知っ得!身近な法律Q&A

国民の三大義務について教えてください。(前編)

行政書士編②

Q.問題

たくろーくん
「先生!憲法は、国民の国に対する命令書だということ。『基本的人権の尊重』、『国民主権』、『平和主義』という三大原理についてもよく分かりました。ところで、国民にはさまざまな権利が保障されているということですが、義務については、何か定めはあるのでしょうか。」

ゆきちゃん
「国民の義務といえば、『国民の三大義務』という言葉を聞いたことがあるわ。たしか、『教育の義務』『勤労の義務』『納税の義務』だったわよね。」

たくろーくん
「あっ!それ僕も聞いたことがあるよ。」

ゆきちゃん
「先生!それじゃ今回は、憲法の三大義務についておしえてくださいませんか?」

国民の三大義務(教育・勤労・納税)について、おしえてください。

今回の回答者

小池 昌三(こいけ しょうぞう)

TAC行政書士講座専任講師。法務博士であり、また行政書士、宅地建物取引主任者(現在は宅地建物取引士)、貸金業務取扱主任者、ビジネス実務法務検定1級に合格。
現在は新宿校と八重洲校で講義を担当。初学者から受験経験者の方まで、幅広い知識を元に、受講生の合格まで導いている。

A.回答

 ゆきちゃんのいうとおり、国民の三大義務といえば、『教育の義務』『勤労の義務』『納税の義務』だよね。憲法には様々な権利が規定されているけど、憲法上、国民の義務として規定されているのは、この3つだけになるよ。
それでは、この三大義務というのはどのような内容なのか、意外と、勘違いして理解している部分があるので、詳しくみていこう。

教育の義務

国民の三大義務として、まず最初に出てくるのが「教育の義務」。憲法26条に規定されているよ。

憲法26条
1項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

まず、憲法26条1項で、すべての国民には「教育を受ける権利」があることを規定しています。
これに対して、2項で、すべての国民は、「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。」とされ、また、義務教育は無償とされています。

ここで「義務教育」という言葉が出てきたよね。
義務教育は、小学校の6年間と、中学校の3年間の教育を意味するわけだけど、この「義務」については、どのように理解してる?もしかすると、「子供が教育を受けなければならない義務」と思ってるんじゃないかな?実は私も、小学校や中学校のとき、「なんで、学校にいかなきゃならないんだ。義務とかいって無理矢理学校に行かされて、強制的に勉強させられるなんていやだぁ。」なんて思ってたんだけどね。
義務教育って、「『子供たちが』教育を『受けなければならない』義務」なのかな?でも、教育を受けることは、26条1項にあるように、「権利」ではあるけど、「義務」ではないんだ。

そしたら、「義務教育」って何かっていうと、2項をよく見てね。「すべて国民は~その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と書いてあるでしょう。私たち国民は、子供たちに『教育を受けさせる義務』を負っています。
つまり、義務教育とは、子供たちが教育を受けなければならないという義務ではなくて、いうなれば、「親が」子供たちに教育を「受けさせる義務」ということ。つまり子供の義務ではなくて、親の義務なんだね。

意外と、義務教育は子供たちの義務と思われているところがあるけど、そうではないんだ。

さらに、憲法上保障されている義務教育は無償になるよ。この無償は、「授業料の無償」を意味するとされているよ。ここで、現在は、教科書代も無償とされているけど、これは憲法上保障されてるわけではなくて、国の政策としてやっていること。仮に教科書を有償としても、憲法違反にはならないんだ。

勤労の義務

つぎに出てくるのが「勤労の義務」。憲法27条1項に規定されているよ。日本国憲法の中で、権利と義務をペアで規定しているのは、26条教育の権利・義務と、この条文だけなんだ。

憲法27条
1項 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

国民には、勤労の権利があるよ。仕事をしたいのに、国から「仕事をするな。」と言われることはないということだね。
これに対して、すべての国民は、勤労の義務もある。
「勤労の義務」があるというと、「働きたくないのに働かなければならないのか」「働くことを強制されるのか」と思うかもしれないね。
しかし、勤労の義務というのは、強制労働をさせられることではないんだ。
国家から様々な社会保障をうける場合には、仕事をしてください、ということなんだ。仕事をしてる人であれば、その人が困った時には、国もいろいろな手助けをします。でも、仕事もしないで、困ったときだけ、国に頼ってくるのはいけませんよ、ということです。

では、後編では3つめの義務である「納税の義務」を見てみましょう。

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