知っ得!身近な法律Q&A
輸入時にかかる関税について教えてください(後編)
通関士編②
A.回答の続き
② 関税率について(課税価格が20万円以下なら簡易税率を適用)
海外から商品を輸入する場合、個人使用の品物または贈り物であっても、原則としてその商品に対して関税が課されることとなりますが、一般貨物または郵便小包を利用した場合で、課税価格の合計額が20万円以下の場合には、一般の関税率とは別に定められた簡易税率が適用されます。
一般の関税率を適用する場合、数千もの品目分類の中から税率を適用することになりますが、この簡易税率を適用する場合、その品目分類を大別した7区分において税率を確定します。
ただし、この簡易税率は、携帯品及び別送品、関税が無税または免税になるもの、わが国の産業への影響を考慮し簡易税率を適用することが適当でないとされている物品には適用されません。
また、輸入者が、これら輸入貨物の全部について一般の関税率の適用を希望した場合には、一般の関税率を適用します。
- 少額輸入貨物に対する簡易税率表 (関税定率法第3条の3関係)
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品目〔具体的な品目例〕 関税率 1 酒類 - (1) ワイン
- (2) 焼酎等の蒸留酒
- (3) 清酒、りんご酒 等
- 70円/リットル
- 20円/リットル
- 30円/リットル
2 トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品 等 20% 3 コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く) 等 15% 4 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く) 等 10% 5 プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具、玩具 等 3% 6 ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 無税 7 その他のもの 5%
- 課税価格が1万円以下の貨物の場合、原則として、関税、消費税および地方消費税は免除されます。ただし、酒税およびたばこ税・たばこ特別消費税は免除になりません。また、革製のバッグ、パンスト・タイツ、手袋・履物、スキー靴、ニット製衣類等は個人的な使用に供されるギフトとして居住者に贈られたものである場合を除き、課税価格が1万円以下であっても関税等は免除されません。
- 個人の方がご自身の個人的使用の目的で輸入する貨物の課税価格は、海外小売価格に0.6を掛けた金額となります。その他の貨物の課税価格は、商品の価格に運送費および保険料を足した金額になります。
- 上記の関税率とは別に内国消費税(消費税、酒税など)および地方消費税が別途課税されます。また、無税のものについては、内国消費税および地方消費税のみが課税されます。
- 郵便物の重量制限などのため2個以上に分割されている場合は、この合計が課税価格となります。
- 次のものについては、「少額輸入貨物に対する簡易税率表」は適用されません。
- 一般税率が適用されるもの(例)
- ○ 米などの穀物とその調製品
- ○ ミルク、クリームなどとその調整品
- ○ ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
- ○ たばこ、精製塩
- ○ 旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
- ○ ニット製衣類
- ○ 履物
- ○ 身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)
(②について※引用:税関HP)
③ 課税価格が1万円未満の場合の免税規定
上記の簡易税率表の注意書の1にある規定が使える場合もあります。
ただし、本邦産業に与える影響から、対象外のものもあります。
- 関税定率法
第14条(無条件免税)(抜粋) - 次に掲げる貨物で輸入されるものについては、政令で定めるところにより、その関税を免除する。
- 第18号
課税価格の合計額が1万円以下の物品(本邦の産業に対する影響その他の事情を勘案してこの号の規定を適用することを適当としない物品として政令で定めるものを除く。)
つまり、①で述べた個人用品特例を使った課税価格が1万円以下なら、免税されるという規定です。
逆算すると、10,000÷0.6=16,666.66..となりますので通販で購入した金額が16,000円であれば、課税価格が9,600円となり、免税の適用除外貨物に該当しなければ、無条件免税を適用できる可能性があります。(関税の計算は課税価格を1,000円未満切捨てて行います。)
以上、個人輸入の場合の特例をお話しました。
他の注意点としては、上記の簡易税率表の注意書3にある通り、輸入する場合には関税のみではなく、消費税等も課されます。
また、通関の手続を通関業者に依頼する場合には、通関手数料等も必要となります。
その他、関税の話ではありませんが、輸入するものによっては他法令上の規制があるものもありますので、注意が必要です。
関税関係法令以外の法令を、他法令と呼んでいます。
例えば、外国為替及び外国貿易法、輸入貿易管理令、食品衛生法等で規制がかかる商品もあります。
今回は個人輸入の場合のお話をしました。
少しでも貿易の一場面に触れていただければ、嬉しく思います。