知っ得!身近な法律Q&A

正社員じゃないと有給休暇は
もらえないの?(前編)

社会保険労務士編①

Q.問題

居酒屋でバイトして2年の私。この前、どうしても急な用事で休まなければならなくなり、店長に有給休暇を取らせてほしいってお願いしたら、「どんな用事なの?勘弁してよ…。うちの会社はバイトに有給休暇なんてないんだよ。君が休んだら誰が代わりにビールを運ぶのさ」って…。

正社員じゃないと有給休暇はもらえないのですか?

今回の回答者

社労士能登伸一講師.jpg

能登 伸一(のと しんいち)

特定社会保険労務士。TAC社会保険労務士講座専任講師。大学卒業後は介護福祉士として老人介護の最前線で活躍したものの、激務に腰を痛めて道半ばで挫折。その後、民間企業のサラリーマン時代に社会保険労務士の資格を取得し、後に独立開業。現在は介護の現場経験を生かして、介護業界における労務管理のプロフェッショナルとしてセミナー・執筆活動を積極的に行う。

A.回答

店長さん、その回答はまずいでしょ…。
今回のケース、店長に正しい法律の知識がないのがいけないのか。はたまた現場の管理者にしっかりと教育していない会社が悪いのか。ホントはバイトに有給休暇があることを知ってるくせに、知らないふりをしているのかも…?

店長もつらい立場です。バイトは日々の勤務シフトで管理しているのに、急に休まれたら代わりのバイトを探さなければならない。そしたら、今度は代わりのバイトを他の日に休ませなければならないし。時にはお休みだった店長が、自ら代わりに出勤しなければならないかも。「お前が休んだ分だけ、俺が迷惑するんだよ!」というのが店長の素直な本音かもしれません。
でもね、店長さん。事前にバイトが有給休暇をとることを想定していない方が悪いんです。

今回のケースは、「有給休暇に関する法律についてお互いが正しく理解していないこと」、それから「アルバイトが有給休暇を取得することを想定した社内ルールを決めていなかったこと」が問題の根本にあるといえます。

【確認ポイント】
  • そもそも有給休暇は法律ではどのようなルールなのか
  • 有給休暇を取得する際の社内ルールはどうなのか
  • 有給休暇を取得したときの給与はどうなるのか

■ 法律ではどのように定められているのか

① 有給休暇の権利発生要件
有給休暇は、次の2つの要件を満たしたら「法律上当然に」休暇を取得する権利が発生します。

  • 雇入れの日から6ヶ月経過していること
  • 勤続期間の全労働日の8割以上出勤していること

② 有給休暇の付与日数
勤続期間と労働日数により年次有給休暇の付与日数が決まります。

基本の付与日数

勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

●表がすべて見えていない場合は、横スクロールですべて見ることができます。

パート・アルバイトの付与日数(週4日以下 かつ 週30時間未満)

週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
勤務年数
0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
4日 169日から216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日から168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日から120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日から72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

●表がすべて見えていない場合は、横スクロールですべて見ることができます。

  • ※所定労働日数が週によって決まっている場合は「週所定労働日数」、それ以外の場合は「1年間の所定労働日数」で判断します。
  • ※所定労働日数は付与時点の所定労働日数で計算します。

パート・アルバイトだとしても、有給休暇の付与日において、週5日以上勤務している場合、または週30時間以上働いている場合は、正社員と同じように「基本の付与日数」が付与されます。

また、「週○日勤務」と決まっておらず、各週により出勤日数がバラバラの場合は、勤務日数の実績を上記の「1年間の所定労働日数」にあてはめて、付与する日数を算出します。

例えば、週の勤務日数が固定していないアルバイトが、入社してから6ヶ月間に65日出勤した場合、65日は半年間の出勤日数のため、次のように算出します。

  • (ア)65日×2=年間130日相当
  • (イ)勤務年数は0.5年 ⇒ 5日付与

後編では、年次有給休暇の消滅時効などを見ていきます。

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