【司法書士】現役司法書士 中山慶一のブログ~司法書士を楽しむ~
第69回「刑法の過去問を解きながら、山口・阿武町4630万円誤給付問題を考えてみよう!」



 こんにちは。司法書士の中山慶一です。

 今日は、刑法の過去問を解いてみましょう。本日の素材は、「H14-24-イ」、「H21-26-ア」、「R2-26-オ」です(笑)

 ただし、この記事を書いているのは、令和4年5月19日になるので、その点だけご配慮下さい。「何が!?」って感じですよね(笑)

 とりあえず、問題を確認してみましょう。

【H14-24-イ】
 Aは,友人から預かったキャッシュカードを悪用しようと考え,その友人の生年月日を暗証番号として銀行の現金自動預払機を操作したところ,番号が偶然一致して現金自動預払機が作動し,現金を引き出すことができた。
 Aの行為について詐欺罪が成立する。
【H21-26-ア】
 Aは,Bの承諾がないのに,B名義のキャッシュカードを悪用して,C銀行の現金自動支払機(ATM)から,現金を引き出した。
 この場合,Aには,C銀行に対する詐欺罪が成立する。
【R2-26-オ】
 Aは,甲銀行乙支店に開設した自己名義の預金口座の残高が全くないことを知りながら,入出金履歴を通帳に記帳した際,当該預金口座の残高が100万円になっていたことから,入出金状況を調べてみると,全く身に覚えのないBから100万円が振り込まれており,Bが誤って振り込んだものであることに気付いた。Aは,この100万円を自分のものにしてしまおうと考え,甲銀行乙支店に赴き,その意図を秘して,行員Cに対し,当該預金口座からの100万円の払戻しを請求し,Cから100万円の交付を受けた。
 この場合において,AのCに対する詐欺罪は成立しない。


 では、問題を解いて下さい。

…………(考え中)…………

 解けましたか?ちゃんと解いて下さいね(笑)
 では、答え合わせ。

 詐欺罪の問題ですね。詐欺罪の欺罔行為は、「人」に向けられたものでなければならないので、ATM相手に詐欺罪は成立しません。機械は錯誤に陥ることがないからです。

 従って、ATMからお金を引き出している「H14-24-イ」と「H21-26-ア」は、詐欺罪が成立せず(東京高判昭55.3.3)、窃盗罪が成立するため(最判昭29.10.12)、いずれも、「×」になります。

 それに対して、窓口でお金を引き出すと、詐欺罪になります(最決平15.3.12)。よって、「R2-26-オ」も「×」になります。

 要するに、誤って振り込まれたお金をATMから引き出すと窃盗罪、窓口で引き出すと詐欺罪になる、ってことですね。


 では、ここからが時事ネタ。山口・阿武町4630万円誤給付問題を考えてみましょう。ただし、このニュース自体はあまり興味がなかったので、フロッピーディスクって懐かしいな~って思ったくらいで、内容はよく知りません。じゃあ~、ネタにするなよ!って、感じですが(笑)、昨日のニュースに衝撃を受けたので、つい記事にした次第で…。

 昨日のニュースによると、山口・阿武町4630万円誤給付問題で、24歳の男性が34回にわたって出金した、とのコト。「出金」というのが、ATMでの「出金」なのか、窓口での「出金」なのか、ネットバンキングでの移動を「出金」と呼んでいるのかは分かりませんが、昨日、男性が逮捕されたというニュースが流れていました。

 ご存知の通り、逮捕容疑が、「電子計算機使用詐欺罪」

 なんか、過去問とイメージが違う…(笑)

 ちょっと条文を確認してみましょう。

(電子計算機使用詐欺)
第246条の2 前条(詐欺罪)に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。


 「電子計算機に虚偽の情報」と書かれている通り、例えば、銀行員が「ウソの情報」を通帳に記載して、実体がないのに、あるように見せると「虚偽の情報」となるのでしょうが、今回は、実体上も、4630万円はあるので、「虚偽の情報」に当たらないようにも見えます。

 また、最高裁平成8年4月26日では、「振込依頼人と受取人との間に振込みの原因となる法律関係が存在しない場合における振込みに係る普通預金契約の成否」について、「振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込みがあったときは、両者の間に振込みの原因となる法律関係が存在するか否かにかかわらず、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立する。」と民事上の判例も出ています。

 となると、やはり「虚偽の情報」に当たらないようにも思えます。

 まぁ、今回の逮捕は、スマートフォンのオンライン決済サービスを利用して、決済代行業者の口座に400万円移した点での逮捕とのコト。ネットバンキングでの移動なので、電子計算機使用詐欺罪になったのでしょうが、そもそも、この罪になるのか、残りのお金は、どのような罪になっていくのか、注目されるところです。

 とりあえず、僕は、窓口で引き出すことはないだろうから、窃盗罪かなぁ~と思っていたら、全然違っていたので、驚いた次第です(笑)

 ネットニュースでも、いろいろと罪名が飛び交っているので、意外と、難しい事案なのかもしれません。

 では、過去問の復習もしっかりしておきましょう!(笑)


☜第68回「教えて偉い人!賃借権って、所有権のコトですよね?」はこちら


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<ブログ筆者の紹介>

中山 慶一なかやま よしかず (司法書士・Wセミナー専任講師)
プロフィール
フルタイムで働きながら、2010年10月に司法書士試験に合格。堺市の個人事務所、大阪市内の司法書士法人で勤務して実務を学ぶ。合格して1年後の2011年10月に個人事務所を開業。以後、葬儀・墓地の相談を中心に、法人等の顧問として活躍。また、法務局の登記相談員として幅広く、登記の相談も受けている。Wセミナーでは、「基本を正確に、そして大切に」が合格への近道である、という自身の経験を基に、圧倒的な指導力で受講生を合格へと導く。
Wセミナーでは、初学者対象の「入門総合本科生」、中上級者対象の「上級総合本科生」等を担当している。