【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第52回「いわゆる負動産」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今回は、「相続土地国庫帰属制度」のお話。

 田舎の土地の相続でよく問題になるのが、いわゆる「負動産」問題。

 相続したものの、田舎過ぎて、買い手がつかなかったり、価値が全くないのに、固定資産税だけ払わされたり、文字通りのマイナスの不動産。

 お客さんからも、「こんな土地イラナイ!どうにかならないのか?」と相談を受けることも多いです。

 たいていお客さんからは、「イラナイ土地を国とかに返せないのか?」という話になって、「ムリなんですよ~。」ってオチになります。

 だって、民法239条2項には、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する。」という条文はあるものの、相続人が存在する以上、不動産の所有権を放棄して、国庫に帰属させるという制度が存在しません。

 実際、田舎の土地や建物って、本当に必要なかったりするんですよね。相続人さん達も、それぞれ都会に出てきて、家も購入して、お仕事もして、もう田舎に戻る予定がないこともしばしば。

 相続登記をしてくれるのはマシな方で、イラナイ土地だからという理由で、放置される土地が多いのは、なんかよく分かる感じもします(苦笑)

 「こんな田舎の土地イラナイ」

 そんなことが言えたら…。

 そう!そのような夢の制度が、令和3年4月28日に公布された「相続土地国庫帰属制度」。公布から2年以内の施行が予定されています。

 まさに、待ち望んでいた夢の制度(笑)

 司法書士も、この制度の説明をする機会も増えてくるのではないでしょうか?

 気が早い話ですが、まだ施行されていないのに、僕自身も1件、この制度の相談をすでに受けたことがあります。割と興味があるのかもしれません。

 大まかな流れとしては、

 相続または、相続人に対する遺贈によって土地を取得した者が国庫に帰属させるため、法務大臣に「承認申請」されると、法務大臣(法務局)による審査が行われ、一定の不承認事由に該当しない限り、承認処分がされることになります。

 承認処分の要件は、いわゆるブラックリスト方式なので、法務大臣の裁量ではなく、不承認事由に該当しない限り、必ず承認されます。

 これは嬉しいですよね。

 土地の国庫帰属を希望したものの、「法務大臣か“ダメです!”って言われたらどうしましょうか?」なんて相談を受けることはないでしょう。

 お客さんには、承認してもらえないケースを説明して、それに該当しなければ大丈夫!と安心して伝えることができます。

 また、承認申請の代理を司法書士ができるかについて、明確な根拠等はないと思うのですが、「司法書士や土地家屋調査士を積極的に活用して、この制度の周知を図る。」としているので、司法書士の役割はかなり大きいと思います。

 司法書士の未来は明るい!

 ただね…。

 個人的には、この制度の利用は少ないと思っています。ちょっとハードルが高すぎる感じ(汗)

 承認されにくいの?

 いやいや、ブラックリストの不承認事由については、特に問題はありません。

 例えば、次のような土地は、そもそも承認申請自体ができません。

(相続土地国庫帰属法2条3項)
承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
①建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
④土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地


また、下記のケースに該当してしまうと、承認されません。

(相続土地国庫帰属法5条1項)
法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
①崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
②土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
③除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
④隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
⑤前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの


 建物があるときの解体費用や、古い抵当権等が残っているときに、少し問題も生じそうですが、特に気なるブラックリストでもありません。

 若干メンドクサイ感じなのが、法務大臣に承認の申請をした後、審査のための実地調査や事実聴取、資料等の提出があって、そこに正当な理由なく調査に応じないと申請が却下されてしまうところ(相続土地国庫帰属法4条1項3号)。

 まぁ、仕方ない感じもしますが…。

 と、まぁ、ここまでは問題ないのですが、大きなハードルとなりそうなのが、「負担金の納付」。

 負担金を納付した時点で、国庫に帰属することになります。

(相続土地国庫帰属法11条1項)
承認申請者が負担金を納付したときは、その納付の時において、第5条第1項の承認に係る土地の所有権は、国庫に帰属する。


 問題は、その負担金の金額でしょう(笑)

 審査手数料のほか、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費用相当額の負担金を聴取するとされていて、参考として、現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円という目安が示されています。

 何人かお客さんとも話をしましたが、皆さん、口をそろえて、

 「お金とるの!?」です(笑)

 僕が大阪でお仕事をしているから、「お金とるの!?」って反応なのか、全国的に、「お金とるの!?」って反応なのかは不明ですが、個人的には、この金額が大きなハードルになるような気がします。

 相続人不存在のケースでも、相続財産管理の選任自体、利害関係人から「進めて下さい。」と言われるものの、予納金がいる旨をお伝えしたとたん、「お金がかかるなら、ちょっと…。」って感じになることが多いです。

 田舎の土地はイラナイ!としながらも、やっぱり、イラナイ土地を処分するために、10万円、20万円の単位でお金がかかるのは、抵抗があるかもしれません。

 金額の詳細は政令で規定されるようですが、個人的には、かなり負担金の金額が気になるところです。

 相続人の負動産を、プラスにかえていくためにも、利用しやすい金額になればいいですよね。

 皆さんが合格されて、実務に出るころには、バンバン、国庫帰属の相談が来るかもしれません(笑)楽しみですね。


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働き、本試験直前まで仕事を続けながら合格。「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の合格した経験をもとに、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。「親身に、身近に、そして丁寧に」をモットーに講義を実施。
Wセミナーでは、初学者対象の「入門総合本科生(旧 基礎総合コース)」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。