知っ得!身近な法律Q&A
輸入時にかかる関税について教えてください(前編)
通関士編①
Q.問題
こんにちは。私はよくネットで、海外から商品を買う事があります。
今まで、「輸入」という認識はありませんでした。
海外通販だと業者さん任せで、「通関」も自分では関わっていませんので。輸入する際にかかる関税というものもどのくらいかかるのか、どうやって計算しているのかもわからないので、知りたいと思います。

今回の回答者

井下 奈緒美(いのした なおみ)
元 神戸税関職員
秘書、輸出通関、収納課、貿易統計等の部署に在籍。神戸税関退職後に通関士試験受験、合格。平成20年からTAC通関士講座 関西圏講師。平成28年井下行政書士事務所開業。自らもTACの受講生として宅地建物取引士、AFP、行政書士等数々の資格を取得。受講生目線での講義を目指している。
A.回答
こんにちは。
通関士講座 講師の井下 奈緒美です。
私達の日常生活の中で、目にするもの、口にするものには外国で作られたものがたくさんあります。
あまり、意識していないかもしれませんが、この国での生活は自給自足のみでは、成り立たないという事がわかります。
今日は、外国から商品を輸入する場合の関税の計算についてお話します。
そうですね。
確かに今は国内取引と同様に、海外から商品を個人で購入する事も難しくないので、「輸入している」という意識はないですよね。
では、今回は「個人輸入」について考えてみましょう。
まず、「個人輸入」という言葉の意味ですが、業として(ビジネスとして)輸入する場合(日本に輸入して転売する)と、個人使用の為、輸入する場合があります。
今回は質問者さんの場合に当てはまる、個人使用の目的の輸入という場面でお話をしていきますね。
それから輸入する際の運送形態には一般の貨物としての運送と郵便小包という郵便路線での輸送方法が考えられますが、今回は郵便小包ではなく、一般の貨物としての通関を想定しています。
輸入する貨物には課税対象の場合、関税という国税が課せられます。
関税の計算は課税価格×関税率で求めます。
この計算式のそれぞれの項目に「個人輸入」に関する特例(関税が安くなるお得なルール)があります。
1つずつ、説明しますね。
① 課税価格について
課税価格とは、簡単に言うと、「商品の価格+海外から日本までの運賃+保険料」です。
しかし、個人使用目的の輸入には課税価格の特例があります。(個人用品特例)
関税計算の基になる部分が安くなれば、当然、関税が安くなります。
- 関税定率法
第4条の2 (抜粋) -
第2項
当該輸入貨物が、本邦に入国する者により携帯して輸入される貨物その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物で、当該貨物の輸入者の個人的な使用に供されると認められるものであるときは、当該輸入貨物の課税価格は、当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格とする。当該輸入貨物が、本邦に居住する者に寄贈される貨物で、当該寄贈を受ける者の個人的な使用に供されると認められるものであるときも、同様とする。
この条文を適用するのですが、
実際にどのように計算するかというと、商品の海外小売価格に0.6を掛けた金額を課税価格としています。
通販等で個人が買った商品の価格は小売価格(末端価格)と呼ばれるもので業として輸入する商品の価格(卸価格が基準)よりも高価なので、不公平になります。
それでこのような規定があります。
後編では関税率などについて見ていきましょう。