【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第57回「これは…登記懈怠!?」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 試験で勉強したことがそのまま実務に直結する司法書士試験ですが、法人の登記はいろいろと知らないことに出会います。

 試験対策の中では、株式会社の登記を中心に、特例有限会社の登記、持分会社の登記、一般社団法人と一般財団法人の登記と学んでおられると思います。

 実務に出ると、株式会社、特例有限会社はもちろん、合同会社のような持分会社や一般社団法人の登記のご依頼も多いので、楽しんでもらえたらと思います。

 同時に、社会福祉法人や、学校法人、宗教法人、NPO法人、さらには医療法人など、いろいろな法人の登記に出会います。

 そういえば、最近、択一式の試験では、法人の登記事項が聞かれる傾向がありますね。

 平成27年には、「医療法人、学校法人、司法書士法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人」の中から、資産の総額が法人の登記事項となるものを選ばせる問題が出題されていました。

 また、令和2年には、社会福祉法人の資産の総額の変更の登記や、医療法人の理事長の重任の登記の添付書面、特定非営利活動法人の資産の総額の登記の問題や、学校法人における代表権の制限等の定めの登記に関する問題が出題されていました。

 ただでさえボリュームが大きい会社法・商業登記法の内容に、さらに法人の登記事項の勉強まで必要となってくるとなかなか大変ですよね。

 おっと…。大丈夫かな?と心配になった皆さん…。

 安心して下さい。例えば、平成27年と令和2年の過去問を比べてみると、「特定非営利活動法人の資産の総額の登記の問題」が知識としてモロにかぶっています。

 組合せ問題が多い司法書士試験の問題ですから、「特定非営利活動法人の資産の総額は登記事項でない。」という知識を覚えておけば、後は、これまた出題がかぶっている社会福祉法人の資産の総額の問題で解答は導き出せるようになっています。

 つまり、過去問をしっかりと解いておけば、法人の登記も恐れることなかれ!ということです。

 まぁ、僕が受験生だったら、「特定非営利活動法人って何?」って感じだったと思うのですが(苦笑)、皆さんならご存知でしょう。いわゆるNPO法人のことですよね。

 ただ、NPO法人の資産の総額の登記は、平成30年10月1日に改正が施行され、登記事項から削除されたため、出題当時は、資産の総額の登記は必要だったわけです。

 そして、同じ内容が令和2年に出題されているわけですが、こちらは改正後の出題なので、資産の総額の登記は登記事項にならない、というオチになります。

 改正に対応していない古い年度の過去問をしっかりやっていたら…間違うかも…というトラップです(笑)

 手薄な分野なので、改正に対応できていないと気づかないので、過去問はできるだけ新しい年度のものを使われる方がいいと思います。

 さて、実務のお話ですが、法人の役員変更の登記のご依頼も多いです。各種法人の登記の中では、意外と簡単なのは、NPO法人。ほぼ株式会社の知識で対応できます。

 また、ややこしそうに見えて、意外と楽なのが、宗教法人の代表役員変更の登記。お客さんの方で、登記に必要な書類がほぼ揃えられた状態で持ち込まれることがほとんどです。

 持ち込まれた書類を規則と照らし合わせながら確認して、ホッチキス止めするだけのような作業も多いです。

 逆に、ややこしいのが学校法人の理事長の変更の登記。理事の選任の仕方から、寄附行為に書かれていることがややこしい。「評議員会で理事を選任します。」だけだったら分かりやすいのですが、学校長が理事に選ばれたり、学識経験者のうち理事会の中で選らばれた者が理事になったりと、あまり受験勉強で習ったことがないような知識に出会ったりして楽しいです。

 先日、医療法人の資産の総額の変更の登記でふと気になることに出会いました。

 基本的に、医療法人の場合、毎年、資産の総額の変更登記が必要となります。そして、理事長の変更の登記は2年ごととなります。

 ところが、資産の総額の登記は毎年されているのに、理事長の変更の登記が平成18年で止まっています。

 あれ?理事長の変更の登記が15年近く登記懈怠の状態?どうなってるの?このままだと、過料がかかるのでは?

 このあたりが、登記の難しいトコロです。つまり、僕が知らない知識がここに隠れています(笑)

 ベテランの司法書士は、「平成18年で止まっています。」って聞いたとたん、なんの疑問も持たないのだと思います。

 ここで僕が知ったかぶりして、「理事長の変更の登記は2年ごとに必要ですよ。平成20年、平成22年、平成24年と…順次、理事長の重任の登記をして下さい!」なんて言っちゃうと、大トラブルになっちゃいます(笑)

 実は、平成19年4月1日の医療法の改正によって、理事の任期は2年を超えられないことになりました。

 つまり、それまでは任期の規定がなかったわけで、平成18年に就任している理事長さんは任期がない状態です。そして経過措置として、次の理事長の選ばれるまで、その任期は伸びることになります。

 要するに、この先、理事長が変わる場合にはそこまで任期の伸長がありますし、事実上、同じ理事長で重任していたとしても、理事会で理事の選任の決議をしていないとなれば、重任の登記をする必要もなく、ずっと、任期の伸長が続いている状態となります。

 そう!もし、ここで「理事長の任期は2年ですから…。」なんて言っちゃうと、「他の司法書士の先生は、理事の任期は伸長されていると言ってましたよ!ご存知ないのですか?」なんて不信感を与えることになってしまいます(汗)

 最初の話に戻ります。

 試験勉強が実務に直結する司法書士のお仕事ですが、このように合格する前の知識が必要となることも多いです。

 僕は平成22年の合格なので、実は、この平成19年の医療法の改正は、たまたま知っていただけです。ホント、運が良かったって感じですが、改めて、合格する前の時代の勉強も必要だな…と思い知らされた案件でした。



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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働きながら、2010年10月に司法書士試験に合格。堺市の個人事務所、大阪市内の司法書士法人で勤務して実務を学ぶ。合格して1年後の2011年10月に個人事務所を開業。以後、葬儀・墓地の相談を中心に、法人等の顧問として活躍。また、法務局の登記相談員として幅広く、登記の相談も受けている。Wセミナーでは、「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の経験を基に、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。
Wセミナーでは、初学者対象の「入門総合本科生(旧 基礎総合コース)」、中上級者対象の「上級総合本科生」、「上級本科生」等を担当している。