【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第39回「死亡届の落とし穴①」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今日は、「死亡届」のお話。

 「死亡届」って聞いたら、ついつい続けて、「1通」って、勝手に手が動いて書きそうになります。だって、記述式の問題を解いたときに書きますよね。司法書士試験受験生の“あるある”のような気がするのですが、皆さんはどうでしょうか?(笑)

 商業登記法の記述式の問題で、よく出てくる「死亡届」ですが、試験との関係では、死亡を確認する書面は、「死亡届」に限られず、戸籍等でも確認できるので、「死亡届 1通」と決めつけて書かないようにして下さいね。

 試験で出てくる「死亡届」は、実務と同様、ご親族の方が「貴社の取締役〇〇〇〇は,令和〇年〇月〇日死亡いたしましたので,お届けいたします。」みたいな感じで書いてもらって、認印を押してもらうものです。

 たまに、役所に届け出た「死亡届」を持って来られる方がおられますが、「死亡届」は、「死亡診断書」と一体となって、死亡の原因、死亡の種類等、個人情報が書かれているので、役所から発行されている「死亡届」は受け取らないようにしています。

 ところで、この役所に届け出て受け取る「死亡届」ですが、誰が、どこに出すのか、ご存知でしょうか?

 戸籍法に規定があるわけですが、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)に、死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市役所,区役所又は町村役場に届け出ることになります。

 昨今、「おひとり様葬」という言葉もあるように、ご親族に迷惑がかからないよう、自分が亡くなった後の手続きをご依頼される方が多くなっています。

 迷惑をかけたくない理由は、親族が疎遠になっていることや、遠方に住んでいる、仲が悪い等、本当に様々な理由があります。また、本当に相続人もおられず、独り身の方もおられます。

 司法書士もまた、このブログでも何度か書いているように「死後事務委任契約」という形で、それぞれの終活のご相談にのることも多いです。

 さて、以前からちょこちょこ出てくる「死後事務委任契約」ですが、ここに大きな落とし穴があるのをご存知でしょうか?同時にそれは、死亡届の落とし穴でもあります。これを知らなかったら、目も当てられない状態になるので、合格した後、死後事務委任契約も締結することを考えておられる方は、注意が必要です。

 契約書の中に記載する死後事務委任契約の内容として、「行政官庁等への諸届け事務」と書かれることが多いですが、たまに、より具体的に、「行政官庁等への、死亡届、埋葬許可申請等の諸届け事務」と書かれた死後事務委任契約書を見ることがあります。

 皆さんも、ネット等で、「死後事務委任契約 ひな形」で検索してみて下さい。意外と具体的に書かれています。

 ここで落とし穴となるのが、「死亡届」です。そもそも、死亡届が提出されなかったら、せっかくの死後事務委任契約も始まりません。つまり、死後事務委任契約で真っ先にすべきなのが、「死亡届」の提出になるわけです。

 ところが、死亡届は提出できる者が法定されています。戸籍法87条です。ちょっと見てみましょう。

 第87条 次の者は、その順序に従って、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
 第一 同居の親族
 第二 その他の同居者
 第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
 ② 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。

 つまり、届出できるのは、「親族,同居者,家主,地主,家屋管理人,土地管理人等,後見人,保佐人,補助人,任意後見人,任意後見受任者」に限られます。

 ほら、死後事務委任契約の受任者が入ってないでしょ?

 死後事務委任契約書を公正証書で作成して、しっかりと「行政官庁等への、死亡届、埋葬許可申請等の諸届け事務」と、「死亡届」と明記していても、そもそも提出できないわけです。

 「死亡届」が提出できないと、「埋(火)葬許可証」が出ないので、埋葬・火葬もできないわけです。これは困った…。ここに死後事務委任契約の大きな落とし穴があるわけです。

 ネットで見かけるひな形に「死亡届」が入っているのは、そもそも知らないでネットにひな形をのせているか、実際の現場を知らないのか、後で述べる他の方法を併用している可能性があります。

 他の方法を併用?

 ちょっと気になりますよね(笑)でも、とりあえず、先に「死亡届」の話を続けます。

 自治体によっては、死後事務委任契約の受任者による死亡届の提出に対して柔軟に対応されているとの話もウワサもあったりしますが、死亡届の「届出人」欄には、1~12までの届け出できる人が並んでいて、チェックボックスがあって、チェックするようになっているので、「受付できません。」と言われたら終わりです。

 このような感じです。

 1同居の親族 2同居していない親族 3同居者 4家主
 5地主 6家屋管理人 7土地管理人 8公設所の長
 9後見人 10保佐人 11補助人 12任意後見人

 ほら、「死後事務委任契約の受任者」って、チェックボックスがないでしょ。

 また、「13その他(     )」みたいな欄もないので、交渉の余地もなく、どうしようもないわけです。

 仮に、「13本人」って欄があれば、死後事務委任契約は、本人が死亡しても本人からの委任自体が生きているので、その権限で死亡届の提出の代理ができるのでしょうが、本人が死亡届の届出人として書かれることはないですよね。あれば、ちょっとしたホラーです(笑)

 ちなみに、「任意後見受任者」については、もともと届出人の資格には入っていなかったのですが、令和元年6月20日から、「任意後見受任者」も含む戸籍法の一部改正が施行され、メンバーに加わりました。

 「8公設所の長」は、病院長などになります。

 このように、「死亡届」が出せる人って、厳格なんですよね。

 受験生の皆さんの感覚で言えば、所有権保存の申請人って、厳格になっているでしょ。それと同じ。他の人はできないわけです。

 このように、死後事務委任契約の受任者は、死亡届は出せません。死亡届を出せるのが、親族等となってしまうと、せっかくの「おひとり様葬」でご親族に迷惑をかけたくないと考えていたはずが、最初からご親族の協力が必要となってしまうわけです。

 結局、独り身の方だと、生活保護の受給の有無や、警察案件か否か等の影響もありますが、死亡届を出すだけで一苦労なわけです。

 これだと、せっかくの死後事務委任契約も、何もできない状態に陥ってしまう可能性があります。

 じゃあ、どうすればいいのか?最初から、落とし穴があるのが分かっているのであれば、事前に手を打つ方法もあるはずです。

 それは、記事が長くなってきたので、次回の記事で(笑)

 事前に何か併用するのでは?と思った方はスルドイ!

 次回の記事を楽しみにお待ち下さい!

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「基礎総合コース」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。