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子供が相手を殴って怪我をさせたら、
どうなるの?民事編(後編)

司法試験 /弁護士編⑤

不法行為の条文は709条から始まるので、そこから検討していきます。709条には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と書いてありますね。
侵害された被害者というのが「他人」となるわけですが、他人は殴られた子Bですね。ただ、子Bという他人の「権利…利益を侵害した者」は、直接的には殴った子Aです。親Aではないんですね。
ですので、この親Aというのは他人である子Bの権利や利益を侵害した者とは言えないということになります。

したがって、この709条が使えないということになってくるんですが、不法行為には更にその先があります。
不法行為制度の原則規定は709条ですけれども、これは一般不法行為と言われる条文でして、より有利な効果、言い分の実現をもたらす6つの条文が特殊不法行為という形で用意されています。714条から719条までの6条分となっています。そのタイトルを見ていきながら、709条が使えないとしてもこちらで何とかいけないか。あるいは、709条が使えるとしても更にプラスのオプションが付けられないか。こういう観点で714条以下を見ていくということになります。

そうすると、最初の714条に、「責任無能力者の監督義務者等の責任」というのがありますね。
「責任無能力者」関し、712条が「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と定めています。
この「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」、これを責任能力といいます。自分の行為によってどんな責任、法的な損害賠償責任が生じるのかが分からないときは予想外の責任を負わされちゃうということになりかわいそうだろうということで、責任を負わないというふうにしているんですね。

責任能力は、ケースバイケースですが、大体11歳から12歳ぐらいで備わるというふうに言われています。
そうすると、今回、子Aというのは8歳ですから、11~12歳まで達しないということで、この責任能力がないと考えることになります。

そうすると、714条の責任無能力者に子Aがあてはまるということになってくるわけです。
その監督義務者については親が監督するというのが自然な見方ですよね。子どもを監督する親の責任を追求するために、714条を使っていこうという発想になります。それで、この714条の条文という「③法的構成」をして、その条文の文言に「④あてはめ」て行きましょう。

では、714条ですが、1項にはこういうふうに書いてあります。「前二条の規定により」、先ほどの712条も含まれますね、「責任無能力者」子A「がその責任を負わない場合において」、「その責任無能力者」A「を監督する法定の義務を負う者」親A「は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と、こういうふうになってきます。

なので、親Aは、その責任無能力者である子Aが「第三者」である子B、子BはA親子とは関係のない第三者です、「に加えた損害」、治療費とかの損害ですね。これを賠償する責任を負うということになります。あてはまりましたので、この714条1項を使って子Bの親Bが、子Aの親Aに対して損害賠償を請求することができる。こういう結論になりそうです。

では、ここで、親Aとしても何か反論できないでしょうか。親Aから相談を受けた弁護士、あるいは、親Aさんになりきったつもりで考えてみてください。
本当に図々しく親Aの立場に立って言い分を考えていくと、そこで問題が大分激化しますので、それによって法的問題が生じてきます。

だから、本当にモンスターペアレンツっぽく、親Aの言い分を考えると、例えば「子どものやったことなんだから許してよ」とか、「私には関係ないよ」とか、こういうものもあり得るのです。
という訳で「子どもがやったことだから」という、そういう反論ですね。これを法的構成できないかを考えていきましょう。

まずは先ほどBの側の法的構成として使った714条1項、これの続きを使ってみましょう。714条1項のただし書きです。
「ただし、監督義務者」、これは親Aでした。「がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない」。つまり、損害賠償をする責任を負わないということになります。
そうしますと、監督義務者である親Aがその義務を怠らなかった、つまり「子Aのことをちゃんと監督していたよ」、あるいは、「その義務を怠らなくたって、つまり、ちゃんと監督としていたとしても結局相手の子には損害が生じたよ」、という場合には、このただし書から、親Aの反論が通ることになってきます。

皆さん、どう思いますか。子Aが他の子Bを殴って怪我までさせちゃった。やっぱりこれはやっちゃいけないこととして親Aが子Aをしつけておかなければいけないんじゃないでしょうか。
確かに、普段しつけていたとしても、Aは幼い子どもですから、他の子どもを殴っちゃうこともあるかもしれませんが、このような状況で親が監督義務を怠らなかったとはちょっと言いにくいんじゃないでしょうか。
また、親Aがこのようなしつけをしていれば、子Bの損害は生じなかったといえますね。そうすると、今回は親Aの反論は通らないという結論になってきます。したがって、このような勝敗になります。

という訳で、今回は親Bの側の勝ちとなりました。

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