【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第40回「死亡届の落とし穴②」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 前回からの続きになります。

 「死亡届」が提出できず、死後事務委任契約を締結したものの、何もできない状態になってしまう、落とし穴のお話でした。

 さて、では、どうすればいいのか?気になりますよね(笑)

 答えは簡単です。

 死亡届の「届出人」欄の1~12までの届け出できる人のいずれかになればいいわけです。

 さて、どれにしましょうか?(笑)チェックボックスを、もう一度、確認してみましょう。

 1同居の親族 2同居していない親族 3同居者 4家主
 5地主 6家屋管理人 7土地管理人 8公設所の長
 9後見人 10保佐人 11補助人 12任意後見人

 9~12あたりでしょう。

 ただ、9~11の場合には、後見開始の審判等を申し立てるのにあたり、お医者さんの診断書など、準備に時間がかかります。

 また、そもそも後見開始の審判等を申し立てるタイミングで、死後事務委任契約を締結することは契約の効力の有効性の問題も生じてしまいます。

 よって、通常は、12の任意後見人になるために、準備をすることになります。

 受験生の皆さんには、任意後見制度は馴染みがないですよね。

 任意後見制度とは、ご本人さんの判断能力がまだ衰えていない時期に、将来、判断能力が衰えた場合に備えて、あらかじめ支援してもらう人(任意後見人)を定めて置く制度です。

 今は、判断能力がしっかりしていて、「大丈夫!」と思っていても、いつ、どうなるかは分かりません。

 将来の判断能力の低下に備えて、今から手を打っておくわけです。

 任意後見制度を利用する場合には、任意後見契約書を作成して、必ず、公証役場で公正証書を作成する必要があります。ちなみに、死後事務委任契約書は公正証書で作成する必要はありませんが、公正証書で作成した方が、死後の手続きのトラブルが生じにくいと思います。

 任意後見契約書の中で、将来、ご本人さんの判断能力が衰えた場合に、任意後見人となる人のできること(委任事務の範囲)を定めて、その後見事務の処理のための代理権を与えることになります。

 そして、その内容(本人、任意後見受任者、代理権の範囲)は、登記されます。

 今は、まだ判断能力しっかりしている状態なので、「登記される。」なんて聞くと、ご本人さんも驚かれるかもしれません。

 でも実は、この段階では、まだ、任意後見契約の効力は発生していません。立場的にも、任意後見人ではなく、任意後見受任者という資格です。

 将来、ご本人さんの判断能力の衰えが現れ始めた場合に、家庭裁判所に任意後見人を監督する任意後見監督人を選んでもらうよう申立てをすることになって、家庭裁判所で任意後見監督人が選ばれて初めて、任意後見契約の効力が生じます。

 要するに、万が一に備えているわけで、判断能力が衰えなかった場合には、任意後見契約は何の効力もないわけで、そのようなケースも多いと思います。

 統計を見ても、任意後見契約の締結1万4000件くらいに対して、実際に、任意後見監督人の選任を申し立てが700件弱くらいなので、ほとんどのケースが、任意後見人になることなく、任意後見受任者で終わることが分かります。

 さて、「死亡届」の話に戻します。

「死亡届」が提出できるメンバーの中に、「12任意後見人」が記載されています。現状、ご本人さんの判断能力がしっかりされているのあれば、「死後事務委任契約」と、万が一に備えて、「任意後見契約」もダブルで締結しておけばいいわけです。

 そうすることで、死後事務委任契約の中にある「死亡届」の提出の事務の問題もクリアできて、ご本人さんの死亡後、問題なく死後の事務処理を行うことがきます。

 ただ、判断能力が衰えた場合には、家庭裁判所から後見契約監督人が選ばれる旨はしっかりお伝えしておく必要があります。

 任意後見人の報酬に加えて、将来、任意後見監督人の報酬も発生するおそれがあるので、お金の話はきちんと伝えておきましょう。

 ちなみに、家庭裁判所から後見監督人が選ばれると、「本人、任意後見人、任意後見監督人、代理権の範囲」が登記されます。

 任意後見人は、法務局で、登記事項証明書を取得して、自らの代理権を証明していくことになります。

 上で書いた通り、任意後見契約の締結があっても、そのほとんどが、任意後見受任者の立場で終了することになるので、令和元年に、戸籍法の一部を改正して、任意後見受任者も死亡届が提出できるようになりました。

 これで、任意後見契約さえ締結しておけば、受任者の立場で死亡届が提出できるので安心ですね。

 この「死亡届」のお話は、個人的には、死後事務委任契約の盲点だと思っています。

 後で、「こんなはずじゃなかった…。」と慌てることがないよう、自分でもいろいろと勉強しておく必要がありますし、また、それを教えてくれる仲間が必要になると思います。合格した後、いろいろと相談できる仲間も作って下さいね。

 

☜第39回「死亡届の落とし穴①」はこちら

 

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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「基礎総合コース」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。