【宅建士】
建築基準法に関する判例②


皆さんこんにちは。山口です。
今回も、試験の頻出事項である「建築確認」について、判例をご紹介していきましょう。
今回の裁判は、マンションが建築されると住環境が害されるので建築確認処分に反対するという付近住民による反対運動がきっかけです。
住民の陳情を受けた東京都は、建築主と住民との間の紛争激化が予想されたことから、すでに建築確認申請をしている建築主に対し、住民との紛争が解決するまで建築確認を留保しました。この留保により着工が遅延し、さらには建築資材の急騰もあり損害が発生したので、建築主は、東京都に対して損害賠償請求をしました。

1.事案
建築主は、東京都品川区東大井の土地に事務所兼共同住宅(本件マンション)を建築すべく、建築確認申請を品川区役所を経由して東京都の建築主事に提出しました。
しかし、マンションが建築されると著しい日照阻害や風害等の被害を受けるので建築確認処分に絶対反対するとの住民の反対があったことから、都は、建築主に対し住民と話し合うよう行政指導を行い、建築確認処分を保留することとしました。
建築主は、都の行政指導に応じて住民との話合いに努めたにもかかわらず、円満解決は困難な状況にあり、その解決がなければ確認処分を得られないとすれば、多大の損害を被るおそれがあると判断しました。
そのため、都の行政指導には服さないこととし、都の建築審査会に「本件確認申請に対して速やかに何らかの作為をせよ」との審査請求を申し立てました。そして、申請から約5か月後に、住民に金銭補償をするとの和解が成立し、ようやく建築確認がされました。
そこで、建築主は、都に対し、建築確認処分の違法な留保を理由として、3000万円及び支払済に至るまで年5分の割合による金員を支払えとの国家賠償法に基づく損害賠償請求を提起しました。

2.最高裁の判断
最高裁は、以下のように述べ、建築主の訴えを認めました(昭和60年7月16日判決)。
建築基準法が原則として「申請を受理した日から7日以内に審査をし、適合することを確認したときは、確認済証を交付しなければならない」と規定している趣旨からすると、建築主事としては速やかに確認処分を行う義務があるが、いかなる場合にも例外を許さない絶対的な義務とまではいえない。
(1)行政指導中であることを理由に確認申請に対する応答を留保しても、①建築主が確認処分の留保につき任意に同意をしているものと認められる場合のほか、②応答を留保することが法の趣旨目的に照らし社会通念上合理的と認められるときは、確認処分を違法に遅滞するものということはできない(上記①②の場合は確認処分を保留することができる)。
(2)もっとも、確認処分の留保は、建築主の任意の協力・服従のもとに行政指導が行われていることに基づく事実上の措置にとどまるものであるから、建築主において自己の申請に対する確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を真摯かつ明確に表明した場合には、建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない(表明以降の行政指導の継続は原則として違法となる)。
(3)しかし、建築主が行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合であっても、建築主が受ける不利益と行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するもの(建築主の不協力が常識的に考えておかしい)といえるような特段の事情があれば、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することも、例外的に違法とはならない。
したがって、建築主が、もはやこれ以上確認処分を留保されたままでの行政指導には協力できないとの意思を表明したことに不当とすべき点があるということはできないから、審査請求が提起された時点以降の行政指導を理由とする確認処分の留保は違法というべきであるとしました。

3.ポイント
法律上、行政指導に強制力はなく、行政指導に従うか否かは任意であって、国民の判断に委ねられます。そのため、本判決は、「行政指導に不協力の意思を表明したかどうか」に着目し、表明以降の行政指導の継続を違法としました。
役所は、地域的混乱や紛争に対し柔軟に対応するために行政指導を活用しています。しかし、指導の内容に不服があっても、許認可がされないのではないかというおそれから、指導を拒否することは困難です。また、指導に従わない場合にはその事実を「公表」されることもあるため、意に沿わない指導を事実上強制されるという問題もあります。
法令上の制限の学習においては、「勧告・助言」という文言で行政指導が登場しますので、ぜひ行政指導の性質を理解しておいてください。