【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第48回「ここが変わるよ。不動産登記法(その1)」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 以前もお話したように、「司法書士の未来は明るい」です。

 そう!今回は、相続登記・住所変更の登記申請の義務化が予定されている不動産登記制度の見直しのお話です。不動産登記法の改正は、これだけはなく、休眠担保権の抹消登記の簡略化、法人が登記名義人になる場合の会社法人等番号の登記の話なんかもあったりします。

 また、民法の物権法でも、共有制度の見直しや、相隣関係規定の見直しもあったりして、司法書士として、試験的にも、実務的にも重要です。

 物権法の分野の改正だけでなく、相続法の分野でも、財産管理制度の見直しや、遺産分割に関する規律の見直しもあって、例えば、相続開始から10年を経過してしまうと、遺産分割に特別受益の規定や寄与分の規定が原則として適用されないことになります(改正民法904条の3柱書)。

(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第904条の3 前3条の規定(特別受益者の相続分・寄与分)は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、…(略)。

 こんな規定ができてしまうと、特別受益者から、「10年間は遺産分割から逃げたい。」なんて相談が来るかもしれません(苦笑)

 さらに、相続した土地の国庫への帰属を可能とする制度も創設され、司法書士としては、お客さんからの相談が、ますます増えてくると思います。

 ただ、相続登記の申請の義務化にしても、2024年までの施行予定なので、来年の本試験で出題されるわけではありません。

 よって、「今、勉強する内容ではない。」わけですが、今年の本試験が終わって、なかなか気分が乗らないこの時期だからこそ、気分転換にその概要を見てみるのもいいかと思います。

 ということで、モチベーションアップも兼ねて、本試験直後の気分転換に、ちょっと不動産登記法の改正内容でも見てみましょうか?(笑)

 ゆる~い感じで読んでもらえたら、と思います(笑)

 さて、そもそも、「なぜ、相続登記の申請が義務化されるの?」って話ですが、これは、相続登記がされないことで「所有者不明土地」が大量に発生していることに始まります。

 「所有者不明土地」とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地及び、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地のコトを言います。

 つまり、①相続登記をちゃんとやってないから、今の所有者がよく分からん!②所有者が分かっても、住所の変更の登記をしてないから、連絡がとれないぞ!ってコト。

 そこで、相続登記・住所変更の登記申請の義務化の登場です。

 平成29年度の国交省の調査では、所有者不明土地の面積は、九州本島の土地面積より広いとか。

 このペースで行くと、2040年には所有者不明土地の面積は、北海道本島の面積に迫ってくるらしいです。

 ただ、個人的には、九州の面積と北海道の面積が、全く違うことに驚きました(ハズカシイ…)。やっぱり、「でっかいどぉ。北海道」ですね(笑)

 さて、公布(令和3年4月28日)後、3年以内の施行を予定している相続登記義務化と、公布後5年以内を予定している住所変更の登記の義務化ですが、今回は、相続登記の改正部分をちょっとのぞいてみましょう。

 主な改正部分をあげると、

❶不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付け(正当な理由がない申請漏れには過料の罰則アリ)

❷相続登記等に関する登記手続の簡略化

❸相続登記の申請義務の実効性を確保するよう、相続人申告登記を新設。

❹登記官が、住基ネット等から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示

 このようになります。

 では、順番に見てみましょう。

 ❶3年以内の相続登記の申請の義務付け(改正不動産登記法76条の2第1項)

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第76六条の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

 この改正によって、3年以内に、相続登記、あるいは、相続人に対する遺贈をする義務が生じることになりました。

 司法書士にとっては、嬉しい規定です(笑)

 そして、改正不動産登記法164条1項で、「申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する」とされています。

 「相続登記しないと、過料ですよ!」って、ちょっとした恐怖トークになりますよね(苦笑)

 また、法定相続の登記等があった場合でも、その後、遺産の分割があったときは、「当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。」とされています(改正不動産登記法76条の2第2項)。

 ただ、個人的には、法定相続の登記があった後、遺産分割をして、持分の全部移転をしたことは、ほぼ経験がないです。

 法定相続の登記を錯誤で抹消することは、結構、ありますが…(笑)

 ただ、今後は、❸でご紹介する「相続人申告登記の申出」が新設されるので、その後の遺産分割によって所有権を取得した場合の登記の依頼が増えるような気がします。

 ❷相続登記等に関する登記手続の簡略化(改正不動産登記法63条3項)

 ここは、大きな改正ですね。

 なんと!相続人に対する遺贈の登記が単独申請になります。

 これは、便利!

(判決による登記等)
第63条 (略)
2 (略)
3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定(共同申請主義)にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

 さらに、❶のように、法定相続の登記がされた後に遺産分割等があった場合にも、登記権利者の単独申請で更正登記ができる可能性が出てきています。

 このあたりは、通達が出てからになるでしょう。

 いずれにしても、試験的にも大きな改正ですし、実務的にも、手間がグッと楽になる感じがします。

 ❸相続人申告登記の新設(改正不動産登記法76条の3)

 「相続人である旨の申出」ができるようになります。あくまで「申出」レベルの登記なので、相続登記とは異なります。

 この申出に基づく登記は、予備的な登記に過ぎないので、売るときには、改めて相続登記等をする必要があるみたいです。

 相続登記をする場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を集めて行く必要があります。

 これが、なかなか大変。

 司法書士は戸籍を遡っていくプロでもあるので、簡単に集めて行くのですが、一般の方は、昔の戸籍も読むのが難しかったりします。

 今でこそ、役所も親切なので、戸籍に付箋等を貼り付けてくれて、「次はどこの市役所に請求して下さい。」なんて、書いてくれたりします。

 それでも、戸籍を集める作業は、かなりの手間を要します。

 これが、相続登記をメンドクサイ感じにしているのでは?ということからできたのが、「相続人申告登記」の制度。

 申出には、自分が法定相続人の1人であることが分かる戸籍を持って行けばいいようです。

 この申出があると、登記官が職権で、申出があった旨や、申出人の氏名住所等を付記登記の方法で登記してくれます(改正不動産登記法76条の3第3項)。

 数次相続の申出の場合には、付記の付記とかになって、ややこしそうです(笑)

 そして、この申出によって、「所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみな」してくれるので、とりあえず、相続登記の義務を果たしたことになります。

 「メンドクサイ感じの相続の手続も、とりあえず、一般の方でもできる範囲でやって下さい。」というコトでしょう。

(相続人である旨の申出等)
第76条の3 前条第1項の規定(相続等による所有権の移転の登記の申請)により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。

 また、この「相続人申告登記」の後、遺産分割等があって所有権を取得した場合には、「当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(改正不動産登記法76条の2第2項)」と、追加的に、登記の申請義務が生じるので、司法書士が活躍するのは、この場面かもしれません。

 ❹登記官が、住基ネット等から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示(改正不動産登記法76条の4)

 これは、すごい話です。

 登記官が定期的に住基ネット等に照会して、登記名義人が死んでいないか、確認するみたいです(笑)

 この場合、登記名義人が死んでいたら、職権で、その旨を示す符号を表示するらしいです。

(所有権の登記名義人についての符号の表示)
第76条の4 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

 びっくりする話ですね(笑)

 この他にも、不動産登記法の改正は、たくさんあるので、次回は、他の改正部分も一緒に見てみましょう。今だから、気軽に読める内容だと思います。司法書士のお仕事が増えそうだな~ってテンションをあげてもらえると嬉しいです(笑)


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「基礎総合コース」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。