【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第53回「亡くなった人が書いた
委任状?」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今日は、最近、連発した案件の話。それは、相続人不存在の案件。本当に最近多いです。

 ただ、相談は多いものの、実際にお仕事につながるかは別問題。相続人不存在の手続きについては、改正が予定されていますが、現状、相続人の捜索や相続債権者に対して請求の申出を求める手続きだけで10か月以上必要になります。

 また、共有不動産の場合に、共有者の1人が相続人不存在になって、他の共有者に帰属させるためには、さらに、特別縁故者の申出を待って、相続開始の日から13か月経過する必要があります。

 要するに、時間がかかり過ぎます。また、相続財産管理人の制度を利用する場合には、相続財産管理人の報酬等が必要となるため家庭裁判所に予納金を納める必要があって、遺産によっては100万円近く予納金を納める必要が出てきます。

 また、司法書士も相続財産管理人になれますが、地域によっても異なるのかもしれませんが、必ずしも、申し立てた際に相続財産管理人候補者として指定した者が相続財産管理人になれないこともあるでしょう。

 要するに、相続財産管理人の制度のハードルは高いです。できれば利用したくないのが本音。でも、相続人不存在の案件は、本当に多いです。

 先日のご依頼も、共有不動産で、共有者の1人が相続人不存在の案件。

 受験生の皆さんにとっては、不動産登記法の記述の過去問でも、平成2年に特別縁故者への所有権の移転の登記、平成22年には特別縁故者がいないことによる持分の移転の登記が出題されているので、相談されても、「何でも聞いて下さい!“ど~ん”と来い!」状態でしょう(笑)

 でも実際は、相続財産管理人を選任する入り口の段階で、終わってしまうことの方が多いです。そして、不動産は相続人不存在のまま放置。

 悩ましいです。

 ただ、今回の案件は、ちょっと気になる点がありました。事例としては、このような話です(守秘義務の点から事例は実際のものとは異なります。)

 ちょっと、平成31年度の不動産登記の記述の問題風に書いてみましょう。

〔令和3年10月12日 Bから聴取した内容〕
1 甲区分建物は,父・Aが購入し,一緒に住んでいましたが,今は誰も住んでおらず空き家の状態です。今後,使う見込みもないので売却に向けた準備をしています。
2 父・Aは,令和3年8月21日に他界しました。相続人は,長男である私と次男Cであり,他に相続人はいません。
3 私は,弟のCとは折り合いが悪く疎遠になっており,話もできない状態だったので,今回の父の相続登記も,弟と連絡をとることもなく,司法書士の先生にお願いして,法定相続通りの登記を,令和3年9月12日付で申請してもらいました。司法書士の先生からは,令和3年9月1日に,弟から相続登記に必要な委任状を受け取ったと聞きました。委任状の日付は,空欄になっており,司法書士の先生が登記の申請をする際,申請する日付で記入されたそうです。
4 その後,Cも他界していたことを聞きました。相続人は,子Dであり,他に相続人はいません。Dは,私の甥にあたります。
5 甥のDに確認したところ,甥が,令和3年9月15日にCが一人暮らしする自宅を訪れたところ,Cは,令和3年9月10日頃,病気で一人暮らしする自宅で倒れて亡くなっていたそうです。
6 弟Cには,多額の借金があり,甥のDは,家庭裁判所に相続放棄の申述をしており,父も母も他界しているため,その結果,兄の私が相続人になるのですが,私も相続放棄をしています。


 さて、どうでしょうか。

 現在の登記記録は、「令和3年9月12日」付けで、BとCの共有になっています。しかし、Cの相続人が順次、相続放棄したため、相続人が不存在となっています。

 ここで、僕が気になったのは、「令和3年9月12日」付けで父Aの相続登記を申請しているのですが、司法書士が、申請する日付でCの委任状に記入しています。つまり、Cの委任状の日付は、「令和3年9月12日」になります。

 ところが、Cは、「令和3年9月10日頃」既に死亡しており、「令和3年9月12日」付けの委任状を提供するのは不可能です。

 ここで、Cは、登記の申請時点では既に死亡しているので、登記記録からCの名義をなんとか消すことができたら、相続人不存在で悩むこともなくなりそうですが、どうでしょうか?登記に誤りがありそうなので、更正の登記はできないですかね?

 結論は…。

 令和3年8月21日に父Aが亡くなった時点で、Cは相続人になっているわけですから、登記記録としては、何ら誤りがないことになります。

 問題は、委任状の日付。死んだ後に、依頼したことになっています。

 ありえないことなので、法務局にも確認したのですが、あっさりとした返事でした。

 「法定相続なので、保存行為で相続登記ができるので、Cの委任がなかったことになっても、登記識別情報通知が発行されるか、だけの問題になります。登記の申請自体に何も問題ありません。」

 まぁ、ごもっとも(笑)

 ということで、また一つ、相続人がいない状態で放置された不動産を生み出してしまいました。どうにかならないかなぁ~って、悩ましいです。



☜第52回「いわゆる負動産」はこちら


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働きながら、2010年10月に司法書士試験に合格。堺市の個人事務所、大阪市内の司法書士法人で勤務して実務を学ぶ。合格して1年後の2011年10月に個人事務所を開業。以後、葬儀・墓地の相談を中心に、法人等の顧問として活躍。また、法務局の登記相談員として幅広く、登記の相談も受けている。Wセミナーでは、「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の経験を基に、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。
Wセミナーでは、初学者対象の「入門総合本科生(旧 基礎総合コース)」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。