【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第50回「ここが変わるよ。不動産登記法(その3)」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 さて、今回も「司法書士の未来は明るい」シリーズです。

 その1では「相続登記の義務化」のお話、その2では「住所等の変更の登記の義務化」のお話を見てきました。今回は、その他、実務と試験に直結する部分を中心に、気になる改正を見て行きましょう!不動産登記法の改正のお話はひとまず、今回で完結です。なお、民法の改正点については、個人のブログの方で記事を書いているので、ご興味があれば、ご覧ください。

 まず、初めにご紹介するのが「休眠担保の登記の抹消」です。

 司法書士試験でも、平成24年の記述の試験で問われています。

 皆さんが合格されて、司法書士として最初にお仕事が来るのが、抵当権の抹消の登記か、相続の登記あたりでしょう。

 抵当権抹消の登記は、簡単な登記ですが、実は奥が深い(笑)

 抵当権者が、昔むかしに存在した「産業組合」や「有限責任○○組合」とか、「今どこの金融機関なの?」って登記記録に出会うこともあります。

 実は、ちょっと恥ずかしい話なのですが、僕は一度、抵当権の抹消の申請をあきらめたことがあります。

 登記記録上は、昭和の最初ごろに根抵当権が設定されているのですが、根抵当権者が「有限責任K市信用組合」。金融機関にいろいろお話を伺ってみると、どうやら、「有限責任K市信用組合」は、その後、「K市信用組合」に名称を変更した後、事業譲渡で「K信用金庫」が引き継いだということなのですが、商業登記簿の閉鎖謄本などをたどっていっても、「K市信用組合」が総会の決議によって解散している事実は確認できるものの、「K信用金庫」に事業譲渡した事実が確認できませんでした。

 これは、困った(苦笑)

 「K市信用組合」の元清算人の住所から、当時の清算人を探すも見つからず、裁判所で清算人や特別代理人を選任して、裁判で抹消することも考えたのですが、たかが、根抵当権の抹消で1000円、2000円の費用で済むはずのものを、裁判所への予納金で、何十万円となるのも、お客さんが納得されない。

 休眠担保の抹消の規定は、抵当権者が法人の場合、商業登記簿に記載がないため、その法人の存在が確認できない場合にしか利用できません。

 今回は、法人の存在は確認できるのですが、つながらないわけです。法務局とも相談したのですが、結論も見つからず…。

 結局、お客さんにいろいろと抹消の方法を提案した上、あきらめました(笑)

 休眠担保の抹消って、受験生時代には、なんか「伝家の宝刀」的な存在に感じていたのですが、実務に出てみると、全く使えない(笑)

 そもそも、法人の存在が登記簿から確認できない…なんてこと、まず、ありえないって感じです。

 そんな現場の声が届いたのか!?(笑)、休眠担保の抹消も改正事項に含まれています。ちょっと条文を見てみましょう。改正不動産登記法70条の2です。

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)
第70条の2 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。


 「調査を行ってもなおその法人の“清算人”の所在が判明しない」場合になっています。

 要するに、清算人の追跡をして、郵便物が到着するか等を調査していけばいいわけです。これならカンタンです。ただ、30年に伸びていますね(笑)

 ちなみに、「前条第2項に規定する方法により調査を行っても」の部分ですが、前条第2項は、公示催告及び除権決定の手続きの特例に関する規定です。こちらの規定も新設されています。

(除権決定による登記の抹消等)
第70条 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
2 前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
3 (略)
4 (略)


 また、買戻しの登記の抹消の簡略化も行われています。

 買戻期間はマックス10年なので、売買契約の日から10年経過すると、単独で抹消することができることになりました(改正不動産登記法69条の2)。

(買戻しの特約に関する登記の抹消)
第69条の2 買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。


 どうでしょう?

 なんか、試験で出てきそうですよね(笑)不動産登記法の記述の試験で買戻しの登記が出るなら、このタイミングだったりして…。

 この他にもいろいろと改正されています。
 面白いのは、不動産の名寄せの制度。

 相続登記のもれがでないように、所有者の名前で不動産の一覧が出せるようになるみたいです(改正不動産登記法119条の2)。

 なんか、不動産屋さんが請求しまくるような感じもしますが…(笑)

 また、法人が所有権登記名義人の場合に、会社法人等番号が登記事項とされたり(改正不動産登記法73条の2第1項第1号)、所有権登記名義人の住所が国内にない場合には、国内における連絡先が登記事項になったり(改正不動産登記法73条の2第1項第2号)、面白そうな改正も予定されているようです。

 国内における連絡先は、登記を申請した司法書士もなれるとか。司法書士の未来は本当に明るいですね。

 他にも、いろいろと改正事項があるのですが、試験との絡みでは、このあたりのお話で十分でしょう。

 ということで、不動産登記法の改正のお話は、ここまで。次回は、最後に、「相続土地国庫帰属法」をご紹介してみようかと思います。お楽しみに!


☜第49回「ここが変わるよ。不動産登記法(その2)」はこちら


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「入門総合本科生(旧 基礎総合コース)」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。