知っ得!身近な法律Q&A

正社員じゃないと有給休暇は
もらえないの?(後編)

社会保険労務士編①

③ 年次有給休暇の消滅時効
有給休暇は与えられた日から2年で時効となります。与えられた日から1年間で使い切れなかった有給休暇は翌年に繰り越し、新たに与えられた休暇日数に加算しますが、さらに1年間使わなかったときは時効により取得する権利が消滅します。

④ 年次有給休暇の時季変更権
有給休暇は「会社の承認により与える」ものではなく、従業員が取得したい日を遅くともその前日までに指定すれば、無条件で与えられるものです。ただし、有給休暇の取得を認めることにより事業の正常な運営を妨げることになる場合は、会社は別の日に取得するように求めることができます。これを「時季変更権」といいます。
しかし、時季変更権を行使するための条件である「事業の正常な運営を妨げる場合」とは極めて限定されていて、単に「多忙だから」「代わりの従業員がいないから」という理由だけでは認められません。

⑤ その他
有給休暇の使い道については、従業員の自由です。「この理由だったらいいけど、遊びならダメ!」など、会社側で使い道を限定することができません。
また、有給休暇を取得したことを理由に「皆勤手当が出なくなった」「賞与がマイナス査定になった」など、不利益に取り扱うことも禁止されています。

社内ルールはどのようになっているのか

有給休暇の取得については、就業規則などで一定の社内ルールを定めることができます。
例えば請求期限。通常は「有給休暇を取得する日の前日まで」に会社に請求する必要があると考えられていますが、前日の勤務の帰り際に「明日、有給休暇で休みま~す」と言われても、代わりが必要な業務の場合、会社としてすぐに別の従業員を探すなどの対応が難しい場合も想定されます。

判例では「その業務の性質から有給休暇の時季を指定すべき期限(取得日の前々日までなど)を設定することは、合理性がある限り、法令違反とはならない。」としています。当然ながら、その業態や企業規模により、申請期限を設けることの合理性を判断しなければなりませんので、会社の実情についてよく検討したうえで、妥当な社内ルールを設定しておくことが必要でしょう。

有給休暇を取得したときはいくら払えばいい?

有給休暇を取得した日の給与は、次の3つのいずれかの方法により計算します。(就業規則などでどの方法で計算するのかを事前に定めておきます)

  • ①平均賃金(過去3ヶ月間における1日あたり の賃金)
  • ②通常の賃金(取得日に所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金)
  • ③標準報酬日額

出勤日により勤務時間が異なるパート・アルバイトについて「②通常の賃金」を採用している場合、勤務時間の長い日に有給休暇を取得した方が支払われる給与もその分高くなります。そのため、パート・アルバイトについては「①平均賃金」を採用することも検討材料のひとつです。

【まとめ】
今回の相談者はアルバイトを始めて2年。ということは、普通に考えれば有給休暇の取得権利は発生しています。そのアルバイトが「有給休暇を取りたい!」って言ったわけですから、会社は拒否なんてできません。唯一「事業の正常な運営を妨げる場合」に当てはまるのなら、休暇の取得時季を変えてもらうしかないのです。

有給休暇はパート・アルバイトにも当然に発生する法律上の権利です。その権利自体をなくすことはできないのですから、いざ請求された時に困らないように、会社として申請方法や申請期限などの社内ルールを事前に決めておく、または計画的な取得をさせるような制度を導入するなどの工夫が必要といえるでしょう。

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