知っ得!身近な法律Q&A

相続は遺言書通りにしなければ
ならないの?(前編)

司法書士編①

Q.問題

A(夫)とB(妻)は夫婦です。Aが病気で亡くなったことによりBとAの兄Cとの間で遺産相続争いが生じました。Aの遺産はどうなるでしょう。
なお、Aの両親はすでに他界しており、子どももいません。
またAは下の遺言書を残しています。

Aの遺言書(全て適法に作成されている)

私Aの財産は全て妻であるBに相続させる。
また、妻Bのために自分名義の不動産を買主である友人Dに売却して、その売却代金を妻Bが入居する施設の費用に充てる。

今回の回答者

木村 一典(きむら かずのり)

平成11年度司法書士試験合格。大学講師の経験を基に、Wセミナーで講師就任後から何人もの合格者を輩出し続けている、人気・実力とも兼ね備えた講師。初学者から上級者まで、受講生の立場に合わせたわかりやすい講義は人気が高く、徹底した過去問分析のもと、最新傾向まで視野にいれた講義を実施。

A.回答

みなさんこんにちは。TAC/Wセミナー司法書士講座講師の木村です。どうぞよろしく!
今回の事件は相続が問題となっています。BはAの奥さん、CはAのお兄さん。2人ともAと関係の深い人物ですので、Aの遺した財産をもらえそうですね。それでは、まず問題の事案を分析して問題点を探してみましょうか。

【事案の分析】
1.死亡したAさんには子供がいない。Aの両親は他界している。
→ Aの相続人は誰になるのか?
2.Aには“遺言書”がある。その内容によると、 財産を全てBに相続させるとある。
→ 遺言書によってCはまったくもらえないのか?

今回はこの2点が問題となります。

1.Aの相続人は誰になるのか?

みなさんも、もし自分が死んだら、自分の財産は誰に相続されるのだろう?と興味がありませんか。相続のルールをみていきましょう。

【相続人となる人】
ア 自分と血の繋がっている人。子ども,親,兄弟姉妹など。
イ 配偶者。自分の奥さん、旦那さん。

ただし、上のアの人たちには優先順位があります。全員が相続人となるわけではありません。優先順位の高い人のみが相続人となります。民法には以下のような規定があります。

第887条
被相続人の子は、相続人となる。
第889条
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
① 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
② 被相続人の兄弟姉妹

条文ではむずかしい表現を使っていますが、整理すると以下の図のようになります。

【上記アについては順位が高い人が優先する。】
第1位 子ども
第2位 両親
第3位 兄弟姉妹

問題の事案にあてはめてみましょう。

  • 第1位 死亡したAさんには子供がいない。
  • 第2位 Aの両親は他界している。
  • 第3位 兄弟姉妹…兄Cがいる!

これで、CはAの相続人だということが分かりました。
次にイについてです。民法では次のような条文があります。

民法第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
(以下略)

つまり、自分の奥さん、旦那さんはどんな時でも相続人になります。問題の事案のBはAの奥さんですので、BはAの相続人だということも分かりました。

以上から、Aの相続人は、「Aの奥さんのB」と、「Aのお兄さんのC」です。

後編ではAの残した「遺言書」の効力について解説していきます。 

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