聞いてくれないわけです。よって、Aさんが自分の持分を、Bさんや、Cさんに、売買あるいは贈与で話を持ち掛けても取り合ってくれないでしょう。でも、「持分放棄」なら、相手方の受諾が必要ないので、Aさんの単独の意思表示で大丈夫です。

 また、登記手続きについても、判決による登記で、いわゆる「登記引取請求訴訟」で権利者側の意思擬制をすれば、Aさんは単独で登記手続きができます。

 なかなか持分放棄も使えるじゃないか…と思える瞬間でした。

 さて、この「持分放棄」からの「登記引取請求訴訟」による判決による登記の流れ、出題予想としてはいかがでしょうか?(笑)

 実務目線からの出題予想として、また、持分放棄のリアルとして、参考にしてもらえたらと思います。

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「基礎総合コース」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。