知っ得!身近な法律Q&A
国民の三大義務について教えてください。(後編)
行政書士編②
A.回答の続き
納税の義務
3つめの義務が「納税の義務」。憲法では30条に規定されているよ。この義務は、日本国憲法の前の大日本帝国憲法(明治憲法)にも規定がおかれていたんだ。
- 憲法30条
- 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
この条文にあるように、国民の税金は、法律によって定めなければならないのが原則となり、これを、「租税法律主義」というよ。法律は、私たちの代表者で構成される国会で作るということになる。この原則は「税金は、税金を課される私たち自身で決める」ということだから、自分の首を自ら絞めるような、必要以上に重たい税金を課せられることはなくなるはず、という原則になるね。
この納税の義務が、教育の義務、勤労の義務と決定的に違うのは、教育と勤労の義務が、いずれも、義務と並んで権利も規定しているのに対して、この納税の義務には、権利規定がないということ。
税金は、国や地方公共団体などの行政が、一方的に徴収していくものだから、これに対して、納税する権利ということは想像しづらいからね。
しかし、この点については、世界の潮流として、「納税を権利としてとらえる。」という考え方が意識されつつあるんだ。
租税法律主義が実質的にも十分に機能していれば、必要以上の重税を課されることはないということになるはずなんだ。
だけど、「納税が義務である。」ということを強調しすぎると、なんでもかんでも、むやみやたらに、「義務」だから、といって重い税金を課してくるという可能性が高くなってくる。行政が力をつけ、国会の意思が行政に支配されていくと、その可能性はますます強くなる。そうならないためにも、「納税することが権利」であるという意識を持つことが必要だよね。
欧米諸国では、それらの危険性が意識され、納税者の権利を保障するものとして、「納税者権利憲章」を制定したりする国もあるんだ。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは、これらを持っているんだよ。
日本においても、「私たち国民には、適切な税金を納税する権利がある。」という認識が強くなっていけば、近い将来、納税が権利であるという憲章ができるかもしれないね。
義務を果たすことの意義
以上のように、国民に憲法上課される3つの義務について分かってもらえたかな。
これらの義務は、あくまでも、私たちが豊かな社会生活を送るためには必要不可欠なもの。やりたくないことを、強制的に無理矢理やらされるというだけのものではありません。
私たち自身のために、守っていかなければならない義務。それが、憲法上における「国民の三大義務」なんだね。
たくろーくんやゆきちゃんは、まだ、これらの義務については、あまり意識したことはないかもしれないね。でも、将来社会に出たときに、この三大義務を、しっかり果たして、日本の社会を豊かなものにしていこうね。