【宅建士】
建築基準法に関する判例①


みなさんこんにちは。山口です。6月に入り、日々暑くなってきましたね。
近年、気候変動による影響など、全世界的に地球環境保護に関心が集まっています。
日本でもSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉がよく聞かれるようになりました。
さて、今回も試験に頻出の事項である「建築確認」について、実際にあった裁判を基にお話ししていきたいと思います。
今回の判例は、人間の活動が自然環境や資源に悪影響を与えず、かつその活動を維持できるようにするという、サステナブル(sustainable)を目的とした環境保護活動の一環といえます。
舞台は、東京都新宿区下落合の2つの野鳥公園に挟まれた高台で、地元住民が「たぬきの森」と呼ぶ屋敷跡(約2000㎡)です。
JR目白駅から西へ約500mほどの場所ですが、樹齢200年以上の大木が茂り、タヌキや貴重な野鳥が生息しています。
ところが、あるマンション建設業者が、この場所を買い取り、地上3階・地下1階・3棟・30戸・延べ床面積約2,820㎡の集合住宅(重層長屋)を建てようという建設計画を示しました。
これに対し、地元住民は、この森を区が買い取って、区立公園にするよう区に働きかけました。そして、「下落合みどりトラスト基金」を設立し、集めた2億円と隣接地470坪の寄付を区に申し出ました。
その後、新宿区長は、5億4000万円の買取予算を計上しましたが、業者が提示した額(10億5000万円)と折り合いがつかず、森の樹木は伐採され、建設工事が始まりました。
そのため、地元住民が訴えを提起するに至りました。

1.事案
通称「たぬきの森」に建設予定のマンションは、延べ床面積が約2,820㎡です。東京都建築安全条例は、「床面積が2,000㎡を超える建築物の敷地は、道路に8m以上接していなければならない」との接道義務を定めています。
しかし、特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例によれば、区長が「周囲の状況等から安全上支障がない」との安全認定をした場合には、例外的に接道義務を免れます。
この特例認定は、区長が決裁して出すこととなっていますが、担当部局である新宿区建築課は区長に詳細をまったく報告せず独断で認定していました。
さらに、敷地は、約4mの幅の通路が、34m伸びた先で道路と接しているという旗竿地で、東京都建築安全条例の基準(8m以上の接道義務)を満たしません。そのうえ、周囲は崖になっており、通行や避難をするには敷地に接している通路しかないのに、安全上支障がないとして安全認定をされてしまっていました。
業者は、この安全認定を受けた上で、建築確認を受け、マンションの建設工事を始めました。
そこで、地元住民らは、新宿区を被告として、そもそも安全認定(先行行為)は違法であるから、これを前提とする建築確認(後行行為)も違法であると主張して、本件安全認定の取消し・本件建築確認の取消しを求めて訴えを提起しました。

2.最高裁の判断
最高裁は、本件建築確認を取り消す高裁の判断を支持したため、本件建築確認の取消しが確定しました(平成21年12月17日判決)。
判決で、最高裁は以下のように述べています。
そもそも東京都建築安全条例の定める接道義務は、大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより、避難又は通行の安全を確保することを目的とするもので、これに適合しない建築物の計画について、建築主は建築確認を受けることができない。そして、安全認定を受けると、建築主は、建築確認申請手続において、接道義務の違反がないものとして扱われる。
この建築確認における接道要件の判断と、安全認定における安全上の支障の判断は、ともに避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものであり、安全認定は、建築確認と結合して初めてその効果を発揮すると解される。

したがって、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために、接道義務の違反があると主張することは許されるとして、地元住民側の主張を認めました。

3.ポイント
本判決は、先行処分である安全認定と後行処分である建築確認とが、避難・通行の安全確保という一つの目的を達成するための一連の処分であると見て、先行処分の違法を理由に後行処分の取消しを認めたという特徴があります。
建築主は、建築確認が下りて確認済証という証明書が役所から送られてこないと建築工事を始めることができません。建築確認は、これから建築しようとする建築物の安全性をチェックするための重要な手続であり、本試験でも頻出の事項です。
なお、本マンションは他の業者によって撤去されましたが、代わって老人ホームが建築されたため、たぬきの森の公園化は実現しませんでした。
しかし、住民による環境保全の一手段として参考になるのではないでしょうか。

次回も建築確認に関する判例をご紹介します。お楽しみに!