【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第49回「ここが変わるよ。不動産登記法(その2)」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 さて、今回も「司法書士の未来は明るい」シリーズです。

 不動産登記法の改正の話を中心に見て行きましょう。なお、民法の改正点については、個人のブログの方で記事を書いているので、ご興味があれば、ご覧ください。

 前回は、相続登記の義務化を中心に改正点をざっくりと見てきました。今回は、住所等の変更の登記の義務化のお話です。

 住所変更等の義務化の必要性は、相続登記の義務化と同じです。要するに、所有権登記名義人の住所や名前が変更されないまま残っていると、所有者がどこに住んでいるのか分からず、所有者不明土地が発生してしまうおそれがあるというコト。

 相続で放置も、引っ越して放置も、所有者不明土地になる原因になるわけですよね。

 前にも書いたことがあると思いますが、多くのケースで、旧住所が登記に記載されていることが多いです。

 特に、自宅を買ったような場合には、前の住所で新しい家を買って、引越してから、住民票を移動させて、運転免許証の住所を変更したり、金融機関に届出したり、と、順番に新しい住所に変更していきます。

 その手続きの中で、「あっ!そういえば、家の登記も住所を変更しておかないと!」なんて、気が付く一般の方は、ほぼいらっしゃらないわけで、中には、住所変更を役所に出したら、「自動的に登記の住所も変わっている」と、思っている方もおられます。

 司法書士の勉強をされている皆さんにとっては、「なんで自動的やねん!」って感じだと思いますが、それが一般の方の登記に対する認識です(笑)

 ただね、「自動的に登記の住所も変わる」ってありえない話ですが、それが今回の改正で、それに近い話も入っているので、それも含めて、ちょっとご紹介したいと思います。

 では、まずは、住所などの変更の登記の義務化のポイントから見て行きましょう!改正不動産登記法76条の5になります。

(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
第76条の5 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。


 住所や、名前が変わってから、2年以内の変更の登記の義務が課されました。

 「名称」という言葉も入っているので、法人もその対象として含まれます。

 もし違反したら、5万円以下の過料となります。

(過料)
第164条
 (略)
2 第76条の5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。


 「5万円以下の過料」ってインパクトありますよね(笑)

 決済の現場で、お客さんに、「また、引っ越したら、登記も住所の変更しておいて下さいね。忘れていたら5万円の過料がかかりますよ。」なんて、恐怖トークで攻めたら、その場で、「お願いするわ。」って、依頼が来そう(笑)

 ただ、相続と違って、住所の変更なんて転勤が多い方なんかは大変です。

 そこでちょっとオモシロイ改正も入っています。改正不動産登記法151条です。

(情報の提供の求め)
第151条 登記官は、職権による登記をし、又は第14条第1項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。


 登記官が、住基ネット等に定期的にアクセスして登記名義人の死亡の事実や、住所等の変更の情報を取得できることになりました。

 登記名義人が死亡していた場合には、登記官は職権で、その旨を示す符号を表示する改正不動産登記法76条の4の話は前回の記事でご紹介しました。

 今回は、その住所等の変更バージョン。改正不動産登記法76条の6になります。

(職権による氏名等の変更の登記)
第76条の6 登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。


 ただし書にある通り、「登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る」ので、「自動的に登記の住所も変わる」ってところまでは行きませんが、かなり近い話ですよね。

 あれ?そうなると、司法書士は必要ない?(笑)

 先の会話で、「また、引っ越したら、登記も住所の変更しておいて下さいね。忘れていたら5万円の過料がかかりますよ。」って伝えた後に、お客さんから、「申出しとくわ。」って言われたら、お客さんの方が一枚うわてですね(笑)

 やっぱり、「5万円過料の恐怖トークで攻める!」なんて、司法書士の品位に欠けるようなことを考えてはダメですね。世の中、うまくできています(汗)

 ただ、住所の変更といっても、海外に転勤なんかしちゃうと、今まで通り、ちょっと複雑になって、司法書士が頼りになりそうですね。

 また、所有権登記名義人が海外に住所を移した場合には、国内の連絡先が登記に記載されるようです。

(所有権の登記の登記事項)
第73条の2 所有権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 (略)
二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの


 ちなみに、所有権登記名義人が法人である場合には、会社法人等番号が登記事項となります。同じ条文の第1項です。

(所有権の登記の登記事項)
第73条の2 所有権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの


 この他、登記事項にはなりませんが、登記申請の際、所有権登記名義人の「生年月日」の提供も必要となるようで、登記官の方で、相続や住所変更等があっても、所有権登記名義人の情報をしっかり追いかけられるように、所有者についての検索用の情報を充実させるようです。

 遺言をあずかったり、住基ネット等で紹介したり、検索用の情報を保有したり、法務局のお仕事が大変なことになっていると思うのは、僕だけですかね。登記業務だけでも、忙しそうなのに、法務局の負担が増えそうで、心配ですね(汗)

 改正の内容はまだまだあるので、次回も引き続き、不動産登記法の改正の話を見ていきたいと思います。お楽しみに!


☜第48回「ここが変わるよ。不動産登記法(その1)」はこちら


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「基礎総合コース」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。