知っ得!身近な法律Q&A
誰に損害賠償できるの?(後編)
宅建士編②
A.回答の続き
前編をもう少し詳しく解説してみましょう。怪我をしたCさんは、まず建物を借りているBさん(占有者といいます)に対して損害賠償請求ができます。ただし、Bさんは「損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしていたことを証明すれば」免責されます。「必要な注意を尽くしていた」とは、具体的に、Bさんのほうで「私は常日頃から屋根のメンテナンスをしていて、瓦が飛ばないようにいつも注意していましたよ」などということです。そして、その証明ができれば、Bさんは責任を負わなくて済むのです。
それでは、Cさんは泣き寝入りということなのでしょうか?
Bさんに請求できない場合であっても、このような場合、Cさんは建物の所有者であるAさんに損害賠償請求ができます。これが前編の「2次的」という意味です。しかも、この場合のAさんは一切免責されず、100%責任を負わされます。壊れかかった建物の瓦で怪我をしようが、きちんとメンテナンスされた建物の瓦で怪我をしようが、通行人にとっては何も違いはありません。
「家の持ち主(所有者)vs通行人」の場合は、所有者の責任が重いのです。
よって、被害者のCさんはABどちらかからは必ず損害を賠償してもらえることになるので、被害者であるCさんの保護につながるというわけです。
試験では、「所有者Aが、損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしていたことを証明すれば、Aは一切責任を負わない」などと聞いてきますが、答えは×です。
所有者は100%責任を負いますので、占有者との違いを意識して押さえてみてください。
ちなみに、先ほどの問題で、「家の屋根瓦が飛んでしまってCが怪我をした」とありましたが、この瓦が飛んだ原因が、実はD工務店の手抜き工事のせいだった、ということが後で判明したとします。このときは、損害賠償金を支払わされたBもしくはAが、D工務店に対してさらに損害賠償を請求(「求償」といいます)できます。B(又はA)がD工務店の肩代わりをしたようなものだからです。
また、補足になりますが、もしD工務店が、建物の改修工事中に誤って屋根瓦を落としてしまい、通行人のCに怪我をさせてしまったような場合は、直接D自身がCに対して損害賠償責任を負うことになります。 このように、さまざまなケースにおいて被害者を救済するための手が打ってある、というのが今回の不法行為責任なのです。
宅建士試験では以上のところまで問われているので、よろしければぜひ参考にしてみてください!
- ≪参考条文≫ 民法717条
-
- 1項 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
- 2項 (略)
- 3項 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。